米アカデミー賞最有力候補「アルゴ」とベン・アフレックの栄光と挫折
ベン・アフレック(40歳)を一躍時の人にしたのは1997年にマット・デイモンと共同執筆した映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」がアカデミー脚本賞を受賞した時だった。当時彼は25歳くらい。しかしその後、両者の明暗は分かれた。デイモンはスピルバーグ監督「プライベート・ライアン」、スコセッシ監督「ディパーデッド」、イーストウッド監督「インビクタス/負けざる者たち」そしてジェイソン・ボーン・シリーズに主演し、一躍スターダムにのし上がった。
一方のベンアフは鳴かず飛ばずで、特に彼のキャリアに壊滅的打撃を与えたのが、当時付き合っていたジェニファー・ロペスと共演した映画「ジーリ Gigli」(2003)であった。興業的に惨敗、評論家からも散々な評価で、年間の最低映画を選ぶゴールデンラズベリー(ラジー)賞では最低作品賞、最低男優賞、最低スクリーンカップル賞(ジェニロペと共に)など7部門を受賞。その後もラジー賞25周年最低コメディ賞を受賞。2000年代最低作品賞にもノミネートされるなど、不名誉な記録が続いた。ちなみにアメリカでの評判があまりにも悲惨だったため、「ジーリ」は日本未公開である(僕はWOWOWで観た)。
しばらくの間、「ベン・アフレック」という名前はハリウッドで物笑い、ジョークのネタに成り下がった。こうして地獄を見たベンアフだったが、タフな彼はヘコタレなかった。どん底から這い上がり、一発逆転・場外満塁ホームランをかっ飛ばしたのが本作「アルゴ」である。
評価:A
映画公式サイトはこちら。
1979年イラン革命時、アメリカ大使館人質事件の救出作戦を題材にしている。ネタバレになるといけないので詳しく書けないのは残念だが、裏テーマとして「ハリウッド賛歌」になっているところが、したたかである。
ハラハラドキドキの連続で、スリリングかつエキサイティング。クライマックス、飛行場からの脱出の場面は劇的で「これ本当に史実通りなの??いくらなんでも作り過ぎじゃない?」と感じられるところもあったが、ケレン味たっぷりで第一級のエンターテイメント作品に仕上がっている。CIAのエキスパートを自ら演じたベンアフは「こんなにいい役者だったのか!」と瞠目させられた。
アメリカの対イラン政策を俯瞰する冒頭部がとても分り易く、歴史の勉強になった。またニュース映像(リアル)と映画用撮影(フィクション)を交互に繋いで臨場感を醸し出す編集が実に巧みである。
来年のアカデミー賞で作品賞・監督賞・脚色賞・編集賞にノミネートされる可能性は高く、受賞も夢ではない。必見。
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