大植英次/大フィルのマーラー交響曲第3番
5月10日(木)兵庫県立芸術文化センターへ。
大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、
- マーラー/交響曲 第3番
を聴く。アルト独唱はエストニア出身のアネリー・ペーボ。さらに大阪フィルハーモニー合唱団と大阪すみよし少年少女合唱団が参加した。
会場は満席(2,001席)。大植さんは演奏時間100分のシンフォニーを暗譜で指揮。
第1楽章冒頭(牧神の目覚め)。9本のホルンによる勇壮な第1主題は非常に速いテンポで開始される。ところが途中からリタルダンドがかかり減速。エッ?とびっくりしていると再び急加速。さすが策士・大植英次。いきなり仕掛けてきた!こんな解釈、前代未聞である。重々しい第2主題を経て、オーボエによる第3主題は軽やかで空中に浮遊する。そして行進曲のリズムに乗ってクラリネットによる愉快な第4主題が登場すると、伸びやかで躍動感溢れる展開部へ(夏が行進してくる)。感興に満ち、豊かに歌う。生き生きとしたリズム、アクセントが効いている。後半の加速が凄い。そしてクライマックスで自然が吼える!のを僕は確かに聴いた。
メヌエットとスケルツォが交差する第2楽章(草原の花々が私に語ること)も動的で、生命の鼓動が感じられる。
第3楽章(森の動物たちが私に語ること)は滑稽で、おどけた感じがよく出ている。マーラーはウィーンで活躍したが、実は幼少期をチェコ辺境の村カリシュトで過ごしている。そのボヘミア的資質がこの楽章に色濃く感じられる。一方、中間部に舞台裏で演奏されるポストホルンが美しい。
独唱が登場する第4楽章(夜が私に語ること)では深い谷底から響いてくるようなアネリー・ベーボのアルトがブリリアント!一言一言噛み締めるように発せられ、思索に富み包容力ある歌唱に魅了された。
合唱が加わる第5楽章(天使たちが私に語ること)は無邪気でイノセント。そして第6楽章(愛が私に語ること)は穏やかで天国的。息の長い旋律をしっとりと、万感の想いを込めてオーケストラが歌い上げる。押しては引く感情の波。音楽は次第に高揚していき、その幸福感のうちにこの大作は締め括られた。
ホルンさえもう少し上手ければ100点満点の名演だったのに、と惜しまれる。この一点において、昨年夏に聴いた京響のマーラー3番の方に軍配が上がる。
大フィルは最大の課題である金管の強化を急げ!
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