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2011年の大団円!〜大植英次/大フィルの第九

12月30日、ザ・シンフォニーホールへ。

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団&合唱団大阪音楽大学合唱団および、ソプラノ:スザンネ・ベルンハート、アルト:カロリン・マズア、テノール;トーマス・クーリー、バリトン:アンドレアス・バウアーで、

  • J.S.バッハ/管弦楽組曲 第3番〜アリア
  • ベートーヴェン/交響曲 第9番「合唱つき」

大バッハの「G線上のアリア」は福原友裕さんによる篠笛との共演。東関東大震災および福島原発事故への想い、そして「日独交流150周年」を記念しての演奏。

平均律に基づく西洋楽器と、それとは別の音律による和楽器との組み合わせはいわば「異種格闘技」である。はっきり言ってピッチなど合うわけがない。それでも異文化のぶつかり合いが摩訶不思議な化学反応を起こし、何だかスリリングで貴重な体験だった。

さて、いよいよ第九だが、(ベートーヴェンによる初演はどのような形であったかを研究した上で)メンデルスゾーンがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を指揮した時のものを参考にした配置だという。ヴァイオリンは対向配置(指揮台を挟み、第1と第2が向かい合う)。チェロは指揮者の正面、ド真ん中。そしてヴィオラが何と二手に分かれてチェロの両翼に。コントラバスは最後方横一列。つまり弦楽セクションは完全にシンメトリー(左右対称)になっているのだ。

舞台上手(客席から向かって右手)にトランペット、トロンボーン、ティンパニが鎮座し、その他の管楽器は下手に完全に分離されている。なんともユニーク。こんなの見たことない!

大植さんは指揮棒なし、勿論暗譜。冒頭から全身の力を振り絞ったような指揮ぶり。

ブラームスの交響曲全曲演奏会で見せたように作為的にテンポを動かすことなく(小細工なし)、第1楽章は大河のごとく滔々と流れる。テヌート気味の奏法で、一音一音を慈しむかのよう。柔らかい響きで優しく包みこむベートーヴェン。しかし強い意志も同時にそこに感じさせる。エネルギーの塊が客席にバンバン飛んでくる印象。

第2楽章は打って変わってスピード感があり、畳み込む表現。

第3楽章は穏やかで慰めの音楽。ゆったりとした第1主題、それとは対照的に動きがある第2主題。ビロードのような大フィルの弦が真に美しく、2011年の様々な出来事が浄化されていくかのよう。前日NHK-FMで放送された演奏ではこの楽章半ばのホルン・ソロで池田さんが痛恨のミスを犯したけれど、2日目は大丈夫だった(若干、危なかしかったけれど)。

第3楽章終了後に合唱団とソリストが入場。

第4楽章は冒頭で重量感たっぷりのチェロおよびコントラバスが強烈な印象を与える。そして主題(歓喜の旋律)の登場で低弦は豊かに歌う。

張りのあるバリトンの声量にも魅了された。わざわざ海外から招聘しただけあって、各独唱者がお見事!また歌詞が明瞭に響く合唱の質の高さも特筆に値する。アマチュアをここまでのレベルに引き上げた、合唱指揮:本山秀毅さんの手腕が光る。

東日本大震災で被災した人々に向け、「Freude!」(歓び)と「Brüder!」(兄弟)という歌詞に万感の思いを込めた演奏。瑞々しく生き生きと、人間讃歌を歌い上げる。

トルコ行進曲の場面ではピッコロ(井上登紀)が前に出てきて、立って吹くのも面白かった。

ゲネラルパウゼ(総休止)にはたっぷり間を取る。そして終盤、独唱の四重唱が入る所ではテンポが極めて速かった。コーダは大いに盛り上がり、音楽は一気に駆け抜ける!補助席までいっぱいの聴衆が熱狂したことは言うまでもない。飛び交うブラヴォーの声、声、声。

僕は今回の演奏を聴きながら、第九は大バッハの「マタイ受難曲」に並ぶ人類最高の音楽遺産であり、ベートーヴェンはこの曲で宇宙にも匹敵する創造物を生み出したのだということをまざまざと実感した。「今年はいろんなことがあって、絶望的な気持ちになったこともあるけれど、人生って素晴らしい。人間も捨てたもんじゃない。また来年、希望を持って生きていこう」と想った。正に一年の締めくくりに相応しい、圧巻のパフォーマンスであった。

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