ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q + 巨神兵東京に現る 劇場版
評価:不能(保留)
一言で感想を述べれば、「僕たちはこんな続きを観たかったのではない!」に尽きる。
シリーズ前回までのレビューは下記。
1995-96年にテレビで放送された「新世紀エヴァンゲリオン」は画期的アニメーションだった。しかし製作期間が足りず現場は混迷を極めた。スケジュールが行き詰まり、最終2話は完全に破綻した。続く劇場版でも物語前半に散りばめられた伏線が回収されることなく、大風呂敷を広げたまま消化不良のうちに終わった。
そしてreboot(再起動)された新劇場版が始動した。ファンとしては総監督・庵野秀明にいくら時間を掛けてもいいから、こんどこそいいものを作って欲しい、物語を綺麗に完結して欲しいという気持ちだった。
しかし第3作「Q」を観て、どうもその願いは叶えられそうにないと悟った。庵野はどんなに時間を与えられても同じ事を繰り返す。また「自意識の井戸」をせっせと掘り始めた。その先には虚空しかなく、豊かに水が湧いてくるはずもないのに。所詮、それだけのクリエイターに過ぎなかったのだ。しかし、ヱヴァ・ファンは裏切られることに慣れている。未だ見限らない。諦めない。今回は判断を保留して、第4作目に微かな希望を繋ぎたい。
「Q」の目玉は新キャラクター、鈴原サクラ(トウジの妹)だろう。可愛い。変なイントネーションの関西弁を喋るというのも兄貴譲りだ(もしかして意図的!?)。彼女は良かったが、それはあくまでキャラクターデザイン・貞本義行の功績であって、庵野ではない。また渚カヲル君は主人公・碇シンジとピアノの連弾をしたり延々とボーイズラブを展開するので、彼のファンにとっては美味しい(萌え)だろう。僕はなんの興味もないが。
今回詰まらないと感じたのはまずサード・インパクトの後ということで登場人物が少数に絞られてしまったこと。鈴原トウジはおろか加持リョウジすら出てこない。閉ざされた世界。まるで禅問答みたいだ。そして第2作「破」から14年後という設定なのに、ヱヴァのパイロット(子どもたち)だけ歳をとっていないというのもどう考えても不自然。最初僕は「これはシンジの夢なのかな?」と考えたが、映画の最後まで覚めることはなかった。
本篇の前に「巨神兵東京に現る 劇場版」(スタジオ・ジブリ)が併映された。これは東京都現代美術館で開催された展覧会「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」の展示映像として製作されたもの。監督はヱヴァにも絵コンテ等で参加している樋口真嗣(ひぐちしんじ)。ちなみに碇シンジの名前は樋口真嗣に由来する。僕は「ローレライ」など、彼の映画監督としての才能はゼロだと想っているが、平成「ガメラ」シリーズなど特技監督としては優れた手腕を発揮してきた。本作も特撮に対する愛が溢れ、ミニチュアも精巧にできていて素晴らしい。特に爆破シーンにおける炎のコントロールが天才的だ。美しい。「僕たちの樋口真嗣が帰ってきた!こういうのが観たかったんだ」と快哉を叫んだ。ちなみにキャラクターデザインは当然、宮崎駿であり、「風の谷のナウシカ」に繋がるプロットになっている。ナレーションが綾波レイの林原めぐみというのも嬉しい。
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コメント
こんにちは。
Qは賛否両論ですね!
監督が土壇場でちゃぶ台をひっくり返したみたいな噂も聞きました。
色々な考察がなされていますが、破の後にQを持ってくるような監督ですから、シンを待つしかないですね^^;
シンは「ヱヴァ」じゃなくて「エヴァ」なのが気になりますが…。
旧劇の時にチルドレン世代だった私が、今はQのチルドレンと同い年(28)です。
早く結末が欲しいですね。
投稿: mai | 2012年12月 1日 (土) 13時20分
maiさんコメントありがとうございます。
Qは賛否両論なのですか!これを褒める人がいるとは知りませんでした。まぁ何時の時代にも分かりもしないのに、分かった口を利く人というのはいますから……。
いずれにせよ結論は最終作まで持ち越しですね。その時点で真価を問いましょう。
投稿: 雅哉 | 2012年12月 2日 (日) 08時39分