芸術的才能は遺伝するか?~バッハ家、服部家、宮川家、そしてミュージカル「レ・ミゼラブル」の場合
果たして音楽の才能は遺伝するのか?という命題に対して、J.S.バッハの家系が具体例として取り上げられることが多い。
大バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエル(C.P.E.)はハイドンやベートーヴェンに多大な影響を与え、末子クリスティアンは「ロンドンのバッハ」として知られ、モーツァルトの初期作品はクリスティアンと瓜二つである。また長男ヴィルヘルム・フリーデマンや五男ヨハン・クリストフ・フリードリヒも作曲家。約2世紀半の間にバッハ家が輩出した音楽家は60人に及ぶという。
日本に目を向けてみよう。「蘇州夜曲」「東京ブギウギ」「青い山脈」などの作曲で有名な服部良一(1907-1993)は土人形師の息子として大阪・玉造に生まれた。朝比奈隆/大阪フィルハーモニー交響楽団のために「大阪カンタータ」を書き、「青い山脈」の旋律は六甲山を眺めている時に浮かんだそうだ。その息子・服部克久(1936-)は「音楽畑」シリーズで有名であり、アレンジャーとしても活躍している。さらに孫の服部隆之(1965-)はドラマ「王様のレストラン」「新選組!」、ミュージカル「オケピ!」などの音楽を担当し、三谷幸喜とのコラボレーションで名高い。
また「恋のバカンス」「宇宙戦艦ヤマト」「ゲバゲバ90分!」で知られる宮川泰の息子、宮川彬良はNHK教育テレビ「クインテット」のアレンジなどで大活躍しており、作曲家としても「マツケンサンバII」が大ヒットした。僕は新作のバレエ音楽「欲望という名の電車」がすごく好きだ。
最後に現在映画が公開中で、俄然盛り上がっているミュージカル「レ・ミゼラブル」を取り上げよう。これやミュージカル「ミス・サイゴン」を作曲したのがクロード=ミッシェル・シェーンベルク(1944-、フランス)である。まずは写真をご覧あれ。
彼の祖父の兄がアルノルト・シェーンベルク(1874-1951、オーストリア・ウィーン生まれ)。12音技法を創始し、無調音楽への道を切り開いた作曲家であり、「浄められた夜」(弦楽合奏版・弦楽六重奏版あり)や「グレの歌」が有名。
写真を見比べてびっくり。DNAの威力はすごいでしょう?そして豊かな音楽的才能も確実に遺伝していたのである。
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