ファミリー・ツリー
評価:B+
原題は"The Descendants"(子孫たち)。これを別の意味のカタカナ(外来語)に置き換える邦題のセンスはあまり感心しない。
映画公式サイトはこちら。アカデミー脚色賞(原作あり)を受賞。他に作品賞、監督賞、主演男優賞、編集賞の計5部門にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞ではドラマ部門の作品賞と主演男優賞を受賞(他にミュージカル・コメディ部門あり)。
監督と共同脚本は「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン。「サイドウェイ」はとても好きなコメディだ。"Loser"(人生の負け犬)二人連れがカリフォルニアのワイナリー(ナパバレー)をめぐる珍道中を描くロード・ムービー。なんと別の監督、小日向文世、生瀬勝久 主演でリメイク(「サイドウェイズ」)もされた。こちらは救いようのない駄作。
今回の新作はハワイが舞台で、ジョージ・クルーニー演じる主人公はカメハメハ大王の末裔らしい。大きな土地を持つ資産家で弁護士だから上流社会の人間である。
しかし映画が進行するにつれ脳死状態の妻が浮気していたことが判明し、ふたりの娘とも上手く行っておらず、どう接すればいいか分からない一種の"Loser"であることが次第に明らかになってゆく。
主人公一家はオアフ島に住んでいるが、高校生の娘を連れ戻すため寄宿舎のあるハワイ島に渡り、後半は妻の浮気相手に会うためにカウアイ島へも旅する。つまりこれもロード・ムービー仕立てになっているのである。
原題が示すように、主人公は祖先から引き継いだものを、子孫へどう伝えているかを真剣に見つめなおす。それが主要なテーマとなっている。
ほろ苦くて、主人公の滑稽な行動に笑ったり、ちょっと泣かされたり。映画の最後でもすべての問題が解決するわけではなく、でも最初より事態はちょっぴしだけ改善している。そして人生は続く……。そんな、素敵な映画である。
主人公と娘たちがテレビで放送されているフランスのドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」(アカデミー賞受賞)を観ている場面で「ファミリー・ツリー」は締めくくられる(画面は写らないが、モーガン・フリーマンによる英語吹き替え版のナレーションが聴こえてくるので、それとわかる)。意味深で印象的なラストだった。
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