DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る(デジタル上映)
昨年公開された「AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう」は2010年の彼女たちを追ったドキュメンタリー映画だった。監督は寒竹ゆり。製作総指揮をAKB48のミュージック・ビデオ(MV)「桜の栞」を撮った岩井俊二(「LOVE LETTER」「花とアリス」)が担当した。総選挙で上位になったメンバーへのインタビューを中心に、「ふんわり」した雰囲気を大切にした、今考えるとある意味微温的な、ゆるい作品だった(評価:C)。
そして2011年、彼女たちの1年間(「レコード大賞」受賞、「紅白歌合戦」まで)を描く第2弾が「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら夢を見る」である。公式サイトはこちら。
評価:A+
高橋栄樹 監督は岩手県出身。「夕陽を見ているか?」「10年桜」「言い訳Maybe」「RIVER」「ポニーテールとシュシュ」「上からマリコ」などAKB48のMVを10作品以上撮っている。お互い気心が知れているので、彼女たちもインタビューで胸襟を開いて話している印象を受けた。
映画は3月11日の東日本大震災に始まり、被災地の光景で終わる。監督の故郷への強い想いが感じられる。そして「こんな時に、自分たちはアイドルとして何が出来るのか?」をAKBのメンバー各自が自問し、「誰かのために」行動していく姿が丹念に描かれる。
5月22日岩手県・大槌町から始まったAKB48の被災地訪問は、12月25日の福島県・南相馬市まで計8回に及ぶ(それぞれ6名ずつ)。そして11月に岩手県陸前高田市を訪問した研究生の岩田華怜(13)は地元の仙台市で被災し、その後最終オーディションを経て合格した経歴を持つ。彼女の家族へ宛てた手紙、その決意が胸を打つ。
大槌町のミニコンサートで、ステージにかじりつくように見ている幼い少女が「ポニーテールとシュシュ」を一緒に大声を出して歌っている姿が映る。また岩手県・宮古市では女の子が峯岸みなみに野に咲く花を手渡す。そのプレゼントをステージ上からではなく、ちゃんと下に降りて受け取るべきだったと後で後悔し、涙を流す峯岸。僕も思わずもらい泣きしてしまった。大島優子が「今回の体験で歌が持つ力を実感した」と語る言葉には重みがある。
昨年1位だった大島が今年の「総選挙」で2位になった時、スポットライトを浴びた場所では気丈に振舞っていたのに、舞台裏に戻ると篠田麻里子の胸に飛び込み号泣する姿には驚かされた。それほど悔しい想いを胸に抱いていたのか……
そして7月22日から24日の3日間、西武ドームにて開催されたコンサート。2日目のリハーサル中に前田敦子が過換気症候群で倒れた。本番までになんとか復帰したものの、公演中にまた過換気の発作に襲われる。次の曲は総選挙であっちゃんが1位=センターに選ばれた「フライングゲット」。果たして間に合うのか!?手に汗握る瞬間・・・(結果がどうなったかは映画館で目撃して下さい)。ここでは大島も過換気症候群になる様子が描かれており、また舞台裏(室温40℃)で柏木由紀がぐったりと床に横たわっていたり、氷でクーリングする子、酸素吸入するメンバーなどの姿も克明に記録されている。その過酷さは想像を絶するものがある。華やかなステージとの落差、光と影のコントラスト。もの凄いものを見た!という衝撃。これぞプロフェッショナルの仕事、正に"The Show Must Go On"である。
またこの西武ドームのライヴは臨場感溢れる音響設計(サラウンド効果)が素晴らしいことも特筆に価する。
あと面白かったのは「チーム4」誕生のエピソード(それまでは「チームA」「チームK」「チームB」の3つだった)。公演初日を前にキャプテン・大場美奈のスキャンダルが発覚し、謹慎となる。その代行に選ばれたのが島田晴香。同期でチームメイト・山内鈴蘭の証言「島田は当初、みんなを引っ張っていこう、キャプテンになりたい!という気持ちがあったはず」しかし、皮肉なことに彼女が与えられた役割は大場が戻ってくるまでの「つなぎ」でしかなく、「一体自分の存在意義はどこにあるのだろう?」という複雑な想いを抱いたまま、苦悩することになる。そういう女の子の”リアル”な気持ちをカメラは赤裸々なまでに捉える。そして大場の復帰。島田は素直に笑顔で迎えられなかったことを泣きながら謝り、大場も「辛い想いをさせてごめん」とそれを受け入れる。サブタイトルにある「少女たちは傷つきながら夢を見る」を実感させる、感動的なシーンである。
なお、総合プロデューサーの秋元康(やすす)は1月30日付のgoogle+で、次のように書いている。「AKBのドキュメンタリー映画に出てくるチーム4島田の正直さが好きだ。不器用さが好きだ。正解なんてないんだ。自由にやれ!」いい言葉だ。
上映時間121分。エンド・クレジット共に流れる主題歌「ファースト・ラビット」を聴きながら僕は、「もっと、もっと観続けていたい!」という衝動に駆られた。
この映画にはキラキラと眩いばかりに輝く、青春群像が極めて魅力的に描かれている。夢に向かって走り続ける彼女たちを観客は目撃し、声援を送りつつ、思わず自分たちも一緒に駆け出したくなってしまう、そんな作品である。
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