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前田りり子/フルート300年の旅

大阪府豊中市にあるノワ・アコルデ音楽アートサロンへ。

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バッハ・コレギウム・ジャパンやオーケストラ・リベラ・クラシカなど古楽オーケストラの一員としても活躍する前田りり子さんのリサイタル。すべて無伴奏フルートのための作品。

  • ファン・エイク/「笛の楽園」より涙のパヴァーヌ
    ルネッサンス・フルート D管テナー(16世紀)
  • ファン・エイク/「笛の楽園」よりイギリスのナイチンゲール
    ルネッサンス・フルート A管ディスカント(16世紀)
  • F.クープラン/恋の鶯
    オトテールモデル 3分割バロック・フルート(フランス17世紀末)
  • J.S.バッハ/無伴奏フルートのための組曲 イ短調
    I.H.ロッテンブルグモデル バロック・フルート(ベルギー18世紀前期)
  • テレマン/ファンタジー 第8番 ホ短調
    オーバーレンダーモデル バロック・フルート(ドイツ18世紀前-中期)
  • J.D.ブラウン編集/組曲 ホ短調
    G.A.ロッテンブルグモデル ロココ・フルート(ベルギー18世紀中期)
  • C.P.E.バッハ/無伴奏フルートのためのソナタ イ短調
    H.グレンザー クラシック・フルート(ドイツ1800年頃)
  • クーラウ/ディヴェルティメント 第2番よりラルゲット
    C.サックス 6鍵式ロマンティック・フルート(ベルギー1820-30年頃)
  • ドンジョン/サロンエチュードよりエレジー
    L.ロット ベーム式フルート(フランス1878年)

お話(レクチャー)を交えながら時代の異なる8種類のフルートを吹き分けられた。

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木製のフルートは室温が10℃上下すると、音が4分の1音変わる。またモダン・ピッチがラ音A=440Hzなのに対し、バロック時代ヴェネツィアのピッチはA=460Hzくらいで約半音高く、 フランス(ヴェルサイユ)のピッチは392Hzで現在より1音低かったそう。そういったことに対応するために、当初一本の木で作られていたフルートは分割され、長さ(ピッチ)を調整出来るようになった。

ルネッサンス・フルートはかえで(maple)の木、オトテールモデルはつげ、I.H.ロッテンブルグモデルはグラナディラで製作されている。またルネッサンス期は円筒型だったのが、バロック時代に円錐管となり先細りになった。りり子さんの解説によるとそのために音色は暗め、アンニュイなものになったそう。またI.H.ロッテンブルグモデルは4分割となり、ポケットに入るようになった。

G.A.ロッテンブルグモデルはI.H.の息子あるいは孫の製作で、光と影、歪さを楽しむ姿勢があったバロック時代に対し、18世紀中期はパステル画のような軽やかな音が求められたとりり子さん。

C.P.E.バッハはオリジナル楽器での演奏(それまではコピー)。突然の休止などC.P.E.らしい曲。

C.サックスはサクソフォンを発明したアドルフ・サックスの父親。それまでは笛の穴を指で直接押さえていたのが、ここでキーが出現。フランス革命が起こり、貴族のものだった音楽が市民に開放され、コンサートホールで聴く機会が多くなった。だから指穴や吹口の穴が大きく改良され、大きな音が出るようになった。また歪さが否定され、均一な音が求められるようになったそう。作曲技法的にも転調が多くなり、クロマティックな(半音階的)演奏が必要になってきた。そしてフルートの進化に伴い、高音が弱音で吹けるようにもなった。

ここで現在でも使用されているベーム式フルートの登場である。本体は(暗い音がする)円錐形から円筒形に戻った。その代わりに頭部管が円錐形に改良された。しかし本来木管だったフルートが金属製になったため、これを嫌ったワーグナーはベーム式を使用していたフルート奏者を解雇したそうである。

ドンジョンはまことに幻想的で美しい楽曲だった。またアンコールは木製フルートに戻り、ミシェル・ブラヴェ(1700-1768、フランス)の曲が演奏された。

りり子さんが師事したバルトルド・クイケンと有田正広さんは以前聴いたことがある。

彼女の演奏を師匠と比較すると、高音が掠れたり息が100%音に変換されていないきらいがあったが、レクチャーが面白く十分フルートの妙味を堪能した。

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