ザ・チーフタンズ 結成50周年記念コンサート
ザ・チーフタンズのことを初めて知ったのは映画「遥かなる大地へ」(1992)公開時である。今から丁度20年前だ。当時、夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマン共演で、アイルランドの小作人(クルーズ)と地主の娘(キッドマン)がアメリカ大陸に渡る物語だった。サントラはジョン・ウィリアムズが作曲したオーケストラ曲に、ザ・チーフタンズが絡むという構成だった。ちなみに主題歌はアイルランド出身の歌手エンヤが担当した。
ザ・チーフタンズは1962年に結成(今年50年)。アイルランドの伝統音楽に現代的アレンジを施し、あらゆるジャンルの共演者を迎えその融合を図った。グラミー賞を7回受賞。スタンリー・キューブリック監督の映画「バリー・リンドン」(1975)の音楽を担当し、「愛のテーマ(アイルランドの女)」で世界的名声を博す。
12/2(日)兵庫県立芸術文化センターへ。
チーフタンズで使用している民族楽器はアイルランドのバグパイプ=イーリアンパイプや山羊皮を張った片面太鼓=ボーラン。 またイーリアンパイプを担当するパディ・モローニはホイッスル(ソプラニーノ・リコーダーに似た縦笛)も兼任。
メンバーはアイルランドのダブリン出身者が多いが、ヴォーカルのアリス・マコーマックはスコットランド北西部の海岸沖にあるルイス島の出身。フィドル(ヴァイオリン)兼ステップ・ダンスを踊るジョン・ピラツキ&ダンス専門のネイサン・ピラツキ兄弟はカナダ出身。彼らはカナダで生まれたオタワ・ヴァレー・ステップダンスとアイリッシュ・ダンスを融合させたダイナミックな踊りで観衆を魅了した。またキャラ・バトラーによるアイリッシュ・ダンスもあり。彼女の姉ジーン・バトラーは「リバーダンス」の初代プリンシパルである。
民族舞曲あり、歌あり、ダンスあり。アイルランド民謡からスコットランド、イングランドの曲ありと盛り沢山。実に愉しい!彼らの演奏を聴きながら、曲調がアメリカのカントリーミュージックに近いなと感じた。そこではたと気がついた。
ジェームズ・キャメロン監督の大作「タイタニック」(1997)は1912年イギリスのサウサンプトン港を出発し、ニューヨークに向かう途中で事故に遭う。映画の中でレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが船底に近い3等客室でダンスを踊る場面がある。ここで流れる音楽がアイリッシュ・ミュージックなのだ。つまりこのようにしてアメリカ大陸に伝播したというわけ。音楽は国境を超え、繋がっている。ちなみにキャメロンは当初エンヤに音楽を依頼したが、経験がないからと断られている。代わりに登板したジェームズ・ホーナーはキャメロンにこう言った。「要するにエンヤに似た曲を書けばいいんだろう?お安いご用さ」こうして彼はアカデミー歌曲賞および作曲賞を受賞した。
なお来日コンサートの模様は2013年2月にWOWOWで放送される予定。
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