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2013年3月 9日 (土)

映画「横道世之介」

評価:A+

TwitterのTL(タイムライン)で話題沸騰していて興味を持ったので、映画館に足を運んだ。上映時間が160分という情報以外、予備知識ゼロ。監督も出演者も知らない真っ白な状態で観た。僕は時々こういう冒険をする。推す人々の言葉に耳を傾け、思い切ってそれに身を委ねるのだ。信頼が全て。ハズレることは殆どない。そこから未知の、新しい世界が広がってゆく。

Yoko

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原作は吉田修一。2010年柴田錬三郎賞を受賞、本屋大賞第3位。長崎出身で法政大学経営学部に入学するという主人公の設定は原作者のプロフィールと同じ。脚本・監督は「南極料理人」で商業映画デビューした沖田修一。35歳、若いね!

映画はダサい新宿駅から、長崎から上京したダサい新入生が現れるところから始まる。駅前ではダサいアイドル(もどき)が歌っている。斉藤由貴の"AXIA"の大看板があるので、1986年頃だと分かる(丁度、原作者自身が大学に入学した頃だ)。「ねるとん」(紅鯨団、1987年10月放送開始)というキーワードが出てくるし、友人に子供が生まれた際ネームプレートに1988年と明記されている。

ダサい大学キャンパス(後に新校舎完成)にダサい下宿、そしてダサいサンバを踊るサークル(ラテンアメリカ研究会)。この映画はダサいもので埋め尽くされている。しかし何故か観ていて心地いい。それは同じ時代を生きてきた者にしか判らない《世代的共感》であるのかも知れない。そして僕は気が付いた。「そうだ、何時だって青春はダサいんだ!」と。例えば「東京ラブストーリー」(1991)に描かれたような、お洒落でトレンディーな青春なんて端から現実には存在しなかったのだ。そういう意味でこの映画が描く青春は僕にとってリアルでヴィヴィッドなのだ。

ヒロインの吉高由里子がいい。それからNHK大河ドラマ「八重の桜」で悲劇の会津藩主・松平容保を(常に涙目で)演じ、大ブレイク中の綾野剛が本作ではゲイ役で登場し、これがまたはまり役で驚いた。本当に素晴らしい新人が現れたものだ。

長尺だが一瞬たりとも退屈することはなかった。僕は同じ吉田修一原作の「パレード」や「悪人」より、断然本作の方が好きだな。

昨年の「桐島、部活やめるってよ」といい、本作といいい、才能豊かな新人作家がどんどん現れて(アニメーションには「おおかみこどもの雨と雪」の細田守がいる!)、日本映画の未来は明るいなと嬉しくなった。

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