コリリアーノ「ハーメルンの笛吹き」!〜下野竜也/大フィル定期
11月15日(木)ザ・シンフォニーホールへ。
下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団による定期演奏会 第1日目。
- ベートーヴェン/「レオノーレ」序曲 第1番
- ベートーヴェン/交響曲 第8番
- コリリアーノ/「ハメルーンの笛吹き」幻想曲
(フルート協奏曲、独奏:瀬尾和紀)
下野さんのベートーヴェンはピリオド・アプローチではない(弦はノン・ヴィブラート奏法をしない)が、ティンパニはピリオド(クラシカル)楽器を使用していたのがユニークだった。
歯切れよく、躍動する演奏。「レオノーレ」序曲 第1番は耳慣れた第3番とは随分違うが、第2主題はお馴染みの旋律。
交響曲 第8番も水捌けがよく、第1楽章の展開部は激しい印象。これはよく「小規模な交響曲」と呼ばれるが、決して小さく感じない。第2楽章は緊張と緩和のコントラストが鮮明。そして極めてテンポが速く、急き立てられるような終楽章。疾風怒濤のベートーヴェンだった。
休憩を挟み現代アメリカを代表する作曲家コリリアーノの「ハメルーンの笛吹き」。映画「レッド・バイオリン」でアカデミー作曲賞を受賞(独奏はジョシュア・ベル)。僕が大好きな曲だ。プログラム・ノートに掲載された作曲家の写真(服装)を見た瞬間、「この人、ゲイっぽい」と直感した。
調べてみると案の定、彼はゲイをカミング・アウトしており、パートナーは作曲家マーク・アダモだそう。
チャイコフスキー、ラヴェル、ブリテン、プーランク、ニーノ・ロータらゲイの作曲家たちに共通する特徴は、豊かな色彩感である。村上春樹さんの著書によると、プーランクは「私の音楽は、私がホモ・セクシュアルであることを抜きにしては成立しない」と語っていたそうだ。
コリリアーノの楽曲も色とりどりの花束を連想させた。
まずステージが真っ暗になり、譜面台だけライトが灯される。そして静かに音楽は開始され、次第に明るくなってゆく。
1.夜明けと笛吹き男の歌 はまことに美しく、はかなげで幻想的。
2.ネズミ はオーボエ奏者がリードだけで「チュウ」と鳴く。鋭い音楽。
3.ネズミとの戦い はフルート・ソロがフラッター奏法など超絶技法を駆使して華麗。
4.戦いのカデンツァ は打楽器が大活躍。
6.市民の合唱 は古楽的響き。からくり時計塔の音楽を連想させる。ここで複雑にリズムが絡み合い、指揮者とは別にコンサートマスターも弓で指揮する場面も。アイヴズの交響曲 第4番を思い起こした。
7.子どもたちの行進 で客席からフルート9人+打楽器2人の中学生たちが私服姿で登場、マーチングしながらステージへ。独奏フルート奏者はティン・ホイッスルに持ち替え、彼に引き連れられ子どもたちは去っていった。やがてステージは暗転。
「現代音楽は小難しい」という従来のイメージを払拭、視覚的にも実に愉しい楽曲だった。この面白さは決してCDでは伝わらないだろう。ライヴだからこその醍醐味を堪能した。
下野/大フィルには近い将来、コリリアーノ/レッド・バイオリン・コンチェルトも取り上欲しいな、と大いに期待する。
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