白黒3Dアニメーション「フランケンウィニー」
評価:A
映画公式サイトはこちら。
「フランケンウィニー」は元々、1984年にティム・バートンが監督した30分の短編で、実写映画だった。これは長らくお蔵入りとなり、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」DVDの特典映像として初めて収録された。今回それが長編ストップモーション・アニメーションとしてリメイクされた。
ティム・バートン作品全てを貫くテーマは「異形(Freak)への愛」だ。本作ではそれが最も純粋で、私的な形で結晶化している。彼の最高傑作と言っても過言ではない。
全篇、過去のホラー映画へのオマージュで溢れている。
タイトルから分かる通り、映画「フランケンシュタイン」(1931)をベースにしていることは勿論だが、例えばスパーキーの恋人犬をご覧あれ。
彼女は映画「フランケンシュタインの花嫁」(1935)のパロディになっている。
また理科のジクルスキ先生は、
明らかにゴシック・ホラーの名優ヴィンセント・プライス(「恐怖の振り子」、「アッシャー家の惨劇」、「赤死病の仮面」などエドガー・アラン・ポー・シリーズに主演)をカリカチュアライズ(戯画化)したもの。
彼はマイケル・ジャクソン「スリラー」MVのナレーションでも有名だが、ティム・バートンが私淑しており、1982年の初監督作品「ヴィンセント」(6分の短編アニメーション)はそのものズバリ、ヴィンセント・プライスへの熱烈なラヴ・レターである(プライス本人がナレーションを担当)。また遺作はティム・バートンの「シザーハンズ」である(マッドサイエンティスト役)。この時ヒロインを演じたウィノナ・ライダーはこの度「フランケンウィニー」で声優を務めている。
級友エドガーの名前は当然、エドガー・アラン・ポー由来だが、
その造形は「ノートルダムのせむし男」を彷彿とさせるといった具合。
同じく級友にトシアキという日本人の少年がいるのだが、何故日本人?と疑問に感じていたら、後半その必然性が明らかとなる(ネタバレなのでここでは説明しない)。グレムリンやミイラ男、ドラキュラのパロディもあるし、若き日のクリストファー・リーまで登場!
舞台となるのはアメリカ郊外の町ニュー・オランダ。これも何故オランダ?と思っていたらクライマックスに風車小屋が登場したので納得した。フランケンシュタインだから風車小屋は絶対必要だもんね。でもアメリカだから基本的に風車小屋はない。だから……。
Frankenweenieとは「フランケンおたく」という意味。ティム・バートンの自画像(自伝)でもあるわけだ。
「キモカワイイ」キャラクターが次から次に登場して飽きさせない。ホラー映画を愛する全ての人にお勧めしたい。
来年のアカデミー賞、長編アニメーション部門は是非本作が受賞して欲しい!だって今回逃したら、ティム・バートンがオスカーを手に入れるチャンスは恐らく二度とないだろうから。
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