ジュネーヴで優勝した萩原麻未登場!~尾高/大フィル定期
4月12日(木)ザ・シンフォニーホールへ。
尾高忠明/大阪フィルハーモニー交響楽団で、
- モーツァルト/ピアノ協奏曲 第23番
- ブルックナー/交響曲 第7番
2010年ジュネーヴ国際コンクール/ピアノ部門で日本人として初めて優勝した萩原麻未がソリストを務めた。
最近モーツァルトの演奏はフォルテピアノや古楽器演奏による歯切れのいい演奏を聴き慣れているので、ペダルを多用して音と音を繋げた、萩原さんの滑らかな(レガート)モーツァルトには違和感を覚えた。この不思議な解釈はどこから来るのだろう?と考えてハタと思い当たった。
萩原さんは(「のだめカンタービレ」でお馴染み)パリ国立高等音楽院を主席で卒業。現在もそこで研鑽を積んでいる。ジュネーヴ国際コンクールの最終審査ではラヴェル/ピアノ協奏曲を弾いた。これもまるで”のだめ”みたい。つまり彼女の得意分野はドビュッシー、ラヴェルなどフランス物であり、今回も「フランス印象派の観点から捉えた」モーツァルトを披露したということなのだろう。特に弱音の美しさが際立っていた。このアプローチを是とするか非とするかは意見の分かれるところ。僕はどちらかと言えば後者かな?
尾高さんのブルックナーはゆったりとしたテンポで気宇壮大な解釈。突出したものはないが、小細工を弄さず真正面から作品に対峙する姿勢が好ましい。大フィルもそのタクトに応え、大変立派な演奏だった。
今回この2曲に心地よく身を委ねながら、面白いことに気が付いた。僕が生まれて初めてモーツァルトのピアノ協奏曲を聴いたのが第23番で小学生の頃だった。忘れもしないNHK-FMをエアチェック(←懐かしい言葉!)したマウリツォ・ポリーニのピアノ、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏するLPレコードだった。この後モーツァルトのピアノ協奏曲は全部聴いたが、今でも一番のお気に入りはこの23番である。
僕が初めてブルックナーの交響曲を聴いたのも小学生の頃FMで。やはりカール・ベーム指揮ウィーン・フィルによる第7番だった。これはそもそも第8番とのカップリングでLP3枚組みとして発売された。だから値段が6千円以上もしたので、いくら欲しくても小学生の小遣いでは到底手が届かなかったことを想い出す。そして第8番がブルックナーの最高傑作であることは頭では分かるのだが、やはり今でも僕が一番好きなのは美しくたおやかな第7番なのだ。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものである。
なお、大フィルが得意とするブルックナーなのに、客席は空席が目立った。プログラムで定期会員を数えてみると今年1月:1,031人→4月:945人と86人減。やはり3月末で大植英次さんが音楽監督を辞められたことが大きく響いている。早く次期監督を決めないと状況はますます厳しくなるだろう。今シーズンのラインアップは八方美人というか、全体を貫く理念、確固たる視座が感じられないんだよね。
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コメント
萩原さんのモーツアルト。柔らかなタッチで結構良かったと思う。
確かに型破りな解釈?は「のだめ」っぽいかも。
モーツアルトは人柄が出ます。萩原さんって多分モーツアルトみたいな天真
爛漫な心を持った人じゃないのかな。結構空席があったのは寂しかったけど。
良かったのに。
一方の尾高ブル7。ゆったりと進む完璧なテンポ。正統派の演奏。中々良かった。
大フィルも聖フローリアンに比べると格段に進歩しています。少なくとも
ソロパートの目立ったミスは無かったみたい。ホルン隊も最後までがんばったよ。
けど、ファゴット、オーボエ隊でちょっとアンサンブルの乱れがあったのは残念。
総じて去年の大植ブル9より良かったかも。
満足できる良いコンサートでございました
投稿: にこりん | 2012年4月15日 (日) 22時26分
雅哉さん、こんにちは
2日目の公演は空席は目立たず、寧ろ大植監督以外の定演としては大入りでした、いつもおじさん中心のブルックナーですが、ソリストの影響か女子トイレも結構混雑してましたし(笑)
一日目の人数が減ったのに正会員の減少が原因の一つならもっと切実です。
萩原さんは昨日のらららにも出演されてましたが、ふわぁぁぁとした人ですね。本当にのだめとダブってしまう感じ。
モツァルトも滑らかでふわふわしてて睡魔に襲われました。
投稿: jupiter | 2012年4月16日 (月) 12時57分
にこりんさん、jupiterさん、コメントありがとうございます。
定期1日目は正会員が招待されるので、その減少が懸念されますね。
モーツァルトに対する萩原さんの印象派風アプローチは音と音を繋ぐわけですから、メリハリがないので眠くなるのでしょう。僕も「らららクラシック」を観ましたが、さすがにこの弾き方はドビュッシーに相応しかった。「月の光」はいい演奏でした。
投稿: 雅哉 | 2012年4月16日 (月) 20時47分