映画「ミッション:8ミニッツ」とタイムパラドックス
評価:C
この映画はネタバレ全開で語らざるを得ないので、未見の方はご注意を。公式サイトはこちら。原題は"Source Code"。
乗客が全員死亡したシカゴ列車爆破事件。犠牲者の〈死ぬ8分前〉に入り込み、犯人を探し出すというのが主人公に与えられたミッションである。
まずタイムパラドックス(時間の矛盾、逆説)の説明からしなければならないだろう。タイムマシンがもし存在したとして、過去に戻り自分が生まれる前の段階で親を殺したとする。とするとその人は生まれないことになる。だったら殺したのは誰?というのがタイムパラドックスである。だからタイムトラベラー(時の旅人)は過去を決して変えてはならない。これがSFの大原則である(「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」はルール違反を犯している)。もし変えてしまうと、今とは別の歴史が生じる。同時進行で別の世界が動き出す。これがパラレルワールドだ。
だから本作をタイムトラベルものと解釈するとタイムパラドックスとパラレルワールドを生じまくりで、完全に物語が破綻している。でもどうやら作者の意図はそうではないらしい。死者の脳に入り、その最後の記憶=Source Codeを辿る、バーチャル・リアリティということみたいだ。
しかしそれでも矛盾がある。この条件だと死者たちが見たもの、聞いたものしか再現できないわけで、生きている犯人しか知らない爆弾の設置場所を主人公が見つけられる筈はないのである。
出来は悪くないが、詰めが甘い。
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