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三谷幸喜徹底批判!「ホロヴィッツとの対話」

ウラディミール・ホロヴィッツが1983年に初来日した時(当時79歳)、コンサートのS席が5万円と高額だったのにもかかわらず即日完売。しかしミスタッチが多く惨憺たる演奏で、音楽評論家・吉田秀和は「ひびの入った骨董品」と評して話題となった。これを聴きに来ていた坂本龍一は途中で席を立ち、久米宏がキャスターを務めていたテレ朝「ニュースステーション」で酷評した。

「東洋人と女にはピアノは弾けない」というのがホロヴィッツの持論だった。「ピアニストには三種類の人間しかいない。ユダヤ人か、ホモセクシャルか、下手くそだ」なんてことも言っている(彼はウクライナ出身でユダヤ系)。偏屈なジジイだったことは三谷幸喜 作・演出「ホロヴィッツとの対話」でも描かれている。

Horo

配役は調律師フランツ・モア:渡辺謙、その妻:和久井映見、ホロヴィッツ:段田安則、その妻ワンダ:高泉淳子。作曲・ピアノ演奏は萩野清子。荻野さんは「コンフィダント・絆」「グッドナイト スリプタイト」「国民の映画」(以上舞台)「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」(以上映画)等で三谷さんと組み、最近ではNHK朝ドラ「純と愛」の音楽も担当している。

三谷幸喜作品で、僕が今まで生の舞台を観たものを以下列挙してみよう。「君となら」「笑の大学(初演・再演)」「ヴァンプショウ」「アパッチ砦の攻防」「温水夫妻」「オケピ!(初演、再演)」「竜馬の妻とその夫と愛人」「彦馬がゆく」「You Are The Top/今宵の君」「なにわバタフライ」「12人の優しい日本人」「コンフィダント・絆」「グッドナイト スリイプタイト」「ろくでなし啄木」「国民の映画」「90ミニッツ」の16作。

テレビ放送、DVDなどで観たものは「天国から北へ3キロ」「ショー・マスト・ゴー・オン」「巌流島」「バイ・マイセルフ」「マトリョーシカ」「バッド・ニュース☆グッド・タイミング」「東京サンシャインボーイズ returns」「ベッジ・パードン」の8作。合わせて24作。これが僕の観劇歴である。

で、はっきり言って最近の三谷さんは作家としての力が衰えてきている。

そりゃあ勿論、そこら辺で上演されている戯曲と比較すると、水準以上のウェルメイドな作品に仕上がっている。しかし三谷さんの本来の実力はこんなものじゃない筈だ。「彦馬がゆく」「12人の優しい日本人」「笑の大学」の頃はもっと凄み、鋭さがあった。物語の終盤に向かって収斂し、燃焼する膨大なエネルギーを内包していた。対して「ホロヴィッツとの対話」にあるのは燃えカス、抜け殻だ。その場限りの、そこそこの笑いは散発的にあるが、そのエネルギーが(過去の作品のように)有機的に結びつき、相乗効果をもたらすことはない。観客が味わうのは肩透かしのみである。

最近の三谷さんは「コンフィダント・絆」「国民の映画」「ホロヴィッツとの対話」など外国を舞台とした作品が多い。これは予め海外での上演を想定したものと思われる(実際「笑の大学」はロシアやソウル、カナダ、ロンドンで上演された)。いわゆる「赤毛もの」である。そこに欧米人への媚び、秋波を感じるのは僕だけではあるまい。物語が上っ面だけで、足が地についていないのだ。昔の三谷作品は「僕たちの物語」だったけれど、最近は「よそゆきの顔」をしている。「国民の映画」で描かれたナチスとか「ホロヴィッツとの対話」で唐突に出てくる第二次世界大戦中のドイツ空襲とか、シリアスな題材と笑いとが乖離し、ぎくしゃくしている。居心地が悪い。「ここで観客を感動させよう」というあざとさ、真面目なことを語って名声を得たいという欲を感じてしまうのだ。

役者たちは悪くなかった。しかし出来損ないの台本が彼らを生かしきれていない。帰り際、とある女性客が「面白かった。でも途中でちょっと寝ちゃった」と友達に話しているのが耳に入ってきた。実は僕も中盤でダレて、気が遠くなった。

正直、今だったら三谷作品よりも「大人計画」の松尾スズキ宮藤官九郎(クドカン)が書いた芝居の方が断然ワクワクする。

迷える子羊・三谷幸喜よ、目覚めよ!最近どうしちゃったのさ、もう才能が枯渇したの??どうかこのまま「ひびの入った骨董品」で終わりませんように。

P.S. : 「ホロヴィッツとの対話」は本日、WOWOWで生中継される予定。

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コメント

三谷さんの映画を観て一度も面白いと
思ったことがないので舞台も観たいと思わないですがどうしてそんなに評価が高いのか分からないです。

投稿: 鷹島きり子 | 2013年3月30日 (土) 18時35分

三谷さんはやはり舞台の人です。どうか映画だけで判断しないで下さい。やはり東京サンシャインボーイズ時代など、初期作品が優れていますね。なぜ彼が「天才」と呼ばれていたか(過去形)、ご理解いただける筈です。是非再演で御覧下さい。

また映画監督・三谷幸喜の最高傑作は未だにデビュー作「ラヂオの時間」(1997)だと想います。これも東京サンシャインボーイズ時代の戯曲を脚色したものですね。

投稿: 雅哉 | 2013年3月30日 (土) 20時55分

記事を拝読しました。三谷幸喜さんが作・演出した舞台のキャストに和久井映見さんが出演しているのですか。最近はテレビで見ないと思ったら、そういうことですか。

投稿: ○〈落合紘史> | 2013年6月10日 (月) 13時45分

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