DOCUMENTARY OF AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?
評価:B+
映画公式サイトはこちら。
前作のドキュメンタリーは大傑作だった。僕は昨年公開された映画のベスト・ワンに選んだ。そのレビューは→こちら。
東日本大震災という大きなテーマを打ち出したのが良かったし、ステージ舞台裏の過酷さには驚かされた。しかし2012年は前田敦子卒業くらいしか大きな事件がなく、製作サイドとしては苦しいだろうなぁと高を括っていた。ところがどっこいである。
引き続き高橋栄樹監督がメガホンを取った。秋元康プロデューサーはMV(ミュージック・ビデオ)などでも同じ監督を立て続けに起用することは少なく、よほど前作の評価が高かったに違いない。その期待を高橋監督は裏切らなかった。
本作を観ながら僕が感じたことは「AKB48のステージというのは正に戦場なんだな」ということ。満身創痍で心が折れ、その場を去る者もいれば、深い傷を負いながら一旦野戦病院に退き、前線復帰を虎視眈々と狙う者もいる(例えば指原莉乃)。あるいは海外へ特攻隊志願する者もいる(「前田敦子は キリストを超えた」なんて新書が出るくらいだからAKBはしばしば宗教に喩えられる。その文脈で言えば、海外派遣組は「宣教師」と見做すことも可能だろう)。
映画は「立ち位置ゼロ=センター」に立つ者、勝者の重圧と孤独にスポット・ライトを当てつつ、同時に去っていった敗者たちにも優しい眼差しを向ける。高橋監督は2007年「軽蔑していた愛情」の頃からAKB48のMVを撮っているから、メンバーへの深い愛情・敬意が感じられる。男性との交際が報じられ辞めた平嶋夏海(チームB)や、センターの責任・重圧に耐えられなかった城恵理子(NMB48 チームM)への卒業後のインタビューは非常に興味深い。
また「階段を上っていく」という行動が、象徴的に登場することにも注目。
男性と撮ったプリクラ画像がインターネット上に流出し解雇となり、改めてオーディションを受け研究生として復帰した菊地あやか(現:チームA)がインタビューの中で、指原に対する運営の処分(博多への左遷)について「甘い」と言い切っているのも面白い。不公平な処遇への不満。こういうのを隠さず、何でもさらけ出して見せてしまうところに秋元Pの凄さがある。
握手会で、ファンに対し謝罪している一期生・平嶋夏海のスピーチを聴きながら、裏で戸賀崎智信・AKB48劇場支配人(現・AKB48グループ総支配人)が男泣きしている場面に、僕ももらい泣きした。ちなみに戸賀崎さんは劇場の物件探しから携わってきた最古参のスタッフである。
この映画に副題を付けるとしたら、さしずめ「AKB48の光と影」であろうか。
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