希望の国
評価:A+
原発事故後の福島をモチーフにした映画(長島という架空の町が舞台になっている)。津波の被害を受けた宮城県気仙沼市でもロケされている(現地では無料上映されたという)。公式サイトはこちら。
主人公の家の庭には一本の木がすっくと立っている。それを見て僕は直ちにロシアの映画監督アンドレイ・タルコフスキーの遺作「サクリファイス」を連想した。そして映画の結末まで来て、これは紛れもなく園子温 監督版「サクリファイス」なのだと確信した。ちなみにタルコフスキーの父親はウクライナの著名な詩人であった。そして園子温の肩書きは「詩人・映画監督」である。
武満徹も書いている通り「サクリファイス」にはバッハのマタイ受難曲が流れる。対して「希望の国」で使用されるのはマーラー/交響曲第10番 アダージョだ。これがピタリとはまった。被災地の荒涼とした風景にマーラーの音楽が悲痛な、大地の叫びにように響く。胸にズシンと来た。効果音にこだわった演出も見事だった。
夏八木勲と大谷直子が素晴らしい。こういう典型的「日本の頑固親父」って、すごく久しぶりに見た気がする。なんだか懐かしかった。
想うに福島原発はパンドラの箱だった。3・11でその蓋は開け放たれ、封印されていた災厄が日本中にばら撒かれた。しかし箱の中に最後に希望が残った。園監督は力強く語る。「その希望とは愛だ」と。
エンディングクレジットで初めて監督直筆の「希望の国」という題字がドドーンと登場するのが鮮烈な印象を残す。もしあなたが日本人なら、絶対観るべし。
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