マウリッツハイス美術館展と「真珠の耳飾りの少女」
僕は数年前から、オランダ、デン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館に行こうと本気で計画していた。ここは古楽のメッカ、オランダ王立デン・ハーグ音楽院(フラウト・トラヴェルソの有田正広さん、バロック・ヴァイオリンの寺神戸亮さん、バロック・チェロの鈴木秀美さんらがここで学んでいる)があることでも知られている。
その目的はフェルメールが描いた「真珠の耳飾りの少女」を鑑賞することにあった。
2003年にイギリス・ルクセンブルク合作の「真珠の耳飾りの少女」という映画があった。アカデミー賞で撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞にノミネートされたことでも伺えるように、高い評価を得た作品であった。画家フェルメールを演じたのは後に「英国王のスピーチ」でアカデミー主演男優賞に輝くコリン・ファース。モデルの少女をスカーレット・ヨハンソンが演じた。僕はこの映画がすごく好きで、特に撮影と音楽の美しさに陶酔した。ちなみに音楽は「ラスト、コーション」「英国王のスピーチ」「ハリー・ポッターと死の秘宝」「アルゴ」のアレクサンドル・デプラ(デスプラ)である。
どうしてもこの絵を、本物を観たいと希った。そしてその願いは、何と日本で叶うことになった。
神戸市立博物館へ。
マウリッツハイス美術館展でまず印象に残ったのがルーベンスの「聖母被昇天」(アントワープの大聖堂にある作品の下絵)。小説「フランダースの犬」でネロとパトラッシュが死ぬ瞬間まで見つめていた絵だ。
この絵の美しさの秘密はその構図にある。絵の左下端を焦点として、放射状に人物や事物が描かれているのだ。
そして待望の「真珠の耳飾りの少女」。
吸い込まれそうなくらい白い肌、何かを語りかけてくるような眼差し。少女は微笑んでいるようでもあり、同時に哀しみを湛えているようでもある。貴重な鉱石ラピスラズリを原料とする絵の具「ウルトラマリンブルー」も勿論、印象的。観ていて出るのはただ、感嘆の溜め息ばかり。生きててよかった。
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