児玉宏/大阪交響楽団のブルックナー0番
9月28日(金)ザ・シンフォニーホールへ。
児玉宏/大阪交響楽団で、
- モーツァルト/ピアノ協奏曲 第25番
- ブルックナー/交響曲 第0番
ピアノ独奏は田部京子さん。やわらかい音色でデリケートなモーツァルト。ただ、ピアノに弾けるような軽やかさとか歯切れよさが欠けている気がした。
後半は児玉シェフが得意とするブルックナー。交響曲 第0番の存在は知っていたが、習作なのかなと勘違いしていた。プログラム・ノートによると第1番完成後に着手された交響曲で、当初は自筆譜に第2番と記されていた。だがウィーンの著名な指揮者オットー・デソフの前で試演された際に「いったい主題はどこにあるのか」と痛烈な批判を浴び、落胆した作曲家は番号表記を線で消して「anulliert(無効)」という言葉を書き添えたという。
第1楽章冒頭から低弦は明確なリズムを刻み、峻厳と立ち上がる。音楽はガッチリ堅固でライン川のように豊かに流れる。格好いい!
清浄な第2楽章は祈りの音楽。山の上の修道院を連想させる。
第3楽章スケルツォはアントニ・ガウディの設計した尖塔(サクラダ・ファミリア)の如し。ト長調のトリオはちょっとロッシーニ風?
第4楽章導入部は荒野のキリストで、主部に入るとヨハネの黙示録(天使と悪魔の戦い/最後の審判)、やがててそこに差し込む希望の光が描かれているように感じられた(ブルックナーは聖フローリアン修道院やリンツ大聖堂でオルガン奏者を歴任した)。最後の速いコーダは激しく動的。
確かにこの作品はブルックナーが「無効」としたように歪で、出来損ないの交響曲という側面があることは否めない。しかし一方、”成績は悪いけれどひょうきんでクラスの人気者”という見方も出来るだろう。児玉さんはその魅力を最大限に引き出した。
演奏会が終わり会場を後にする際、若い女性客二人が「気持ち良かった!」「最高!」「来てよかった!」と興奮気味に会話しているのが耳に届いた。全く同感である。
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