柳家さん喬・喬太郎 親子会@亀屋(5/9)
大阪府高槻市にある割烹旅館・亀屋へ。
- 柳家喬太郎/たらちね
- 柳家さん喬/天狗裁き
- 柳家喬太郎/紙入れ
- 柳家さん喬/幾代餅
今まで「きつねうどん」のことを、大阪の人はみな「けつねうろん」と言うと信じ切っていたというエピソードをマクラに。「たらちね」は上方の「延陽伯」を江戸に移殖したもの。嫁を貰うことが決まった主人公の照れる表情が可愛らしい。また喬太郎さんの口演はリズム感があって聴いていて心地いい。
江戸には「羽団扇」として残っていたが上方では滅んでいた噺を、桂米朝さんが文献から掘り起こし復活させたものが「天狗裁き」。現在はこの型が再び東京に輸出され、主流となっているようだ。さん喬さんは年増の女を演じるのが上手くて味がある。また男衆は気風がいい。ヨッ、江戸っ子だね!上方版と比べると天狗がコミカルで軽やか。こういう東西の違いも興味深い。
「紙入れ」のマクラで喬太郎さんは「夫婦は二世の契りと申します」と始められた。「子は一世、主従は三世、間男はよせ」と続く。また「現在は《不倫》と申しますが、一昔前は《浮気》と申しました。そっちの方がいいですね。不倫だと(大声で)『倫理に反する!』と堅苦しい」で会場爆笑。ネタの方は百戦錬磨のおかみさんが表情豊かで愉しい。
古今亭が得意とする「幾代餅」は釈ネタ。その昔、真龍斎貞水という講釈師が十八番として高座に掛けており「名物幾代餅」という速記本が残っているらしい。また類似した噺「紺屋高尾」も元は同じと考えられる。さん喬さんの口演は最弱音(ピアニッシモ)から最強音(フォルテッシモ)までコントラストが鮮やか。この師弟の高座は「音楽的」という共通点がある。またマクラで噺家同士では「あいつは面白い、とか、上手い」で評価するが、お客さんは落語家を「好きか嫌い」で判断する。「そうやって我々の芸を買っていただいているのです」と。成る程、その通りだなと想った。例えば僕は東京の立川志の輔さんや上方の桂福團治さんが嫌いである(弟子の福丸くんは好き。すごい若手)。いや、確かに上手いのは分かる。でも生理的嫌悪感を感じるのだから、どうしようもない(特に志の輔さんは「ここで泣け!」みたいなあざといあの「間」に虫唾が走る)。ただ僕みたいな強烈なアンチを生むってことは、それだけ個性と実力がある証拠。だって俎上にのせる(語る)価値すらない噺家って沢山いるもの。結局、芸っていうのは理屈じゃないんだね。
喬太郎さんは少々お疲れのご様子で、亀屋の会も今後の予定は全く白紙なのだそう。ゆるりと英気を養われて、また元気な姿で上方にいらして下さい。気長にお待ちしています。
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