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アカデミー外国語映画賞受賞/イラン映画「別離」

評価:A+

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ベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞、さらにアカデミー外国語映画賞、ゴールデン・グローブ賞も受賞。

ウディ・アレンは「別離」のアスガー・ファルハディ監督に対し「(アカデミー賞)授賞式には出たくないけれど、あなたの映画を見て一緒に語りたいと思った」と手紙を書き、またスティーブン・スピルバーグは「『別離』は大差で今年のベストフィルムになるだろうと信じていたよ」とコメントしている。公式サイトはこちら

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心に響く、完璧な作品である。「これを観ずして、今年他に何を観る?」と申し上げたい。

考えてみたら僕はアッバス・キアロスタミ監督作品(「友だちのうちはどこ?」「オリーブの林をぬけて」「桜桃の味」)とか、「運動靴と赤い金魚」とか意外とイラン映画を観ている。しかし間違いなく「別離」はイラン映画史上の最高傑作だろう。

本作には2組の夫婦が登場する。そして、それぞれには一人娘がいる。ある事故をめぐり、彼らは諍うことになる。物語はミステリー仕立てで展開される。

登場人物たちは家族を守るために、いくつかのささやかな嘘をつく。しかしそのことで、また誰かを傷つけてしまう。2つの家族が壊れてゆく姿を、キャメラは静謐なタッチで見つめる。娘たちの哀しい眼差しが観客の胸を抉る。

ハリネズミのジレンマ。ここに描かれるのは、もがいてもどうしようもない「人間の業(ごう)」である。深い。肌がヒリヒリするような、魂を揺さぶられる体験だった。

映画の幕切れが鮮烈であることも特記したい。結局、人生の選択肢に正解なんてないんだという紛れもない事実を僕たちは突き付けられることになる。

また作者ははっきりと語らないが、イスラム教の戒律に対する批判がベースにあることは間違いないだろう。

イランの女性たちは現在もヒジャブ(ベール)を着用しているが、本人の意思で離婚も出来るし、子供もどちらの親と暮らすか選べることを本作で初めて知った。もっと男性優位の社会だと思っていたけれど、意外と近代国家なんだ。こういうことも学べるし、映画ってやっぱり何ものにも代えがたい芸術だと改めて痛感した次第である。

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