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2013年4月15日 (月)

21世紀に映画は古典「アンナ・カレーニナ」をどう描いたか?

評価:B

アカデミー賞では撮影賞・作曲賞・美術賞・衣装デザイン賞にノミネートされ、衣装で受賞した。映画公式サイトはこちら

Annakarenina

Anna_karenina_ver2

トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」は高校生の頃読んだ。新潮文庫で全3巻、光文社古典新訳文庫では全4巻という大作だ。人妻アンナと将校ヴロンスキーとの「爛れた愛欲の日々」と同時並行して、ヴロンスキーに捨てられたキティと、農民と共に汗を流して働く地主貴族リョーヴィンとの「健全な愛」が対照的に描かれる。じつはこの誠実なリョーヴィンはトルストイの分身と考えられている

僕はジュリアン・デュヴィヴィエ監督ヴィヴィアン・リー主演で1948年に映画化されたもの(上映時間139分、白黒)を観たが、このリョーヴィンとキティのエピソードはバッサリ切られていた。膨大な原作を2時間ちょっとで収めるにはどうしても無理がある。しかし、それではトルストイの本当に語りたかったことが欠けてしまい、片手落ちと言わざるをえないだろう。

さて、今回の2012年イギリス映画版である。監督は「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライト(イギリス・ロンドン出身)。作曲は「つぐない」でアカデミー賞を受賞したダリオ・マリアネッリ(イタリア・ピサ出身)。脚色は「恋に落ちたシェイクスピア」でアカデミー賞を受賞したトム・ストッパード(共作)。彼はチェコ出身で、劇作家でもある。また映画「未来世紀ブラジル」(共作)や「太陽の帝国」のシナリオも執筆している。

アンナを演じたのは「プライドと偏見」「つぐない」でもジョー・ライトと組んでいるキーラ・ナイトレイ。その夫役がジュード・ロウ。キティを演じたアリシア・ヴィキャンデル(スウェーデン出身)が可愛かった。またアンナの浮気相手ヴロンスキー伯爵が軽薄な感じでgood。

上映時間130分とコンパクトながら、アンナ-ヴロンスキー、キティ-リョーヴィンのエピソードが過不足なく平等に描かれており、これは巧みな脚色だと感心し、納得もした。トルストイが描こうとした精神がこの映画の中にしっかり息づいている。

物語があたかも舞台の上で演じられているような構造にしているのがお見事!その枠を作ることで「これはあくまで虚構の世界。花も実もある絵空事ですよ」と語りかけてくるのだ。だからリアリティなど必要ない。何故ロシア人が英語で喋り、キティとリョーヴィンがカード・テーブル上で文字遊びをする場面でもどうして英単語なのか?という違和感が緩和されている。また大胆な省略も可能となった。

考えてみるとトム・ストッパードの「恋におちたシェイクスピア」も、シェイクスピアの実生活と、彼が書く戯曲の物語世界という二重構造になっており、そのひそみに倣ったとも言えるだろう。

ただ創意工夫は高く評価するが、それでも後半、些かダレて眠くなったことをここに告白する。

最後に、豪華で洗練された衣装を眺めるだけでも目の保養になるし、シディ・ラルビ・シェルカウイが振りつけた舞踏会の場面が実に独創的だったことを付け加えておく。

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