「アベンジャーズ」、あるいはアメコミのプロレス映画
評価:C
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ロバート・ダウニー・Jrはアカデミー主演男優賞候補になった映画「チャーリー」(1992)の頃からリアル・タイムで観ていて好きな役者だし、ニヒルな「アイアンマン」シリーズも愉しんだ。最新作の「アベンジャーズ」は前評判が非常に高く期待していたのだが、鑑賞中に食傷気味となり、うんざりしたというのが正直な感想である。
本作でスーパーヒーローもの「アイアンマン」「マイティ・ソー」「キャプテン・アメリカ」「ハルク」が結集。アメリカン・コミックスには他にも「X-メン」「スパイダーマン」「デアデビル」「ファンタスティック・フォー」(以上マーベル・コミック)、「スーパーマン」「スーパーガール」「バットマン」(DCコミック)など沢山あるわけで、これだけヒーローを希求している国民は、世界中を見渡してもアメリカ以外にないんじゃなかろうか?はっきり言って、ちょっと異常である。
「スーパーマン」が登場したのが1938年、「バットマン」が1939年で「キャプテン・アメリカ」が1941年。これは38年にヒトラーがオーストリア併合したことと無関係ではあるまい。そして41年には日本軍による真珠湾攻撃があり、第二次世界大戦に突入した。一方、「ファンタスティック・フォー」と「X-メン」が登場したのが1961年、「スパイダーマン」と「アイアンマン」が1963年。ベルリンの壁が築かれたのが61年、キューバ危機が62年だから、米ソ冷戦の時期と一致している。
「アベンジャーズ」はマッチョなヒーロー同士のプロレスごっこが延々と展開される。たしかに特撮は凄いしアクション映画として出来は決して悪くないが、観ていて次第に飽きてくる。
ここでプロレスの歴史を紐解いてみると、現在のプロレスの直接の起源は、19世紀後半にアメリカに広まったカーニバル・レスリングとされる。南北戦争の時代であり、レスリング勝者に懸賞金が与えられるという興行はエイブラハム・リンカーンも行っていたそうだ。
つまりアメコミのヒーローもプロレスも戦争の歴史に密接に結び付いており、「強いアメリカ」「正しいアメリカ」の象徴なのだろう。移民の集合体、多民族国家であるアメリカで、人種も生活様式もバラバラの民衆を結束させるには共通の敵(悪役)と絶対的なヒーローを必要としているとも言えるだろう。そしてそれが、ありもしない「大量破壊兵器」を理由にイラクに侵略し、「悪の枢軸」フセインを倒したジョージ・W・ブッシュと、それを星条旗を振りながら熱狂的に支持したアメリカ国民(支持率は90%に達した)の姿にも繋がっている。病んだ国である。
詰まるところ「正義とか悪というのは相対的なものであり、時代によって変わるし、まぁ日本人の僕には関係ないや」という結論です。
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