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2013年2月

2013年2月27日 (水)

大阪桐蔭高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2013!@ザ・シンフォニーホール

2月18日(月)ザ・シンフォニーホールへ。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の定期演奏会を聴いた。

Toin

以前聴いた感想は下記。

今回の曲目は、

  • ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より
  • ホルスト/組曲「惑星」より火星・水星・木星
  • リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」より第4楽章
  • ヨハン・シュトラウス2世/喜歌劇「こうもり」序曲
  • リーヴァイ/ミュージカル「エリザベート」セレクション
  • レノン=マッカートニー/ザ・ビートルズ・メドレー (3年間のあゆみ)
  • メンケン/ディズニー・アニメ「アラジン」ハイライト
  • 川嶋あい/旅立ちの日に・・・
  • クロード=ミシェル・シェーンベルク/ミュージカル「レ・ミゼラブル」セレクション

Toin

総監督・指揮者は梅田隆司先生。演奏会プログラム(コンクールも)に編曲者が明記されていないのが残念。やはり知りたいし、レビューが書き辛いので、ぜひ来年は改善をお願いします!という訳で以下推定します。桐蔭の生徒さんや保護者の方がお読みになることもあると思います。もし間違っていたらコメント欄でご指摘下さい。

エリザベート」は曲の構成から考えてヨハン・デ=メイ編曲と思われる。〈プロローグ~嵐も怖くない(夜のボート)~(プチ)私だけに~カフェの場面~マダム・ヴォルフのコレクション~フィナーレ(私だけに)〉演奏時間約9分。グレード4

レ・ミゼラブル」はウォーレン・バーカー編曲(推定)。〈1日の終わり~夢やぶれて~宿屋の主の歌~オン・マイ・オウン~民衆の歌〉約10分、グレード4。

アラジン」はジョン・モス編(推定)。〈アラビアン・ナイト~ひと足お先に~結婚の発表~ホール・ニュー・ワールド~ジャファーの出番~アリ王子のお通り~フレンド・ライク・ミー~ハッピー・エンディング〉約8分、グレード4。

アンコールは、

  • 風になりたい(宮沢和史、THE BOOM)(歌あり)
  • EXILEメドレー(歌あり)
  • 銀河鉄道999(樽屋雅徳 編)(歌あり) 定番
  • 星に願いを(ディズニー「ピノキオ」より)

とにかくステージ狭しと乗った184人の大合奏が壮観。音圧も凄い。例えばトランペットが29人、ホルンが19人!天井から吊り下げられた録音用のマイクが演奏中に揺れていた。曲のアウフタクトで全員が一斉に息を吸う音も鮮明に聞こえる。「ニュルンベルクのマイスタージンガー」にはアイーダ・トランペットが16本登場した。「惑星」の木星なんかド迫力。一方で水星は繊細・精緻な演奏だった。

昨年全日本マーチングコンテストで金賞を受賞した時は162人で出演したそう。

桐蔭のコンサートの愉しさは歌が多いこともある。梅田先生は大学で声楽科を専攻されているので、合唱も素晴らしい。

梅田先生は中学校教諭時代、「シェヘラザード」をコンクール自由曲で4回振ったことがあるそう。速いテンポで勢いがある演奏。原曲のヴァイオリン・ソロをどう処理するのか注目していたら、ソプラノ&アルト&テナー・サキソフォンのアンサンブルとしてアレンジされており、終盤のソロはイングリッシュ・ホルンだった。新鮮!

昨年桐蔭は全日本吹奏楽コンクールが大会規定により3出休みだったため、夏はオーストリアに演奏旅行に行った。な、な、なんとアマチュアの高校生としては単独初となるウィーン国立歌劇場での記念コンサートにシェーンブルン宮殿で野外コンサートをしたそう。君たちはウィーン・フィルか!?日本のプロ・オーケストラでもこんな大舞台に立ったことはない筈だ。さらにシュラドミングで開催されたMidヨーロッパ国際青少年音楽コンクールで全部門総合グランプリに輝いた。

コンサート後半はその旅行にまつわる選曲となり、「こうもり」序曲は映像を交えてウィーン紀行に。まるでNHK「名曲アルバム」みたいな仕上がりだった。

エリザベート」はドラムスも入る素晴らしいアレンジで、さすが「指輪物語」で名高いヨハン・デ=メイだなと想った。ただ難易度がそれほど高くないので、コンクール自由曲に選ぶのは難しいかも。

旅立ちの日に・・・ 」は三年生が歌い、スクリーンにはひとりひとりの思い出の映像とともに、名前が紹介された。こういう洒落た演出は桐蔭の独壇場だ。

当初のプログラムでは毎年恒例の大河ドラマ「八重の桜」を全国に先駆け演奏する筈だったが、アレンジの出来が思わしくなく、楽譜も間に合いそうにないとのことで急遽変更となった。大晦日に映画「レ・ミゼラブル」を観て感動した梅田先生。年明け早々生徒たちに、この曲を演奏することを提案。「今が旬やしな」そして90人の部員を引率し映画館に再び観に行ったそう。「夢やぶれて」はオーボエ→ソプラノ・サックス→フルートのソロで繋がれた。「民衆の歌」は2年生の男子生徒がひとり立ち上がり歌い始める(英語)。そしてその歌声が全体へ広がって大合唱となる。まるで映画を観ているようだった。

毎年感じることだが、大阪桐蔭高校吹奏楽部の定期演奏会はハイテクで極上のエンターテイメント・ショーである。いやはや大満足でした。

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2013年2月26日 (火)

オスカー・ナイト2013/アカデミー会員の行動心理を分析する

今年のアカデミー賞授賞式、僕の予想(こちら!)したうち、的中したのは作品・監督・主演女優・主演男優・助演女優・脚色・視覚効果・衣装デザイン・長編ドキュメンタリー・編集・外国語映画・音響編集・録音・歌曲・作曲・短編アニメーション・短編実写の計17部門であった。過去4年間の実績としては平均18部門となった。

予想(こちら!)にも書いたが、監督賞にノミネートされなかった映画が作品賞を受賞するのは「ドライビング Mss デイジー」以来、実に23年ぶりの珍事である。今回の流れは全て、ベン・アフレックがノミネートを逃した瞬間から動き出した。まず俳優仲間が怒った。「どうしてベンが入っていないんだ!」彼らにとって監督に進出し、アカデミー賞にノミネートされるというのは甘美な夢であり、それが踏みにじられたということは許しがたい行為であった。地獄のどん底から這い上がって来たベンを応援したいという気持ちもあった。俳優組合の票が一気に「アルゴ」に集中した。さらにベンアフを気の毒に想う感情の波はプロデューサー組合、監督組合にも広がっていった。こうして大勢は決まった。

ちなみに投票資格を有するアカデミー会員は総数5,784 。その内訳は〈俳優1,172、製作者450、会社重役443、音響401、脚本376、監督369、PR368、美術367、短編&アニメ349、視覚効果294、音楽232、編集 224、撮影206、ドキュメンタリー166、ヘア&メイク121、他246〉となっている。

つまり「アルゴ」の作品賞受賞を決定付けたのは同情票である。もしベンアフがちゃんと監督賞にノミネートされていれば、多分違う結果になっただろう。

似たような事例が「バタフィールド8」(1960)で主演女優賞を受賞したエリザベス・テイラーにも起こった。大した映画ではなかったが、授賞式の直前にリズは肺炎で生死の境を彷徨った。その為に同情票が集まったのである。彼女自身この映画が大嫌いで、完成後一度も観ていないという。その年に「アパートの鍵貸します」で候補になり、受賞を逃したシャーリー・マックレーンは皮肉を込めて「わたしも死にかけたら良かったわ!」と言ったのは有名なエピソード。歴史は繰り返される。過去から学ぶ姿勢は大切である。

またレビューにも書いたが、「アルゴ」の裏テーマは《ハリウッド万歳!》。元々アカデミー賞向きの作品だったのだ。

という訳で今年「アルゴ」が作品賞を受賞するのは必然、自明のことであった。もし予想を外した人がいるならば、「センスが欠けているじゃないの?」と言わせてもらおう。

さて、巷で監督賞の大方の予想は「リンカーン」のスピルバーグであった。しかし僕はそれはないだろうと踏んでいた。そもそもアカデミー会員はスピルバーグに対して良い感情を持っていない。成功して大金持ちになった彼へのやっかみ・嫉妬の気持ちもあるだろう。

彼の最高傑作「E.T.」が公開された年、アカデミー会員が作品賞と監督賞に選んだのは、リチャード・アッテンボローの頭でっかちな凡作「ガンジー」だった。これは歴史に残るミス・ジャッジとして悪名高い。またスピルバーグが「カラー・パープル」を撮った年、アカデミー賞では10部門11人(助演女優賞で重複)が候補となったが、監督賞はノミネートされなかった。そしてなんと受賞は0!これはスピルバーグが賞狙いに走ったことに対する会員の拒絶反応、バッシングが原因だった。

だから今回アカデミー会員になったつもりで、その行動心理を推測した。僕だったらこう考えるだろう。「スピルバーグは既に過去2度監督賞を受賞しているんだから、もういいんじゃない?」「監督賞を3度も受賞するほどの器なの??」「もうお金も、名誉も十分得ているのに、まだ欲しいか?貪欲な奴め。えげつない」だから彼には投票しない。「ライフ・オブ・パイ」を観て、その深遠な世界観、宗教映画的格調の高さからアン・リーこそ相応しいと考えた。

授賞式の感想に移ろう。今年のベスト・ドレッサー賞はアン・ハサウェイ!洗練されたドレスで素敵だった。本当に君は輝いていたよ、アン。

全篇ミュージカル仕立てで、音楽に満ちた授賞式で愉しかった。最後に司会のセス・マクファーレンとクリスティン・チェノウェスが歌った"Here's to the Losers"(負け組に乾杯!)には大爆笑。キャサリン・セダ=ジョーンズ/「シカゴ」の"All That Jazz"は明らかに口パクだったけれど、ジェニファー・ハドソン/「ドリームガールズ」は相変わらずパンチの効いた熱唱で圧巻だったし、「レ・ミゼラブル」チームの"One Day More"も素晴らしかった(些かラッセル・クロウがズレていた??)。

シャーリー・バッシーが登場し「007 ゴールドフィンガー」を歌ったのはびっくりした!声の衰えは隠しおおせなかったけれど、調べてみると彼女は76歳なんだね。In Memoriam(追悼)コーナーで昨年亡くなった作曲家マーヴィン・ハムリッシュの遺影とともにバーブラ・ストライザンドの歌声「追憶(The Way We Were)」が聴こえてくる演出も粋だったなぁ。

主演女優賞で名前を呼ばれたジェニファー・ローレンスが壇上に上がろうとして階段で転けて、間髪をいれずヒュー・ジャックマンがエスコートしようと駆けつけた場面はさすがだった。ヒュー、どこまでいい奴なんだ!!

それからテッドが登場し、「授賞式後の乱交パーティーはどこなの?」と言ったのに対し、マーク・ウォルバーグが「ジャック・ニコルソンの家だよ」と答えていたが、後で考えてみるとロマン・ポランスキー監督が少女(当時13歳)に淫行した事件現場ってニコルソン邸だったよね(1977年)。際どいジョークだなぁ。ちなみにポランスキーは逮捕され、保釈中に映画撮影と偽ってヨーロッパに逃亡。翌年フランスでナスターシャ・キンスキー主演の「テス」を撮った(ナスターシャとも性的関係があったと言われている)。以後一度もアメリカに入国していない。

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2013年2月23日 (土)

2013年アカデミー賞大予想!

過去3年間、僕が予想したうち受賞的中数の平均は24部門中19部門。最高20部門である。アカデミー賞予想で重要なことは作品の理解度とか審美眼とかでは全くなく、あくまで情報収集及び分析能力である。時には投票するアカデミー会員の心理分析もする。これらの作業が95%。残りの5%は映画を観た上での直感。しかし、オスカー・ナイトまでに日本未公開の作品が毎年少なからずあるので、この直感が行使出来ないのが辛いところだ。今年はスピルバーグ監督の「リンカーン」(4月公開予定)がそれに該当する。オスカー効果を狙い、公開時期を遅らせている配給会社の意図は理解出来るが、僕たちから予想する楽しみを奪っていることも忘れないで欲しい。

では第85回アカデミー賞の受賞予想である。既に観た作品は僕の書いたレビューにリンクを張っているので、タイトルをクリックしてみて下さい。

作品賞:アルゴ
監督賞:アン・リー「ライフ・オブ・パイ」
主演女優賞:ジェニファー・ローレンス「世界にひとつのプレイブック」
主演男優賞:ダニエル・デイ=ルイス「リンカーン」
助演女優賞:アン・ハサウェイ「レ・ミゼラブル」
助演男優賞:トミー・リー・ジョーンズ「リンカーン」
脚本賞(オリジナル):ゼロ・ダーク・サーティ
脚色賞(原作あり):アルゴ
視覚効果賞:ライフ・オブ・パイ
美術賞:アンナ・カレーニナ
衣装デザイン賞:アンナ・カレーニナ
撮影賞:007 スカイフォール
長編ドキュメンタリー賞:シュガーマン 奇跡に愛された男
短編ドキュメンタリー:Open Heart
編集賞:アルゴ
外国語映画賞:愛、アムール
音響編集賞(Sound Editing):ゼロ・ダーク・サーティ
録音賞(Sound Mixing):レ・ミゼラブル
メイクアップ賞:ホビット 思いがけない冒険
作曲賞:ライフ・オブ・パイ
歌曲賞:スカイフォール
長編アニメーション賞:フランケンウィニー
短編アニメーション賞:紙ひこうき(Paperman)
短編実写映画賞:Curfew

さて、今年の作品賞予想は容易い。全てのデータが「アルゴ」受賞を示唆しているのだ。しかし、逆に困難となったのが監督賞の予想。何故なら「アルゴ」のベン・アフレックがノミネートされないという異常事態が発生しているからである。過去84回あったうち、監督賞にノミネートされず作品賞を受賞したのは「つばさ」(1927)、「グランド・ホテル」(1932)、そして「ドライビング Mss デイジー」(1989)の3作だけである。

巷で監督賞の予想は圧倒的に「リンカーン」のスピルバーグなのだが、僕は敢えてアン・リーを推す。理由は「ライフ・オブ・パイ」を観た直感のみ。勿論、自信はない。だが果たしてスピルバーグは3度もアカデミー賞受賞に値する監督なのか?という疑問があるのだ(過去に「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」で受賞)。

次に全然自信がないのはアニメ部門の「フランケンウィニー」。「シュガー・ラッシュ」が強そうなんだよね。でもティム・バートンに受賞して貰いたい!いずれにせよ、今年は長編も短編「紙ひこうき」もディズニーが独占する可能性が高い。ディズニー王国復活を印象付ける年になるだろう。

アカデミー賞に長編アニメーション部門が新設されたのが2001年「シュレック」(ドリームワークス)から。翌年が「千と千尋の神隠し」だった。気が付いていない人が多いと思うが、実は現在までディズニー本家が受賞したことは一度もないのである。ピクサー・アニメーション・スタジオは6度も栄冠に輝いているが、ここはあくまでディズニーの子会社(元々は別スタジオ)だ。ピクサーのジョン・ラセターが失墜していたディズニーに復帰(実権掌握)してからの改革が、ようやく実を結ぶことになるだろう。

衣装デザイン賞は「アンナ・カレーニナ」が確実と思われるが、美術賞は「アンナ・カレーニナ」と「レ・ミゼラブル」が互角の勝負。どちらに転ぶかは蓋を開けてみるまで分からない。

ミュージカル・ファンとして歌曲賞は「レ・ミゼラブル」の新曲"Suddenly"を応援しているのだけれど、ぶっちゃけ客観的に見て(聴いて)アデルの「スカイフォール」の方が断然いい曲なんだよね。残念。

それから「007 スカイフォール」はロジャー・ディーキンスの撮影賞を期待する。彼は今回10回目のノミネートなのだが、なんと一度も受賞したことがないのだ。可哀想過ぎる!!でも巷では「ライフ・オブ・パイ」の方が有力と噂されているんだよね……。

それから僕はジョン・ウィリアムズが大好きなので作曲賞は「リンカーン」が獲って欲しいのだが、サントラCDを聴いた限り、地味でちょっと無理みたい。

今年最も感動的な受賞スピーチをすると予想されるのが「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイ。会場に来ている母親に向け、感謝の言葉を述べるだろう。その理由は僕のレビューをお読み下さい。視聴者の涙を誘うことは間違いない。

録音賞(Sound Mixing)は絶対に「レ・ミゼラブル」が獲らなければならない。Singing Liveという手法はミュージカル映画の革命だからである。ここから新しい時代が始まる!

有史以来、アカデミー賞の演技部門は精神障害者・性格異常者・身体障害者・知的障害者・アルコール中毒患者・ゲイ・娼婦など特異な役(マイノリティ)ほど受賞しやすいと言われてきた。今年もジェニファー・ローレンス(精神障害者)とアン・ハサウェイ(娼婦)が受賞すれば完全にその法則に当てはまってしまい、「それで本当にいいの?」という疑問がなくもない。しかし彼女たちの演技は一分の隙もなくパーフェクトなので、ま、しょうがないかという気も一方ではするのである。

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世界にひとつのプレイブック

評価:B+

Silver

アカデミー賞には作品賞・監督賞など8部門にノミネート。映画公式サイトはこちら

原題はSilver Lining Playbook。これは"Every cloud has a silver lining."という諺があり、直訳すると「どんな雲にも銀の裏地が付いている」→「どんな雲の裏側にも太陽に照らされた明るい部分がある」→つまり、「どんな困難な状況下でも必ず希望はある」という意味だそうだ。a silver lining=希望の光ね。

全く予備知識なしで観たので、ロバート・デ・ニーロが出演していることすら知らなかった。

映画の前半は正直、「精神を病んだ男女がお互いの傷を舐め合う話か。嫌だなぁ」と思って観ていた。しかし終わり方は爽快感があり、なかなか良かった。

兎に角この映画はジェニファー・ローレンスに尽きる。その神懸った演技力にただただひれ伏すしかない。目に力がある。彼女を拝むためだけでも入場料を払う価値がある。今年のアカデミー主演女優賞はジェニファーに太刀打ち出来る者など誰もいないだろう。ぶっちぎりだ。

あと往年のミュージカル映画へのオマージュが粋だった。例えば主役のふたりがダンス大会に向け練習を始める場面、iPodで観ているのが「雨に唄えば」の”モーゼス”(ジーン・ケリー&ドナルド・オコナーのタップ)で、クリスマスには「若草の頃」の"Have Yourself A Merry Little Christmas"(唄はフランク・シナトラ)が流れ、大会の曲は「ウエストサイド物語」の”マリア”といった具合。That's Hollywood ! That's Entertaiment ! という感じだった。

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2013年2月20日 (水)

大林宣彦監督は何故AKB48「So long !」MVを撮ったのか?その個人史を辿りながら考察する。

巷では巨匠・大林宣彦 監督がアイドル・グループAKB48のミュージック・ビデオ(MV)を撮ったということで話題が沸騰している。しかし長年のファンから見ると、実はそれほど意外な組み合わせではない。

大林監督は商業映画デビュー作である東宝「HOUSE ハウス」(1977)より以前、1960-70年代にかけ草創期の敏腕CMディレクターとして名を馳せていた。チャールズ・ブロンソンを起用した「マンダム」やソフィア・ローレンの「ラッタッタ」(原付バイク)、カトリーヌ・ドヌーヴの化粧品、山口百恵・三浦友和の「グリコアーモンドチョコレート」、高峰三枝子・上原謙の「国鉄フルムーン」などがその代表作である。

つまり「これこれの商品(「So long ! 」)を売りたいので、しかじかのタレント(AKB48)を起用してプロモートして欲しい」という注文はお手の物。その道のプロなのだ。

また初期から大林監督はミュージカル志向が強かった。1969年には「てのひらの中で、乾杯!」という作品を撮っている。キリンビール工場見学者向けに上映されたPR映画で、可愛らしい「ビールの精」がビールが出来るまでの工程を教えてくれる全篇ミュージカル仕立ての作品であった(僕はDVDを所持している)。

原田知世主演、不朽の名作「時をかける少女」のカーテンコールでヒロインは松任谷由実(作詞・作曲)の歌を歌いながら、軽やかに時をかける。キネマ旬報誌で読者選出ベストワンに輝いた「さびしんぼう」もまた、エンドクレジットで富田靖子がショパンの「別れの曲」の旋律にのせ、瀬戸内海を渡る船上で歌うのだ。

KANが「愛は勝つ」でブレイクする前にリリースしたセカンドシングル「BRACKET」(1987)のMVも大林監督が手がけた。大林映画「日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群」、瀬戸大橋博「モモとタローのかくれんぼ 」、大連・尾道友好博「夢の花・大連幻視行」の音楽をKANが手がけた縁ゆえだった。

さらに1988年アイドル坂上香織のデビュー曲のために「香織の、-わたしものがたり」というMVを古里尾道で撮っている(僕はレーザーディスク LDで所持)。2004年には、やはり尾道で若手ミュージシャンCANCION(カンシオン)のMVを製作した(詳細は→こちら)。

さて、「So long ! 」である。大林監督の発言を引用する。

「AKB48の子らの人間的な美しさを描いてください」が秋元康さんの演出依頼の理由。一所懸命こそが美しいのだと、3.11以降のこの日本を生きる若い世代の姿を描いた。3日間で64分の映画作りも一所懸命。僕はすっかり惚れ込みましたよ。

また、今まで数多くAKB48のMVを手がけてきた高橋栄樹 監督(軽蔑していた愛情、夕陽を見ているか?、ポニーテールとシュシュ、永遠プレッシャー)は大林監督に私淑している。高橋監督が乃木坂46を撮った「生田絵梨花×高橋栄樹」という作品は尾道でロケを行い、しかもなんと生田が映画館で大林監督の「この空の花 -長岡花火物語」を観るシーンまであるのだ!その高橋監督は”見習い”として「So long ! 」ロケに参加し、部分的にカメラで撮影しているという(←この情報はツイッター上でのやり取りで、高橋監督ご本人から直接伺った)。高橋監督(1965年生まれ)やアニメ「おおかみこどもの雨と雪」「サマーウォーズ」の細田守 監督(1967年生まれ)は正に”大林チルドレン”と呼べるだろう。細田監督の「時をかける少女」は大林版のリメイクではなく、なんと続編として仕上がっている。細田監督は金沢美術工芸大学在学中に「大林宣彦ピアノコンサート」なるものを企画、大林監督は彼のことを「僕の映画の息子」と呼んでいる。閑話休題。

So long ! 」はいきなりA MOVIEの文字から始まる。これは「HOUSE ハウス」から「日本殉情伝 おかしなふたり」まで大林映画の慣例だったが、「異人たちとの夏」(1988)以降封印され、「転校生 さよならあなた」(2007)から復活したもの。”これが映画だ!”という宣言である。続いて大林監督のナレーションが被る。アヴァンギャルドな個人映画仕様。そしてなんと本作は「この空の花 -長岡花火物語」の続編として仕上がっていたのだからぶっ飛んだ!「この空の花」の映像が引用され、出演者も一部重複している。アイドル相手に、したたかにもこんな芸当を成し遂げてしまう大林監督にも驚かされたし、この異形の怪作にGoサインを出した秋元康プロデューサーの英断も凄い。試写で見せられた段階で「こんなふざけたもの創りやがって!」と激怒し、他の監督に撮り直しを命じるのが普通だろう(時間は十分あったし、秋元Pはそれだけの力を持っている)。果たしてこれはアイドルのMVと言えるのか!?AKBヲタの間で賛否両論渦巻き、喧々囂々、騒然となることは必定。いや、炎上マーケティングを得意とし、予定調和を嫌う秋元Pのことだから、それを見越した上で「面白そうだ」とニンマリしているのかも知れない。結局僕たちは彼の手のひらの上で踊らされているだけなのだ。

AKB48は東日本大震災直後から、被災地支援として毎月一回、メンバー数名を現地に派遣してミニ・コンサート活動を続けてきた(現在も継続中)。「So long ! 」の舞台となる福島県南相馬市にも彼女たちは既に訪れている。一方、大林監督は「この空の花」で新潟県長岡市を舞台とし、東日本大震災と福島原発事故を包括的に語った。「So long ! 」の物語は南相馬と長岡を結び、それと共にAKBと大林宣彦も合体した。正に監督が言うように「映画とは辻褄の合った夢」なのである。

So long ! 」はいろいろな意味において異色作であり問題作だ。これを受けいられるのか、それとも拒否反応を示すか。貴方の場合はどっちだろう?

追伸:大林監督が「HOUSE ハウス」より前に企画し、温め続けているライフワークが福永武彦の小説「草の花」映画化である。このタイトルがまるで隠し言葉のように密やかに、「So long ! 」に仕組まれている。そこにもご注目下さい。

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2013年2月18日 (月)

柳亭市馬・柳家喬太郎 二人会(2/17)

トリイホールへ。

  • 桂ひろば/狸の化け寺
  • 柳亭市馬/藪医者
  • 柳家喬太郎/彫師マリリン (喬太郎 作)
  • 柳家喬太郎/館林
  • 柳亭市馬/妾馬 八五郎出世

ひろばさんは仕事で静岡の某ホテル402号室に泊った時、部屋が非常口の外(階段側)にあり、しかも正三角形!だったことをマクラに。この噺で学んだ言葉。畦鍬組(くろくわぐみ)=土木請負業者。

喬太郎さんは自分たちのことを「浮草稼業」と言い、東京郊外の落語会に出演した時、駅近のコンビニ前(灰皿の設置された場所)でタバコを吸っていると公衆電話の所にいた女子中学生に「あの、……」と声を掛けられたそう。「いけね、タバコが迷惑だったのかな」と一瞬考えたが、彼女は続けて「公衆電話ってどうやって掛けたらいいんですか?」と尋ねたのだとか。何というジェネレーション・ギャップ!自作は赤塚不二夫の漫画を彷彿とさせるようなアナーキーな登場人物が次々と出てくる噺で、「落語の狂気」を感じさせた。凄い!あとtattoo(刺青)のことを、着物を包む「たとう紙」と勘違いするギャグが受けていた。

仲入りを挟み喬太郎さんの古典。富士そば、小諸(こもろ)そばなど立ち食いそば、歌舞伎座近くの歌舞伎そばなどの話題を振り、名古屋にCoCo壱番屋が展開するラーメン屋(麺屋ここいち)があってカレーラーメンが看板メニューだったが、すぐ潰れたと。また青森で味噌カレー牛乳ラーメン!なるものを食べて、これが意外とイケたそう。バターも載っているとか!

市馬さんは師匠で人間国宝の柳家小さん(故人)が園遊会に出席した時のエピソードを披露。天皇が直々に「近頃、落語はどうですか?」と声を掛けて下さり、緊張した小さんは「はい、大部良くなりました」と答えたと。

僕は基本的に人情噺が大嫌いなので「妾馬」について語るべきことはない。退屈で眠たかった。全く時間の無駄。これはネタ自身の問題なので(有難がる連中の気が知れない)、市馬さんに咎はない。

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2013年2月16日 (土)

ゼロ・ダーク・サーティ

評価:A

アカデミー作品賞、主演女優賞、オリジナル脚本賞など5部門にノミネート。2001年9月11日の同時多発テロ以降、アメリカがウサーマ・ビン・ラーディンをどう追い詰めていったかが克明に描かれる。

映画公式サイトはこちら。ちなみに「ゼロ・ダーク・サーティ」とは軍事用語で午前0時30分のことだそう。

Zero

監督は「ハート・ロッカー」で女性として初めてアカデミー監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー。

上映時間157分の長尺を全く感じさせない緊張感、充実感。ビン・ラーディンが発見・殺害されたのが2011年5月だから、たった1年強でこれだけのリサーチ、脚本・映像化を実現した能力は驚嘆に値する(北米公開は2012年12月)。

主役のCIA情報分析官を演じるジェシカ・チャステインは巨匠テレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」でGrace=〈神の慈愛〉を象徴する母親役だった。今回は全く対照的で颯爽としてタフ、格好いい役柄。しかし最後、ビン・ラディーンの死体を確認した時の彼女の表情に勝利の満足感とか歓びはなく、むしろ人間の心の闇、底知れぬ深淵を覗きこむような、虚無感しかなかった。圧倒的な孤独。テロとの闘いの不毛さを表すこのシーンの演技が最高!痺れたね。

必見。

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2013年2月13日 (水)

〈工藤重典&関西の笛吹きたち vol.3〉フルート・ライブ・セッションinフェニックス

2月10日(日)フェニックス・ホールへ。

フルート:工藤重典フィリップ・ベルノルドニコリンヌ・ピエルー(日本センチュリー交響楽団)、前田綾子(東京佼成ウインドオーケストラ)
ピアノ:岡田真季 で、

  • ハイドン/神への夕べの歌
  • モーツァルト/2本のフルートとピアノのためのソナタ
     (原曲:2台のピアノのためのソナタ)K.448
  • カステレード/笛吹きたちのヴァカンス (四重奏、ピアノなし)
  • プーランク/フルート・ソナタ (ベルノルド)
  • ドップラー兄弟/2本のフルートのためのハンガリアン幻想曲
  • ユゲス/ヴェルディの歌劇「仮面舞踏会」の主題による大幻想協奏曲
  • ボノー/ディヴェルティメント (四重奏+ピアノ)
  • クーラウ/フルート四重奏曲より終楽章 (アンコール)
  • モーツァルト/アンダンテ (アンコール)

工藤さんは第1回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールの優勝者であり、ベルノルド氏は第3回の優勝者。ちなみにこのコンクールは過去8回開催され、うち3度も日本人が第1位グランプリの栄冠を勝ち取っている(さらに瀬尾和紀さんが第1位なしの2位で入賞)。日本人って弦だけじゃなく、笛も得意なんだね。多分それは篠笛・龍笛の文化と無関係ではあるまい。だって牛若丸(義経)だって吹いていたんだから。

今回演奏した4人のフルーティストたちはいずれも達人だったが、些か前田さんの息の音が気になった。100%楽器の音色に変換されず、漏れているというべきか。

ジャック・カステレード(1926- )はフランスの作曲家だが「笛吹きたちのヴァカンス」は燦々と降り注ぐイタリアの陽光と、その色彩の微妙な変化を感じさせる曲。調べてみると案の定、作曲家はローマ大賞を受賞した翌年から5年間ローマに留学していたらしい。

プーランクは一陣の風が吹き抜けるよう。冒頭の繊細なpp(最弱音)にゾクゾクした。一方、終楽章は鋭く突き刺さるような演奏で、その対比が鮮やかだった。

華麗なドップラー兄弟、超絶技巧の「仮面舞踏会」にも魅了された。

また初めて聴いたポール・ボノー(1918-1995)のディヴェルティメントはカフェで午後のひとときを優雅に過ごしているような雰囲気があり、大好きになった。ちょっとミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」とか「ロシュフォールの恋人たち」に近い感じ。

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2013年2月12日 (火)

DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?

評価:B+

映画公式サイトはこちら

前作のドキュメンタリーは大傑作だった。僕は昨年公開された映画のベスト・ワンに選んだ。そのレビューは→こちら

東日本大震災という大きなテーマを打ち出したのが良かったし、ステージ舞台裏の過酷さには驚かされた。しかし2012年は前田敦子卒業くらいしか大きな事件がなく、製作サイドとしては苦しいだろうなぁと高を括っていた。ところがどっこいである。

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引き続き高橋栄樹監督がメガホンを取った。秋元康プロデューサーはMV(ミュージック・ビデオ)などでも同じ監督を立て続けに起用することは少なく、よほど前作の評価が高かったに違いない。その期待を高橋監督は裏切らなかった。

本作を観ながら僕が感じたことは「AKB48のステージというのは正に戦場なんだな」ということ。満身創痍で心が折れ、その場を去る者もいれば、深い傷を負いながら一旦野戦病院に退き、前線復帰を虎視眈々と狙う者もいる(例えば指原莉乃)。あるいは海外へ特攻隊志願する者もいる(「前田敦子は キリストを超えた」なんて新書が出るくらいだからAKBはしばしば宗教に喩えられる。その文脈で言えば、海外派遣組は「宣教師」と見做すことも可能だろう)。

映画は「立ち位置ゼロ=センター」に立つ者、勝者の重圧と孤独にスポット・ライトを当てつつ、同時に去っていった敗者たちにも優しい眼差しを向ける。高橋監督は2007年「軽蔑していた愛情」の頃からAKB48のMVを撮っているから、メンバーへの深い愛情・敬意が感じられる。男性との交際が報じられ辞めた平嶋夏海(チームB)や、センターの責任・重圧に耐えられなかった城恵理子(NMB48 チームM)への卒業後のインタビューは非常に興味深い。

また「階段を上っていく」という行動が、象徴的に登場することにも注目。

男性と撮ったプリクラ画像がインターネット上に流出し解雇となり、改めてオーディションを受け研究生として復帰した菊地あやか(現:チームA)がインタビューの中で、指原に対する運営の処分(博多への左遷)について「甘い」と言い切っているのも面白い。不公平な処遇への不満。こういうのを隠さず、何でもさらけ出して見せてしまうところに秋元Pの凄さがある。

握手会で、ファンに対し謝罪している一期生・平嶋夏海のスピーチを聴きながら、裏で戸賀崎智信・AKB48劇場支配人(現・AKB48グループ総支配人)が男泣きしている場面に、僕ももらい泣きした。ちなみに戸賀崎さんは劇場の物件探しから携わってきた最古参のスタッフである。

この映画に副題を付けるとしたら、さしずめ「AKB48の光と影」であろうか。

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2013年2月 9日 (土)

「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」3D字幕版

評価:A+

映画公式サイトはこちら。アカデミー賞には作品賞・監督賞など11部門にノミネートされている。

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いや、本篇を観てびっくりした。これは最新のCG技術や立体映像を駆使した宗教映画であった。かといってキリスト教、ヒンズー教、イスラム教といった特定の宗教を意味するわけではなく、海を舞台としながらそこに宇宙を描き、神を語るのである。その深遠さに目眩がした。アン・リー、凄すぎ!

漂流ものといえばロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演の「キャスト・アウェイ」(2000)という実に退屈な映画があったが、もう次元が違うね。

台湾出身のアン・リーがカメレオンみたいな監督だということは繰り返し語ったので、ここでは繰り返さない。

それにしてもどんなジャンルを撮ろうが、極めて高い水準に仕上げてくる彼の才能には目を瞠る。頭の中はどうなっているんだろう??

この映画は現代の「2001年宇宙の旅」だと断言しても過言ではない。めくるめく鮮烈なヴィジュアル・イメージの洪水。真に迫るVFXの完成度に唖然とするし、マイケル・ダナの音楽も素晴らしい(きっとアカデミー作曲賞を受賞するだろう)。

これを平面映像で鑑賞するのは勿体ない。是非3Dで!

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2013年2月 8日 (金)

セーゲルスタム/大フィル~北欧からの招待状

2月7日(木)ザ・シンフォニーホールへ。

セーゲルスタム/大阪フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会。

  • グリーグ/ピアノ協奏曲
  • セーゲルスタム/交響曲 第248番「鏡に映された歪み…」世界初演
  • シベリウス/交響曲 第5番

ピアノ独奏は小山実稚恵さん。

グリーグは遅めのテンポでオーケストラはスタカート気味に弾き、切れがある。なかなかの好演。

ただピアノはミス・タッチの多さにびっくりした。中村紘子レベル。ffは力任せに叩くので荒っぽく、音が濁る。所詮はチャイコフスキー国際コンクール第3位、ショパン国際ピアノコンクール第4位の実力でしかないなと想った。

ソリスト・アンコールはセーゲルスタム/SEVEN QUESTIONS TO INFINITY。むしろこちらの方が良かった。あまり強く弾く音がなかったからだと推察する。最後は高い音を出す鍵盤が足りなくなって指が端の木の枠を叩き、遂には蓋を閉めてその上を叩くなどのパフォーマンスあり。愉しい趣向だった。

フィンランドに生まれたセーゲルスタムの新作は演奏時間が22分で、「私にとっての創作の父であるシベリウスが最後に書き上げた単一楽章の交響曲である第7番と同じ長さになっています」と作曲家自身が語っている。

シベリウスの交響曲の中で一番有名で、演奏機会が多いのはダントツに第2番だろう。次が第1番。理由は簡単。4楽章形式で、第1楽章がソナタ形式。分り易くクラシック初心者向けなのだ。ショスタコーヴィチがアホなソヴィエト共産党幹部にも理解出来るよう作曲した交響曲第5番が一番人気なのと似ている。

シベリウスの第1番を聴けば、チャイコフスキーの影響が濃厚だったことが明瞭である。第1、第2番を書いた頃の彼は未だ形式に囚われていた。しかし第7番に至ると形式から自由になり、単一楽章に収束している。そこでは音楽とフィンランドの自然(森や湖)が渾然一体となっている。交響曲第5番はそれに至る過程の作品といえるだろう。

本来4楽章形式で書かれたが、第1楽章と第2楽章を合体し、全3楽章に改訂されたのもその現れである。なお原典(4楽章)版はヴァンスカ/ラハティ交響楽団がBISにレコーディングしており、オーケストレーションも現行のものとは随分違うので面白い。

シベリウスは1915年4月21日の日記にこう記している。

 今日11時の10分前に16羽の白鳥を見た。人生最大の感動のひとつだ! 神よ、なんという美しさ! 白鳥達は長い間、私の頭上を旋回していた。そして輝く銀のリボンのように、太陽の光の霞の中へ消えていった。
 声は鶴のような木管楽器の類だが、トレモロがない。まぎれもなくサリュソフォーンの音色だが、白鳥の声はトランペットに近い。小さな子供の泣き声を思い起こさせる低い繰り返し。自然の神秘と人生の憂愁! 第5交響曲のフィナーレのテーマ、トランペットのレガート……。
 これは長い間、真の感動から遠ざかっていた私に起こるべきものであった。こうして今日、私は聖なる殿堂にいるのだ。

この体験、啓示が交響曲第5番・終楽章の主題となった。

ちなみにサリュソフォーンとはこんな木管楽器。

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金属製でダブルリード。現在ではコントラファゴットで代用されている。

NHK大河ドラマ「平清盛」や映画「ヴィヨンの妻」の音楽で知られる吉松隆さんは高校3年生の時、シベリウス/交響曲 第7番を聴いて作曲家になる決心をしたという(詳細は→こちら)。吉松さんの交響曲の持つ静謐さや響きの透明感はシベリウスに共通する。また吉松作品は鳥をテーマにしたものが多い(「朱鷺によせる哀歌」「デジタルバード組曲」など)が、シベリウスにおける白鳥(交響曲第5番以外にも「トゥオネラの白鳥」がある)に相当すると言えるだろう。交響曲第1番「カムイチカプ交響曲」はアイヌ語で「神の鳥」という意味で、アイヌ民族の伝説をフィンランドの国民叙事詩「カレワラ」に見立てている。

セーゲルスタム交響曲は打楽器が多彩で、ハンマーを打ち下ろしたり、サンダーシートが鳴ったり、ノコギリがまるでテルミンのような音を発したりするなど遊び心満載で笑った。まるで子供がおもちゃ箱をひっくり返して大はしゃぎしているような、童心に帰れる作品だった。彼も吉松さんもシベリウス/交響曲第7番という同じ出発点なのに、どうしてここまで作風が乖離しているのだろう!?とても興味深い。ちなみに現在まで260もの交響曲を完成させているセーゲルスタムだが、1993年以降に作曲されたものは全て指揮者なしで演奏されるという。今回も彼はステージ下手でピアノを担当した。

プログラム後半のシベリウスも遅めのテンポで開始されるが、第1楽章後半のアレグロ・モデラートの部分に入るとかなり速くなり、コントラストが鮮明。弦はしっとりと濡れ、金管も仄暗く、「フィンランドの音」が感じられた。一方で木管は歯切れよく軽快。なんとも清々しい。僕が実演で聴いた中で最もシベリウスらしい、掛け値なしの名演だった。

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2013年2月 6日 (水)

尾高忠明/大阪交響楽団「大英帝国の香り」

1月31日(木)ザ・シンフォニーホールへ。

尾高忠明/大阪交響楽団(チェロ:横坂 源)で英国音楽特集。

  • ディーリアス/楽園への道
  • エルガー/チェロ協奏曲
  • ウォルトン/交響曲 第1番

尾高さんは1999年に英国エルガー協会より日本人初のエルガー・メダルを授与されており、BBCウェールズ交響楽団の桂冠指揮者でもある。その道のスペシャリストだ。

楽園への道」はオペラ「村のロメオとジュリエット」の間奏曲。大好きなオペラで、全曲版はLD(レーザーディスク)で所有している。いつかこの舞台をライヴで鑑賞することが僕の夢だ。

エルガー/チェロ協奏曲といえば、初めて聴いたジャクリーヌ・デュ・プレの火の玉のような闘魂演奏が強烈で、生で聴くのは3回目くらいだが、一度も満足できるものにお目にかかったことがない。これはある意味不幸なことである。力強さも、情熱も、ジャッキーのそれには及びもつかない。物足りない。

ソリスト・アンコールは「鳥の歌」。ヴィブラートが過剰でいただけない。上っ面の美しさのみ。これじゃあ原曲・カタルーニャ民謡@スペインの精神が伝わらない。もっとしっかりカザルスの演奏を勉強して、出直していらっしゃい。

尾高さんのウォルトンは最高だった。特に第4楽章、金管のファンファーレが無茶苦茶格好いい!痺れた。これは紛れもなく、20世紀に書かれた交響曲の傑作五指に入るね。因みに僕が選ぶのは順不同で、

  • マーラー/交響曲 第9番
  • フランツ・シュミット/交響曲 第4番
  • プロコフィエフ/交響曲 第7番「青春」
  • シベリウス/交響曲 第7番
  • ウォルトン/交響曲 第1番

次点はコープランド/交響曲 第3番かな?

僕がウォルトンの曲を初めて聴いたのが高校生の時。スタンリー・ブラック/ロンドン・フェスティバル管弦楽団のLPで映画「スピットファイア」~前奏曲とフーガだった。次にジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップスで戴冠式行進曲「王冠」「宝玉と王の杖」を聴いた。いずれも気高く、颯爽とした楽曲であった。その瑞々しい感動を今回の演奏会でありありと想い出した。

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2013年2月 5日 (火)

サロネン/フィルハーモニア管弦楽団のベートーヴェン&マーラー

2月3日(日)兵庫県立芸術文化センターへ。

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エサ=ペッカ・サロネン/フィルハーモニア管弦楽団で、

  • ベートーヴェン/劇付随音楽「シュテファン王」序曲
  • ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第4番
  • マーラー/交響曲 第1番「巨人」

ピアノ独奏はレイフ・オヴェ・アンスネス。アンスネスはノルウェー生まれでサロネンがフィンランドだから、どちらも北欧出身である。

ベートーヴェンではティンパニにピリオド楽器(クラシカル・ティンパニ)が使用された。またトランペットもピストンのないナチュラル管だった。しかしだからといって弦はピリオド・アプローチ(ノン・ヴィブラート奏法)ではなく、第1ヴァイオリンの向かい側はチェロで古典的対向配置でもなかった。

シュテファン王」は呑気で愉しい曲。タイトでスリムな演奏。

アンスネスのピアノは弱音が粒立ち、一音一音がクリアで曖昧さは皆無。サロネンの指揮は歯切れがよく、古楽器演奏などでしばしば聴かれるアクセントの強調は敢えてしない。都会的で洗練され、モダンかつスタイリッシュな競演だった。喩えるなら「ドイツの泥臭さをきれいに洗い落としたら、中から最新鋭のハイブリッド・カーが出現した」って印象。

ソリスト・アンコールはベートーヴェン/ピアノソナタ 第22番 第2楽章

今回フィルハーモニア管を久しぶりに聴いて(前回はシノーポリ指揮でマーラー/千人の交響曲@旧フェスティバルホール)感じたのは、日本のオケも近年メキメキ腕を上げ、彼らと互角の勝負だなということ。弦に限れば大阪フィルの方が上手いかも。あとフィルハーモニアはホルンとフルートが下手だった。ホルンはマーラーで3回以上音を外したし、フルート主席もBBC交響楽団の向井知香さんの方が勝っている。

さて、サロネンのマーラー解釈は怜悧で、大曲をまるで外科医のように鮮やかに腑分けしていく。レナード・バーンスタインの指揮するマーラーは主観的で、レニーがどんどんのめり込み、熱くなっていくところがスリリングかつエキサイティングだったが(彼に師事した大植英次さん、佐渡裕さんも似た傾向がある)、サロネンはその対局にあり、客観的でクール。見通しがよく、たとえ大音量でも各声部がクリアに聴こえてくる。その眼差しは彼同様に作曲家&指揮者として活躍するピエール・ブーレーズに通じるところがある(いやレニーも作曲家なんだけれどさ、マーラーに関しては同一化しちゃうんだよね)。

第1楽章のクライマックスには鋭利な切れ味があり、サロネンがロサンゼルス・フィルと録音したバーナード・ハーマン作曲/映画「サイコ」(アルフレッド・ヒッチコック監督)の音楽を想起した。

第2楽章には躍動感が溢れ、また対照的に中間部のエレガントさも印象深い。

テンポは自在に、極端なまでに動かす。終楽章コーダでは「ど、どこまでアッチェルランド!?」と加速の限界まで挑戦するかのようであった。

アンコールはボッケリーニ(ベリオ 編)/マドリッドの夜警隊の行進

余談だが、マーラー「巨人」第3楽章・カロ風の葬送行進曲はモーリッツ・フォン・シュヴィントの「狩人の葬列」という版画に触発されたという。

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どうです、雰囲気出てるでしょう?

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2013年2月 4日 (月)

 カール・ライスター現る!/いずみシンフォニエッタ大阪 定期「作曲家 西村朗」

2月2日(土)いずみホールへ。

飯森範親/いずみシンフォニエッタ大阪 第30回定期演奏会。ここの音楽監督でもある大阪生まれの作曲家・西村朗さんの個展であった。

  • ピアノ・ソナタ 
  • オーケストラのための「耿(こう)」 (1970/2013・初演)
  • 室内交響曲 第3番〈メタモルフォーシス〉
  • クラリネットと弦楽のための協奏曲〈第一のバルド〉
  • 室内交響曲 第4番〈沈黙の声〉 (初演)

ピアノ独奏は碇山典子さん。そして元ベルリン・フィル主席クラリネット奏者カール・ライスターが登場。

正直僕は今まで西村さんの曲を理解出来ず、苦手だった。足を向ける気になったのは世界一の名手ライスターの演奏を生で耳にしたかったからだ。しかし慣れたのか、不思議と今回は心地よく、穏やかな気持で聴くことが出来た。

J.S.バッハからシェーンベルクに至る西洋音楽は非常に論理的な芸術である。平均律、十二音技法、主題と変奏、ソナタ形式、三部形式、ロンド形式、フーガ、対位法、和声学、等々。曲はこれらのルールに則って構築される。理詰めの音楽であると断じても過言ではない。しかし日本の武満徹はそういう理屈から離れて、音楽をもっと割り切れない柔らかいもの、曖昧模糊として流動的な、「」や「」に近い存在として捉えた。そして西村さんはその流れを汲んでいるということが漸く分かった。

西村さんの特徴として、チベット仏教への関心が上げられる(武満にも5人の打楽器奏者とオーケストラのための"From me flows what you call Time"がある)。クラリネットと弦楽のための協奏曲〈第一のバルド〉はチベット仏教の教典「死者の書」を基に輪廻転生をテーマとし、魂の在り処を描く。室内交響曲 第4番〈沈黙の声〉でも最後にマントラ(真言)のような声が聴こえてくる。

あと武満の「水」に対して、西村さんは「光」で勝負する。高校2年生、16歳の時に作曲した「」は訓読みで「ひかり」である。音のシャワーが気持ちいい。

西村さんによると、生前の武満と次のような会話を交わしたそうである。

武満「西村くん、君は音が多すぎるから減らしなさい」
西村「減らせる音は一音もないんです」
武満「どうしようもないな、君は!」

しかし最近の西村作品に比べると「」は音符の数が少なく、「もしこれを武満さんに聴いてもらっていれば、少しは褒めてくれたかも知れません」と西村さん。

18歳で書いたピアノ・ソナタは意外にもシンコペーションのリズムが多用されており、JAZZっぽかった。西村さんの新たな一面を見た。

室内交響曲 第3番〈メタモルフォーシス〉の始まりは風の音。やがて曲調は流転して沸騰するマグマになる。

室内交響曲 第4番〈沈黙の声〉は還暦を迎え、新境地ともいうべき作品。呼びかけの声に対して、応答を待つための間=パウゼが多用されていた。西村さん曰く、「間が大事なんです」

クラリネットと弦楽のための協奏曲〈第一のバルド〉はカール・ライスターのために書かれた。ライスターからの注文は「現代音楽(特殊)奏法は吹かない。クラリネットが奏でる一番美しい音だけで書いて欲しい」とのことだったそう。

ライスターがベルリン・フィルに所属した期間1959-1993年はヘルベルト・フォン・カラヤンが芸術監督を務めた1955-1989年とほぼ一致する。カラヤンが完璧主義者だったように、ライスターも一分の隙もないパーフェクトなパフォーマンスだった。一音一音の粒が揃い、掠れることなど一瞬たりとてない。揺らぎない。曲は消え入るように終わるが、研ぎ澄まされた緊張感があった。感服した。

いずみシンフォニエッタ大阪の次回定期は7月13日(土)。待望の吉松隆(NHK大河ドラマ「平清盛」)さんの新作が発表される。その吉松さんも聴きに来られていたようで、Blogコメントが面白い→こちら。ぜひ当日は(噛み合いそうもない?)お二人のトークを聴きたいものである。

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2013年2月 1日 (金)

ドーヴァー海峡の向こう側 2013(アイリッシュ・フルート、ハープ&チェンバロ)

1月27日(日)、大阪府豊中市のノワ・アコルデ音楽アートサロンへ。

守安功/アイリッシュ・フルート、ホイッスル、リコーダー
守安雅子/アイリッシュ・ハープ、コンサーティーナ、バゥロン
平井み帆/チェンバロ で、

  • あなたは私のペギーを見ていない
    (アンドリュー・アダム@スコットランド)
  • ミセス・ウォーラー
    (ターロック・オキャロラン@アイルランド)
  • グラウンド(ジョン・ブロウ)@イングランド
  • 小鳥愛好家の楽しみ(作者不詳)@イングランド
  • 本の歌(アイルランドの伝統音楽)
  • ミセス・ディレイニー/プランクスティ・オルーク/
    ミセス・エドワーズ(オキャロラン)
  • サリー・ガーデンズ(アイルランドの伝統音楽)
  • 長老派のホーンパイプ(作者不詳@イングランド)/
    グラウンド(ゴッドフリー・ケラー)
  • 組曲第4番(マシュー・ロック@イングランド)
  • 雅の島(フィル・カニンガム@イングランド)
  • 私は眠っている(アイルランドの伝統音楽)
  • フィーナ湖のほとり(スコットランドの伝統音楽)/
    ホグタイズ・リール(フィル・カニンガム)
  • エレナー・プランケット/ブリジット・クルーズ
    (オキャロラン)
  • リコーダーの名人(ジョン・ヤング 出版)より
     トランペットの調べ/アバディーンの美女ディーン
     (スコットランド民謡)/すべての営みに潜む魂/美しい森/
     ウィンチェスターで結婚式があった/ダイモンの踊り
  • イニシア島"Inisheer"(トマス・ウォルシュ@アイルランド)
  • 愛のグラウンド(ゴッドフリー・フィンガー)
  • 無伴奏チェロ組曲第1番よりジーグ(J.S.バッハ)
  • 映画「タイタニック」3等船室の音楽(アイルランド舞曲)

サリー・ガーデンズ」は当初プログラムになかったが、コンサートを聴きに来ていた古楽歌手の丸谷晶子さんに守安(功)さんが呼びかけ、飛び入り参加で実現した(「事前にお願いするとギャラが発生しますから」と守安さん)。大好きな曲なので嬉しかった。

あなたは私のペギーを見ていない」は1710年の作曲。

全盲の吟遊詩人ターロック・オキャロランについて守安さんは「アイルランド古来のパープの伝統と、当時の最先端だったヴィヴァルディ、コレルリなどイタリアのバロック音楽、そして民族音楽が渾然一体となっている」と解説。260曲あるオキャロランの楽曲を守安夫妻が全曲録音するプロジェクト(世界初)が現在進行中。

グラウンド」(ジョン・ブロウ)はチェンバロ・ソロ。1600年代後半の作品。

小鳥愛好家の楽しみ」はソプラニーノ・ソロ。1717年に出版された”小鳥に歌を教える本”だそう。森のひばり、カナリア、ナイチンゲール、ムクドリ、ベニヒワ、鷽(ウソ)鳥など。

本の歌」は引越しで本を運んでいた舟が沈んでしまい、その本たちへのLamentation(哀歌、鎮魂曲)。

オキャロランの3曲はチェンバロとハープのデュオ。曲名はそれぞれパトロン、あるいはその妻の名前である。

マシュー・ロックはリコーダー&チェンバロ。トリッキーな伴奏が独特の味わい。

雅の島」はコンサーティーナ&チェンバロ。

私は眠っている」はアイルランドの葬式でしばしば演奏される楽曲だそう。

フィーナ湖のほとり」は守安さんの解説によるとフリーリズム=「追分形式」と。

ブリジット・クルーズ」はオキャロラン初恋の相手の名前。

リコーダーの名人」という楽譜は全部で179曲もあるという。

また客席からのリクエストでスプーン2本を背中合わせにして打楽器として用いるスプーンズ&ホイッスルの演奏も披露して下さった。

J.S.バッハのジグはリコーダー&チェンバロ&バウロンで。こういう編成、速いテンポで聴くと「ああ、この曲はやっぱり踊りの曲なんだな」と新鮮。凄くいいね!

いつもながら盛り沢山で愉しい演奏会だった。また行こう。

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