仲道郁代、シュタインを弾く!
兵庫県立芸術文化センター小ホールへ。
仲道郁代さんのフォルテピアノで、
- モーツァルト/きらきら星変奏曲
- モーツァルト/幻想曲 ハ短調
- モーツァルト/ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調
- ベートーヴェン/エリーゼのために
- ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」
- ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第14番「月光」
今回使用された楽器は1790年(モーツアルトが亡くなる1年前)頃に製作されたJ.A.シュタイン モデルを復元したもの。
これを改造したフォルテピアノ修復士師・山本宣夫さんとのトークあり。現代のピアノ弦は1本70 kg(全弦で20トン!)の張力で引っ張られているが、今回使用される楽器は1本たった10 kgのテンションなのだそう。
「この楽器は華奢で繊細な音がします。モーツァルトやベートーヴェンの音楽が生まれた時代の生き証人と言えるでしょう。楽器の発達とともに失われたものも大きいのです」と仲道さん。「(フォルテピアノは)表現の幅が狭いと言う人がいますが、私はそうは思いません。大きな音が出ないので音量(強弱)の幅は狭いですが、表情の幅は広い。ニュアンスが豊かなのです」と。
山本さんはハンマーの皮と塗装のニスに当時のものを使用したそう。ニス一つで音色が変わるという。
モーツァルトの「きらきら星変奏曲」は愛らしく、温かい音がした。続けて演奏されたハ短調の幻想曲とソナタは疾走する悲しみ。凛とした美しさがあった。
「グランド・ソナタ・パテティーク(悲愴的大ソナタ)」という標題はベートーヴェン自身が付けたもの(1798年に作曲)。透明感がある。
仲道さんによると「月光」あたりまで当時のフォルテピアノは(鍵盤の裏側に設置され、膝で押し上げて 操作する)膝レバーしかなかったが、ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」あたりにくると現在と同様の足ペダルが登場したそう。
- 高田泰治/フォルテピアノ・リサイタル (←膝レバーの写真あり!)
そしてベートーヴェンは「月光」第1楽章を最初から最後まで膝レバーを押し続けて演奏するよう楽譜に指示しているそうである。これをモダン・ピアノの足ペダルで実行すると、複数の音が重なり濁ってしまうため数秒しか踏み続けることは出来ないという。本来はこういう響きがしたんだ!と、目から鱗の体験だった。
アンコールはモーツァルトの「トルコ行進曲」。
仲道さんがシュタインを使用しリサイタルを開くのはこれが初めてなのだそう。貴重で愉しいひとときであった。
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