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2011年12月

2011年12月31日 (土)

リアル・スティール

評価:D

映画公式サイトはこちら

巷の評判が良かったから観に行ったのだけれど、極めて退屈だった。どうも僕はロボットの格闘物には全く興味がないみたい。「トランスフォーマー」も全然面白くなかったし。

落ちぶれたボクサーが再起するのを描く映画はよくあるが、本作ではそれをロボットに代行させるのがミソ。さらに映画「チャンプ」(1979)の父子愛を盛り込んだ。外装は一見異なるが、中身は結局、通俗的で新鮮味がない。また主人公の少年が良い子過ぎて白けるし、ムカつく。こんなガキ、いねーよ。以上。

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笑福亭たま/デジタル・ヘッド寄席 〜今年のナイトヘッドを振り返って〜

12月28日大阪・千日前のデジタルカフェへ。

木戸銭2,000円。客の入りは男性7人+女性17人。

  • 桂 治門/普請ほめ
  • 笑福亭たま/ショート落語+永遠に美しく(たま 作)
  • 笑福亭たま/ショート落語+寝床(古典)
     仲入り
  • 笑福亭たま/ショート落語+マリー・アントワネット物語(たま 作)

小春團治さんの弟子・治門さんは初めて。ネタに入ると問題ないのだけれど、マクラでセンテンスとセンテンスの間が空きすぎるのが気になった。もっと言葉にリズムが欲しい。

たまさんは今年一年のショート落語傑作選を披露。いや〜人権ショートとか、可笑しいのがいっぱいあった。

永遠に美しく」は下ネタあり。たまさんによると、皇潤(こうじゅん)の注射で若返ったヒロインが、薬の効き目が切れて老婆に戻るところ=トランスフォーメーションで笑いが喚起されるのだと。しかし古典落語「くっしゃみ講釈」とは違って、この手が何度も使えないのがこのネタの難点だと。なるほど〜面白い。

寝床」は最後に旦さん以外全員死亡という過激なバージョン。たまさんらしい。

会話が少ない地噺(じばなし)を狙った「マリー・アントワネット物語」は、たまさんの資質に余り合っていないように感じられた。どうも笑いが弾けない。

それでも十分、行って良かったという手応えを感じさせる会だった。

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2011年、特に印象に残った演奏会ベスト15

クラシック、古楽、吹奏楽のジャンルから日付順に列挙する。それぞれのタイトルをクリックすれば、レビュー記事に飛ぶ。

普通なら耳にすることのできないミャスコフスキーの交響曲や、ニーノ・ロータの九重奏曲が聴けたのが大いなる収穫であった。また、音楽監督最終シーズンを迎え、大植英次/大フィルが極めて充実した仕事を残したことも感慨深かった。

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2011年の大団円!〜大植英次/大フィルの第九

12月30日、ザ・シンフォニーホールへ。

9

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団&合唱団大阪音楽大学合唱団および、ソプラノ:スザンネ・ベルンハート、アルト:カロリン・マズア、テノール;トーマス・クーリー、バリトン:アンドレアス・バウアーで、

  • J.S.バッハ/管弦楽組曲 第3番〜アリア
  • ベートーヴェン/交響曲 第9番「合唱つき」

大バッハの「G線上のアリア」は福原友裕さんによる篠笛との共演。東関東大震災および福島原発事故への想い、そして「日独交流150周年」を記念しての演奏。

平均律に基づく西洋楽器と、それとは別の音律による和楽器との組み合わせはいわば「異種格闘技」である。はっきり言ってピッチなど合うわけがない。それでも異文化のぶつかり合いが摩訶不思議な化学反応を起こし、何だかスリリングで貴重な体験だった。

さて、いよいよ第九だが、(ベートーヴェンによる初演はどのような形であったかを研究した上で)メンデルスゾーンがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を指揮した時のものを参考にした配置だという。ヴァイオリンは対向配置(指揮台を挟み、第1と第2が向かい合う)。チェロは指揮者の正面、ド真ん中。そしてヴィオラが何と二手に分かれてチェロの両翼に。コントラバスは最後方横一列。つまり弦楽セクションは完全にシンメトリー(左右対称)になっているのだ。

舞台上手(客席から向かって右手)にトランペット、トロンボーン、ティンパニが鎮座し、その他の管楽器は下手に完全に分離されている。なんともユニーク。こんなの見たことない!

大植さんは指揮棒なし、勿論暗譜。冒頭から全身の力を振り絞ったような指揮ぶり。

ブラームスの交響曲全曲演奏会で見せたように作為的にテンポを動かすことなく(小細工なし)、第1楽章は大河のごとく滔々と流れる。テヌート気味の奏法で、一音一音を慈しむかのよう。柔らかい響きで優しく包みこむベートーヴェン。しかし強い意志も同時にそこに感じさせる。エネルギーの塊が客席にバンバン飛んでくる印象。

第2楽章は打って変わってスピード感があり、畳み込む表現。

第3楽章は穏やかで慰めの音楽。ゆったりとした第1主題、それとは対照的に動きがある第2主題。ビロードのような大フィルの弦が真に美しく、2011年の様々な出来事が浄化されていくかのよう。前日NHK-FMで放送された演奏ではこの楽章半ばのホルン・ソロで池田さんが痛恨のミスを犯したけれど、2日目は大丈夫だった(若干、危なかしかったけれど)。

第3楽章終了後に合唱団とソリストが入場。

第4楽章は冒頭で重量感たっぷりのチェロおよびコントラバスが強烈な印象を与える。そして主題(歓喜の旋律)の登場で低弦は豊かに歌う。

張りのあるバリトンの声量にも魅了された。わざわざ海外から招聘しただけあって、各独唱者がお見事!また歌詞が明瞭に響く合唱の質の高さも特筆に値する。アマチュアをここまでのレベルに引き上げた、合唱指揮:本山秀毅さんの手腕が光る。

東日本大震災で被災した人々に向け、「Freude!」(歓び)と「Brüder!」(兄弟)という歌詞に万感の思いを込めた演奏。瑞々しく生き生きと、人間讃歌を歌い上げる。

トルコ行進曲の場面ではピッコロ(井上登紀)が前に出てきて、立って吹くのも面白かった。

ゲネラルパウゼ(総休止)にはたっぷり間を取る。そして終盤、独唱の四重唱が入る所ではテンポが極めて速かった。コーダは大いに盛り上がり、音楽は一気に駆け抜ける!補助席までいっぱいの聴衆が熱狂したことは言うまでもない。飛び交うブラヴォーの声、声、声。

僕は今回の演奏を聴きながら、第九は大バッハの「マタイ受難曲」に並ぶ人類最高の音楽遺産であり、ベートーヴェンはこの曲で宇宙にも匹敵する創造物を生み出したのだということをまざまざと実感した。「今年はいろんなことがあって、絶望的な気持ちになったこともあるけれど、人生って素晴らしい。人間も捨てたもんじゃない。また来年、希望を持って生きていこう」と想った。正に一年の締めくくりに相応しい、圧巻のパフォーマンスであった。

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2011年12月29日 (木)

厳選!今年印象に残った高座、十席+α

今年聴いた落語で印象に残ったものを十席選んだ。順位は付けない。日付順。

今年は東京の落語家を結構聴いた。だから談春、さん喬、喬太郎、正雀と4人入っているのが特徴的といえるだろう。

そして厳密には落語と言えないパフォーマンス-講談、クロスオーヴァー(crossover)から番外編。

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講談で江戸川乱歩!/名探偵ナンコ

12月26日(月)ワッハ上方へ。

N2

客の入りは24人。

  • 赤穂義士伝 刃傷松の廊下〜討ち入り
  • 探偵講談 魔術師 序(原作・江戸川乱歩)
  • 探偵講談 青銅の魔人(原作・江戸川乱歩)
  • 芦辺拓&旭堂南湖/対談 探偵講談あれこれ

この探偵講談の会は2001年9月24日が第一回(茶臼山舞台)。今年で丸十年だそう。

昨年の感想はこちら

魔術師」は四部に分かれており、今回は物語の発端だったので続きが聴きたいと想った。

青銅の魔人」は小林少年や怪人二十面相が登場。小学校時代に戻ったようなワクワク感があった。

対談では今まで演じられた中から印象に残ったものー「幻燈」(原作・初代快楽亭ブラック←英領オーストラリア出身)、「大蛇美人」、「怪しの物」(原作・エドモンド・ドウニイ/翻訳・黒岩涙香)、「まだらの紐」、「ルパン対ホームズ」、「唇のねじれた男」などの話題が。ホームズの「赤毛連盟」は明治時代に「禿頭組合」と呼ばれていたそう(日本人に赤毛はいないから)。また「蝿男」(原作・海野十三)という作品では探偵・帆村荘六(ほむらそうろく)と蝿男の「宝塚の死闘」があったり、最後は砂風呂で素裸で闘うとか。面白そう!

来年は小さくてもいいから講釈場を作り、将来は子供たち向けの講談にも挑みたいと語る南湖さんであった。

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2011年公開の映画ベスト27

今年、劇場公開された新作で僕のお気に入りを列挙してみよう。それぞれタイトルをクリックすれば、映画のレビューに飛ぶ。

  1. 八日目の蝉
  2. ソーシャル・ネットワーク
  3. 英国王のスピーチ
  4. ブラック・スワン
  5. ツリー・オブ・ライフ
  6. ステキな金縛り
  7. 未来を生きる君たちへ
  8. モールス
  9. 一枚のハガキ
  10. わたしを離さないで
  11. タンタンの冒険
  12. マイ・バック・ページ
  13. ツレがウツになりまして
  14. ムッソリーニを愛した女
  15. モテキ
  16. トゥルー・グリット
  17. 50/50 
  18. SUPER 8/スーパーエイト
  19. カーズ2
  20. ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
  21. ヒア・アフター
  22. ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2
  23. お家(うち)を探そう
  24. ウッドストックがやってくる!
  25. キッズ・オールライト
  26. コクリコ坂から
  27. 阪急電車

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50/50 フィフティ・フィフティ

評価:B+

5050

映画公式サイトはこちら

5年生存率が50%という脊髄の癌を宣告された27歳の青年の話。主人公を「(500)日のサマー」「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レヴィットが好演。

脚本家(ウィル・レイサー)の実体験がもとになっており、主人公の悪友(セス・ローゲン)は実際に脚本家の友人で闘病をサポートしたそう。だからリアリティがある。パーティに連れ出し「『僕が癌だ』と告白しろよ、そうすれば同情されて女とやれる」などと助言するとんでもない奴で笑える。コメディ・タッチで深刻ぶらない所がいい。

主人公を担当するセラピストが24歳で、患者を診るのが3人目というのも可笑しい。演じるアナ・ケンドリックがすごくチャーミング。

死を見つめることにより、生の輝きを実感する映画である。必見。

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2011年12月26日 (月)

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

評価:B+

Mi

映画公式サイトはこちら

シリーズ第1作「ミッション:インポッシブル」の監督はブライアン・デ・パルマ(「キャリー」「アンタッチャブル」)で、第2作がジョン・ウー(「男たちの挽歌」「レッドクリフ」)、第3作がJ・J・エイブラムス(「スター・トレック」「SUPER 8/スーパーエイト」)。毎回交代しながらも高い品質を保ってきたのだから大したものだ。

今回の監督ブラッド・バードは本来、アニメーションの仕事をしてきた人だ。

セル画アニメ「アイアン・ジャイアント」(1999)でアニー賞全10部門中9部門を受賞。ピクサー社に移り監督したCGアニメ「Mr.インクレディブル」(2004)と「レミーのおいしいレストラン」(2007)ではいずれもアカデミー賞長編アニメーション部門を受賞。また「Mr.インクレディブル」エドナ・モード役や「レミーのおいしいレストラン」イーゴの秘書役で声優としても活躍。

初の実写映画、しかも大作なのでどうなることかと危惧していたが、スピード感溢れる演出でそつなくこなした。ダイナミックなアクションの連続でスリリング。

音楽はマイケル・ジアッキーノ。「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」でバードと組み、「カールじいさんの空飛ぶ家」でアカデミー作曲賞を受賞。今回もJazzyでCoolなサウンドを提供。粋だね。

しかしチーム・プレイが建前とはいえ、トム・クルーズ演じる諜報員イーサン・ハントがあくまで主人公であり、今回は核ミサイル発射阻止という任務という点でも007ジェームズ・ボンドみたい。なんだか違いがはっきりしなかった。

殺し屋役のフランスの女優レア・セイドゥ(Léa Seydoux)が凄く良かった。美人だし、格好いい。ウディ・アレンの新作「ミッドナイト・イン・パリ」にも出演しているそうな。こちらの彼女にも期待したい。

ブラッド・バードは確かにいい仕事をした。でも次はアニメの世界に戻ってきて欲しいな。

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映画「ミッション:8ミニッツ」とタイムパラドックス

評価:C

この映画はネタバレ全開で語らざるを得ないので、未見の方はご注意を。公式サイトはこちら。原題は"Source Code"。

乗客が全員死亡したシカゴ列車爆破事件。犠牲者の〈死ぬ8分前〉に入り込み、犯人を探し出すというのが主人公に与えられたミッションである。

まずタイムパラドックス(時間の矛盾、逆説)の説明からしなければならないだろう。タイムマシンがもし存在したとして、過去に戻り自分が生まれる前の段階で親を殺したとする。とするとその人は生まれないことになる。だったら殺したのは誰?というのがタイムパラドックスである。だからタイムトラベラー(時の旅人)は過去を決して変えてはならない。これがSFの大原則である(「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「ターミネーター」はルール違反を犯している)。もし変えてしまうと、今とは別の歴史が生じる。同時進行で別の世界が動き出す。これがパラレルワールドだ。

だから本作をタイムトラベルものと解釈するとタイムパラドックスとパラレルワールドを生じまくりで、完全に物語が破綻している。でもどうやら作者の意図はそうではないらしい。死者の脳に入り、その最後の記憶=Source Codeを辿る、バーチャル・リアリティということみたいだ。

しかしそれでも矛盾がある。この条件だと死者たちが見たもの、聞いたものしか再現できないわけで、生きている犯人しか知らない爆弾の設置場所を主人公が見つけられる筈はないのである。

出来は悪くないが、詰めが甘い。

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2011年12月25日 (日)

福笑鶴笑兄弟会

12月20日繁昌亭へ。

Fuku

  • 笑福亭たま/僕は米朝一門(たま 作)
  • 笑福亭福笑/千早ふる
  • 笑福亭鶴笑/パンチ・パンチ・パンチ(紙芝居落語)
  • 笑福亭鶴笑/時★ゴジラ(パペット落語)
  • 笑福亭福笑/倉庫番(福笑 作)

たまさんはマクラで、それぞれの一門が高座で小噺をする時の特徴を紹介。米朝一門は丁寧で、笑福亭は下ネタを言いたがり、春團治一門はラウンジっぽい……。

新作「僕は米朝一門」はある落語会で米朝一門と笑福亭の若手落語家が対決することになる。”笑福亭たま”が中トリで「らくだ」を25分で演じ(いきなり大家さんを訪ねる場面から)、主人公はトリで「百年目」をすることになる。他に「ふぐ鍋」「子ほめ」「つる」「東の旅発端」(←笑福亭の人間は殆ど出来ないというくすぐりも)、「三十石」「立体西遊記」(鶴笑さんのパペット落語)、「戦え!サンダーマン」(月亭遊方 作)、「地獄八景亡者戯」など演目の名前が登場。特に「百年目」を「東京でいうところの本寸法(ほんすんぽう)、言い方を変えると工夫なし」でするという件には爆笑!毒が効いている。これこそ彼の真骨頂。

鶴笑さんによる紙芝居落語「パンチ・パンチ・パンチ」を聴くのはこれが三回目。しかし今回は古典「平林」とシンクロさせるという破天荒な高座でびっくりした。スリリングな体験だった。

時★ゴジラ」は古典「時うどん」にパペット落語「ゴジラ対モスラ」を融合させたもの。鶴笑さんの熱演に聴衆はやんややんやの大喝采。

「『おかあさんといっしょ』の時間は終わりました」と登場した福笑さんに場内は盛り上がる。「倉庫番」は福笑さんの人生哲学みないなものが垣間見られ、不思議な味わいの新作だった。

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日本テレマン協会/クリスマス・オラトリオ

12月23日(祝)、カトリック夙川教会(兵庫県西宮市)へ。

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延原武春/テレマン室内オーケストラ&合唱団

  • J.S.バッハ/クリスマス・オラトリオ(第1-3、5,6部)
  • クリスマス・キャロル
    もろびとこぞりて、神の御子は、きよしこの夜

大バッハのクリスマス・オラトリオは全6部に分かれており、本来は教会暦に沿ってクリスマスから顕現節(1月6日)にかけ、日曜・祝日に1部ずつ分けて演奏される。第4部からは新年用となっている。

Chri2

テレマン室内オーケストラは古楽器も演奏するが、今回はモダン楽器での演奏。弦は基本的にノン・ヴィブラート奏法。地元の人たちで一杯だった。

喜びに満ちた音楽、生き生きした演奏。ロウソクが灯され、クリスマスらしい雰囲気を味わった。

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2011年12月20日 (火)

柳家さん喬「芝浜」「雪の瀬川」、柳家三三×北村薫「空飛ぶ馬」~師走に江戸落語を堪能

12月16日(金)大阪市こども文化センターへ。東西の噺家二人会。

  • 笑福亭右喬/米揚げ笊(いかき)
  • 柳家さん喬/徳ちゃん
  • 笑福亭松喬/佐々木裁き
  • 笑福亭松喬/借金撃退法(掛け取り)
  • 柳家さん喬/芝浜

右喬さんはどうしようもなくテンポが悪い。

さん喬さんはマクラで、大阪の座布団は四方に房(ふさ)があるが、東京の高座ではない。座布団返しや名ビラめくりをするお茶子もいないと。また先日亡くなった立川談志さんの想い出も。異論に強く、正論に弱い人だった。噺を「変えたい」という意識が強かった。古今亭志ん朝は空気を明るく変える人だったが、談志は泥臭く、突っ張っていた。そして廓噺「徳ちゃん」へ。吉原へ繰り出す場面ではハメモノ(お囃子)も。

松喬さんも談志さんの想い出を。「二流の噺家は一流になれない」が持論だった。「オレは二流の上。(故)桂枝雀は襲名後、一旦三流になった。そこから一気に一流に登りつめた」と語っておられたそう。「佐々木裁き」は子供が生き生きしていた。「借金撃退法」は”柄の悪い大阪のおっちゃん”の描き方が秀逸。

芝浜」は冬の早朝の寒さ、潮の香りを実感し、水平線の彼方からお天道さんが昇ってくる情景が目に見えるような高座。また三年後、夫婦に子供が生まれているのには驚かされた。これは独自の工夫なのだろうか?酒に溺れる「業(ごう)」を克服し、生まれ変わった主人公の象徴として赤子の存在はまことに相応しい。

僕は枝雀さんの映像をDVDで観ていると「落語はJAZZだ!」と感じるのだが、今回のさん喬さんから「落語とは絵だ」ということに気付かされた(三代目・桂三木助も同様のことを言っていたという)。これだけの描写力、造形力を持った噺家は残念ながら関西にはいない。

12月18日(日)昼は兵庫県立芸術文化センターへ。午後2時開演。

San

柳家三三で、北村薫 著《円紫さんと私》シリーズより、

  • 空飛ぶ馬(前半)+三味線栗毛
      仲入り
  • 空飛ぶ馬(後半)
  • アフタートーク(柳家三三、戸塚成)

《円紫さんと私》シリーズは日常の謎を解く推理小説である。五代目・春桜亭円紫は落語家でありホームズ役、ワトソン役の「私」は女子大生。シリーズの「夜の蝉」で日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。そして北村薫は「鷺と雪」(ベッキーさんシリーズ)で直木賞を受賞した。僕の大好きな作家であり、三島由紀夫と並びその文章は日本語の美しさで満ちている。

三三さんはスーツ姿で舞台下手に立ち、語り始めた。「私」とその友達が喫茶店に入る場面で高座に腰掛ける。やがて「私」が寄席に行き、円紫さんが登場すると舞台は暗転。今度は着物姿に着替え、高座に上がった。出囃子は「外記猿」。

三味線栗毛」は初めて聴いたが、大半は柳家喬太郎さん演じる「錦木検校」(最近は笑福亭鶴瓶さんも手掛ける)と同じ。「錦木検校」で錦木は殿様と再会した時に死ぬが、「三味線栗毛」では死なない。ちなみに通常、三三さんがこのネタを掛けるバージョンでは錦木は殿様に面会出来ずに死に、真夏にその家臣が墓参りする場面で終わるとか。

空飛ぶ馬」は師走の渋谷を舞台に展開され「三味線栗毛」も冬。この季節に相応しい。やがて雪が降り始め、主人公最後の独白、

今夜は丁寧に髪を洗おう。
いよいよ数を増す白銀の天の使いに、私はそっと呼び掛けた。
――それまでは、雪よ、私の髪を飾れ。

がしんしんと胸に染み入った。

戸塚プロデューサーとのトークで三三さんは、「寄席に初めて行ったのが中学校一年生の時。この原作を読んだのも中学生。本の第2版を持っていた。円紫さんは僕にとって理想の落語家。それまでストーリーの展開、仕組みに落語の面白さを感じていたのだが、『空飛ぶ馬』を読んで、登場人物の気持ちや演者の言い方に醍醐味があるのだということが分かった」と語った。また「三味線栗毛」は普段やらない(苦労する割に儲からない)ネタで、噺家になって実演を初めて聴いた。だからこの噺を知ったのも「空飛ぶ馬」だったと。

戸塚プロデューサーが「原作を読んだことあるという方、挙手をお願いします」と会場に呼びかけると、何と約半数の手が挙がった(勿論僕も)。

次回は来年3月11日(大震災からちょうど1年)、「砂糖合戦~『空飛ぶ馬』より」+「強情灸」。今度は北村薫さんご本人も登場!チケットは発売中。

落語の新しい可能性に眼を開かせてもらったような想いを抱きつつ、兵庫芸文を後にして大阪府高槻市の割烹旅館「亀屋」へ。

Kame1

Kame2

柳家さん喬ひとり舞台。開演6時半。

Kame3

  • 時そば
  • 妾馬(めかうま、別題「八五郎出世」)
  • 雪の瀬川

弟子・喬太郎さんの会に比べ、男性客多し。平均年齢も高い。

「亀屋」の女将さんから「ようやくこの時が来ました」と挨拶の後、さん喬さんが高座へ。

前座噺→武家・滑稽噺→廓・人情噺 という構成。

時そば」は上方の「時うどん」が江戸に移植されたもの。「時うどん」は喜六、清八の二人組みだが「時うどん」は一人バージョン。これを聴きながら気が付いたのは、桂吉朝一門の「時うどん」は「時そば」の逆輸入だったんだ!ということ。

またマクラで、五代目・柳家小さんが寄席で「時そば」を掛けた後は近所の蕎麦屋がいっぱいになり、八代目・桂文楽が「明烏」を掛けた時は売店の甘納豆(噺に登場)が飛ぶように売れたというエピソードを披露。

雪の瀬川」はしっとりとして、艶のある語り口。雪が舞い落ちる江戸の情景が目の前にさあっと広がっていくかのよう。僕は確かに戸口から家の中に吹き込む雪の寒さを感じた。

後で聞いたところによると今回演じられたのは噺の後半部だそう。いつの日かまた亀屋で、前半・後半通しで聴きたいと希う、今日この頃でございます(最後は枝雀風に)。

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2011年12月16日 (金)

アルヴァマー序曲をオーケストラで!~丸谷明夫×下野竜也×大フィル《スペシャルライブ》

12月15日(木)、ザ・シンフォニーホールへ。

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  • バーンズ(中原達彦 編)/序曲「アルヴァマー」(管弦楽版)
  • コダーイ/ハンガリー民謡「孔雀」による変奏曲
  • 「スター・トレック」のテーマ
  • J.S.バッハ/シシリアーノ
  • バーンスタイン/「ウエストサイド物語」より”マリア”(ソリスト・アンコール
  • 真島俊夫/3つのジャポニスム(管弦楽版)
  • ヤン・ヴァン・デル=ロースト(中原 編)/カンタベリー・コラール
    (弦楽合奏版)
  • ホルスト/組曲「惑星」より”木星”
  • ホルスト/第二組曲よりマーチアンコール

下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏。監修・司会は大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部の丸谷明夫 先生(丸ちゃん)。

補助席まで出て満席。立ち見もあり。吹奏楽をやっている中・高校生が多い。

大人気のアルヴァマー序曲は僕も高校一年生の時、吹奏楽コンクール自由曲で演奏した想い出の曲。今では中学生が当たり前のように吹いている。

下野さんからの要望でオーケストラ編曲はベートーヴェン/交響曲 第1番と編成を同じに。打楽器はティンパニ1人のみ。スネアドラムやシンバル、タンバリンがない。金管はトロンボーン、チューバなしで、ホルン2人。冒頭、本来はトランペットの主題をヴァイオリンが演奏する所から不思議な感覚に捕われる。柔らかく優しい響き。スネアドラムの刻みは低弦が担当。ゆったりした中間部もヴァイオリンが主旋律を担当。まるでエルガー/エニグマ変奏曲みたいに聴こえ、近藤浩志さんが奏でるチェロのソロが胸に滲みる。その美しさに涙が出た。

コダーイの「孔雀」は吹奏楽コンクール@普門館では耳タコなのだが、考えてみればオリジナル版を聴くのは初めて。下野さんもこの曲を知らなかったという。自由曲は7-8分で収まるようにカットされているが、原曲は24分。現ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団創立50周年記念の委嘱作。コントラバスが主題を弾くというのがいい。このハンガリー民謡の歌詞は「孔雀よ飛べ 牢屋まで 捕われた無実の人々を救い出せ」という内容だそうで、なかなか過激だ。また変奏の途中、イングリッシュホルンが印象的。リズムに特徴があり、日本の祭囃子を連想させたりする。ハンガリーでは日本と同じく、姓・名の順で名前を書く。また赤ちゃんの時に蒙古斑ができるのも共通しており、意外と人種的に近い存在なのかもしれない。民族色豊かで、熱い想いが伝わる名曲だった。

スター・トレック」「シシリアーノ」のトランペット独奏(および編曲)はハワイ出身のエリック・ミヤシロ。大フィルのトロンボーン奏者・ロイド・タカモトさんは中学・高校時代にエリックさんの1年先輩だったそう。以前エリックさんの演奏を聴いた感想は下記。

エリックさんが高校生の時(1981年)に修学旅行でバンドの仲間と共に大阪に来たことがあり、淀工とジョイント・コンサートをしたそう。そのリハーサルで、丸ちゃんは何と竹刀らしきものを持って現れ、それで指揮台を叩きながら部員を叱っていたとか!「いや、あれはたまたまそこにあった箒だったんです」と丸ちゃん談。その時エリック少年は「さすがサムライの国だ」と感心したと。エリックさんは張りがあり輝く音で、特にどこまでも伸びる高音が素晴らしい。切れ味抜群の演奏。「シシリアーノ」はボサノバ風アレンジで、フリューゲルホルンに持ち替え、しっとりと聴かせた。

3つのジャポニスム」は吹奏楽が原曲だが、東京フィルハーモニー交響楽団のために作曲家自身がオーケストレーションしたもの。外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」や貴志康一「日本スケッチ」に近い雰囲気で、日本的情緒に溢れていて僕はとても好きだ。第1曲「鶴が舞う」では鶴の鳴き声や羽ばたく音も表現される。第2曲「雪の川」はソプラノ・サックスのソロあり。第3曲「祭り」はギラギラとして激しい。

弦楽合奏による「カンタベリー・コラール」は、しみじみ美しい。

木星」は遅めのテンポでヘビー級のどっしりした解釈。

アンコールは恒例となった丸ちゃんの指揮でホルストの第2組曲。歯切れよくカチッと引き締まった演奏。レストランでフル・コースを満喫したような贅沢な一夜だった。

このシリーズ、来年のプログラムは既に発表されているが、丸谷先生と下野さん、再来年はカレル・フサ「プラハのための音楽1968」保科洋「風紋」を是非取り上げて下さい(作曲家自身の手による管弦楽版あり)。どうか、よろしくお願いします!

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2011年12月13日 (火)

笑福亭鶴瓶ひとり会@動楽亭

12月11日(日)、動楽亭(大阪市)へ。

笑福亭鶴瓶さんの会。「お代は見てのお帰り」で自由料金制。定員100名に対し、メールでの申し込みは500人以上に上ったそう。福岡からわざわざ駆けつけたお客さんも。

Do

  • 鶴瓶噺
  • ALWAYS-お母ちゃんの笑顔(私落語)
  • 鶴瓶&ざこば/トーク
  • 錦木検校

最前列に6歳の子供が座っていて、「今日は何をやろうか迷っているんです。お子さんがいるから『宮戸川』とか出来へんな」と私服姿で登場した鶴瓶さん。

この動楽亭が今年、100席目だそう。鶴瓶噺では生まれ育った平野区に「ちかんはあかん」とか「ひったくりはやめよう」という標識があるのを紹介し、「『痴漢に注意』とか、『ひったくりに注意』じゃないんです。みんなが犯人扱い。そこが大阪らしい」と。

また、大阪でぶつぶつ独り言を言いながら歩いているおっちゃんをよく見かけることに触れ、”ひとりTwitter”と評す。上手い!

私落語(わたくしらくご)に入る前に、なんと舞台上で生着替え!それを手伝ったのは現在、東京で活躍する桂三四郎さん(三枝さんの弟子)。

私落語では母のモットー「ネアカ元気で、へこたれず」に触れ、それは後半の「錦木検校」にも引用された(関連リンク→ほぼ日刊イトイ新聞へ)。

ここで席亭・桂ざこばさんが予定外の乱入。二人のトークへ。

鶴瓶さんに「嫌味みたいに客入れて」と言ったざこばさん、広島県福岡市での落語会から帰りに立ち寄ったそうで「『天災』を高座に掛けて、客に”ウェー!”と受けた」と。「いま横であんたの落語聴いとったけど、そんなに受けてへんかったな」ここで場内爆笑。

ざこばさんが暴漢に襲われ、車のフロントガラスを割られる事件があった時、警察から恨みを持っている人の心当たりを訊かれ、そのときにシャッター屋と鶴瓶さんの名前を挙げたそう。このエピソードもバカ受け。

ざこばさんはこの動楽亭に今まで来たことがある人を客席に問うと、全体の2~3割程度しか手を挙げなかった。動楽亭昼席の客層と比べると平均的に若い。中には吉本の芸人さんの姿も(会場待ちで並んでいる時、NGKの楽屋話をしていた)。ちなみに鶴瓶さんは松竹芸能所属。

「それにしても、あんたがこっち(落語界)に戻って来てくれて良かった」とざこばさん。米朝一門会に落語を始めたばかりの鶴瓶さんが飛び入り参加して「子は鎹」を掛けた時、横で聴いていたざこばさんは涙を流したそう。その後、ざこばさんもこのネタを手掛けるようになったとか。

志の輔らくごに感心し、「鶴瓶、お前にも出来るんか?」と半信半疑だった和田アキ子さんの前で演じたのが「錦木検校」。アッコは号泣し、頭を下げて祝儀をきったという。鶴瓶版「錦木検校」は”心の目”、そして”心の凝りをほぐす”ことに力点を置く。役者として活躍しているだけに、登場人物たちの演じ分けが巧み。中身が濃く、確かな手応えを感じさせる高座だった。

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2011年12月10日 (土)

日本テレマン協会マンスリーコンサート~中山裕一/バロックヴァイオリンリサイタル

12月6日(火)日本テレマン協会のマンスリーコンサート@大阪倶楽部へ。

前半が20世紀アメリカの弦楽四重奏曲

  • コルンゴルト/弦楽四重奏 第2番 第1,2楽章
  • ガーシュウィン/弦楽四重奏のための「子守唄」

後半がスタンダードJAZZとクリスマス・ソング。

延原武春/テレマン・アンサンブルストンプ in KOBE(ピアノ、ベース、ドラムス)の演奏、ヴォーカルは原田紀子永海 孝。ガーシュウィンやコール・ポーターのソングス、「スターダスト」、「テネシー・ワルツ」、"Have Yourself A Merry Little Christmas"(ジュディー・ガーランド主演/映画「若草の頃」より)、"White Christmas"などが歌われた。

モラヴィア地方(現チェコ)で生まれ、「モーツァルトの再来」としてウィーンで時代の寵児となり、ユダヤ人だったためにナチス台頭とともにハリウッドに渡って映画音楽作曲家になったエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルト。そのカルテットの第1楽章は匂い立つロマンチシズムに溢れている。ヨーロッパ文化の黄昏。第2楽章はウィーンのカフェを彷彿とさせる華やいだ雰囲気がある。

ガーシュウィンは最初から最後まで弱音器(ミュート)で演奏された。ヴァイオリンのハーモニクス(倍音)奏法が印象的。これは「20世紀のセレナーデ」と呼ぶべき佳曲。いいものを聴かせて貰った。

Osaka

翌7日(水)は兵庫県立芸術文化センターで中山裕一のヴァイオリン・リサイタル。「J.M.ルクレールのルーツを探る旅」という副題が付いている。共演はチェンバロ:高田泰治、チェロ:曽田 健。全員日本テレマン協会のメンバー。

  • コレッリ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 Op5-8
  • ヴィヴァルディ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ イ長調 Op2-2
  • ソーミス/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調 Op2-10
  • ルクレール/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調 Op5-11
    (休憩)
  • ヘンデル/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ長調 HWV371
  • ルクレール/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ イ長調 Op9-4
  • J.S.バッハ/ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1019
  • ルクレール/タンブール(太鼓) アンコール

哀しみに満ちたコレッリ、技巧的で遊び心があるヴィヴァルディ。そして中山さんと同じく、ジャン=マリー・ルクレールは僕も大好きなフランスの作曲家である。ルイ15世より王室付き音楽教師に任命されるも、晩年は貧民街で隠遁生活を送り、あばら家で惨殺死体となり発見されるという人生もミステリアス。その音楽は決然とした佇まいで、凛として美しい。

コレッリに師事したソーミスの楽曲は恐らくこれが日本初演だという。

闊達なヘンデルを経て、最後は大バッハ。ヴァイオリンとチェンバロが対等な立場で主導権を交互に握り、丁々発止のやり取りが展開された。5楽章構成で第3楽章がチェンバロ独奏というのもユニーク。

中山さんのバロック・ヴァイオリンは端正で品があった。ただ、イタリアのファビオ・ビオンディやジュリアーノ・カルミニョーラみたいに、そこを突き抜けた大胆さ、奔放さが欲しい気もしたが、全般におとなしい日本人演奏家にこれを求めるのは、ないものねだりというものかも知れない。

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TOR I I 講談席 ~冬は義士!たっぷり義士特集~

古来、講釈師が高座で引用する川柳に「冬は義士 夏はお化けで 飯を喰い」というのがあるそうだ。

12月2日(金)トリイホールへ。

  • 旭堂南海/刃傷松の廊下
  • 旭堂南華/大高源五~両国橋雪の別れ~(赤穂義士銘々伝)
  • 旭堂南湖/木村岡右衛門~赤穂城明け渡し~(赤穂義士銘々伝)
  • 旭堂南海/義士外伝・鍔屋宗伴(つばやそうはん)

客の入りは35人。特に後半の演目(南湖・南海)がよかった。やはり師走は忠臣蔵の風景がよく似合う。

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2011年12月 9日 (金)

柚希礼音 主演/宝塚星組「オーシャンズ11」

宝塚大劇場へ。

映画「オーシャンズ11」(2002)は公開時に映画館で観たが、実に退屈な作品だった。唯一印象に残ったのは最後、仕事に成功したダニー・オーシャンとその仲間たちが夜ラスベガスの噴水ショーを見る場面。それが余りに美しかったので後年、ベラッジオ・ホテルへ実物を見に行く契機になった。

宝塚版の台本・演出はエース・小池修一郎さん。いやぁ、無茶苦茶面白かった!はっきり言って映画版より断然いい。

宝塚版の初日を観たスティーブン・ソダーバーグ監督は「舞台版への改変がうまくいっていた。こんな大規模な作品は今まで観たことがない。日本に来て良かった」と語ったという。

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柚希礼音はちょっと崩れた感じで、ニヒルな役(ダニー)を好演。立ち姿が格好よくて惚れ惚れする(これぞ男役の美学)。テス役の夢咲ねねはその美貌が役柄によく似合い、またすらっとした足が綺麗。踊れる二人だけに、フィナーレ(ショー)のアダルトなデュエット・ダンスにはノック・アウトされた!

ラスベガスを仕切るベネディクト(紅ゆずる)や、ダニーの昔馴染み・ラスティ―(涼紫央)もいい味出している。ハッカー、ディーラー、スリ、映像を加工しバーチャル・リアリティを構築する双子など、様々なプロフェッショナルを集めてくる場面がワクワクする。

小池演出は廻り舞台(盆)などを駆使し、舞台転換がスピーディー。また映像の使い方も絶妙。特に電車が走ってきて止まり、乗客が降りてくる場面の上手さには舌を巻いた。

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ダニー、テス、ベネディクトの関係をアダムとイヴ、そして蛇のそれに喩えた脚色も秀逸。オリジナリティがあり、新鮮。

とにかくスリリングでエキサイティングな舞台だ。必見!

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2011年12月 7日 (水)

スピルバーグ監督/映画「タンタンの冒険 ☆ユニコーン号の秘密☆」3D字幕版

評価:A

スティーヴン・スピルバーグ監督作品は劇場用映画デビュー「続・激突!カージャック」(1974)から最新作まで全部観ている。「未知との遭遇」(1977)以降は全て映画館で。だから彼の良いところ、駄目なところは知り尽くしているつもりだ。ちなみにスピルバーグのワースト作品は「オールウェイズ」と「フック」。

Tintin

映画公式サイトはこちら

スピルバーグ初の(モーションキャプチャ)CGアニメーションで、しかも初3D。

「タンタンの冒険」は秘宝をめぐる冒険活劇で、時代は1930年代だし、北アフリカに主人公が行くし、まるでインディー・ジョーンズみたいだ。そしてはっきり言ってインディー・シリーズより面白かった!

その理由を考えてみると、タンタンは少年なので(彼が恋する)ヒロインが登場しないことがかえって良かったんじゃないだろうか?スピルバーグは大人の女性を描くことが苦手な映像作家である。考えてみて下さい。あなたが印象に残った女優さんって、います?僕に言わせると、スピルバーグ映画で魅力的だったヒロインは「E.T.」のドリュー・バリモアと「宇宙戦争」のダコタ・ファニングだけ。どちらも子供である。つまり相手が異性の場合、彼は少女しか上手く演出できないのだ。

この映画の予告編を観た時は「どうして実写でやらないんだ?」と疑問に感じたが、原作がベルギーの漫画なのでその持ち味を大切にしたかったのだろう。実際、スピルバーグは当初スノーウィ(タンタンの相棒、白い犬)だけCGにして、他は実写で撮ろうと試行錯誤したようである。

しかし蓋を開けてみると全然違和感はなかった。躍動感とスピード感に溢れ、息つく暇もない。また俯瞰ショットなどスピルバーグらしい切り口、被写体の捕らえ方=映像センスが冴える。

久しぶりに巨匠ジョン・ウィリアムズの音楽を堪能できたのも嬉しかった。気持ちいいくらいオーケストラが鳴る。もう来年は80歳なんだね、ジョン。「戦火の馬」も期待しているよ!(日本公開は2012年3月)

スピルバーグが娯楽作(タンタンの冒険)と社会派の作品(戦火の馬)を同じ年に公開するという手法は1993年を想い出させる。この年に「ジュラシック・パーク」(アカデミー賞3部門受賞)と「シンドラーのリスト」(アカデミー賞7部門受賞)が公開された。これが彼のバランス感覚である。

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2011年12月 6日 (火)

桂吉朝七回忌追善落語会

11月25日(金)、国立文楽劇場へ。

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桂 吉朝が亡くなったのが2005年11月8日。その最後の高座はここ文楽劇場で、10月27日「米朝・吉朝の会」だった。吉朝が掛けたネタは「弱法師」(よろぼし)。楽屋では医師付き添いのもと酸素を吸入し、舞台袖まで車椅子で運ばれた。しかし45分以上かけて演じ切ったという。享年50歳。胃がんだった。

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  • 桂佐ん吉/商売根問 15分
  • 桂しん吉/明石飛脚 15分
  • 桂よね吉/芝居道楽(「七段目」短縮版) 20分
  • 桂   吉弥/不動坊(後半部) 20分
  • 桂あさ吉/鹿政談 20分
  • 吉朝一門/ご挨拶 5分
  • 桂  吉朝/質屋蔵 45分

挨拶は黒紋付袴で登場。米朝事務所からは「ゲストを呼んだ方がいい」とアドヴァイスされたが、残された七人の弟子のみで追善の会をすることを決意したそう。

明石飛脚」は吉朝が晩年手がけていたもの。

しばらく見ないうちによね吉さんは痩せてシュッとした。入門したての頃は桂ざこばさんから「時間を守れない前座」とお叱りを受けたそうだが、今回はきちっとコンパクトに。こういう姿もあちらの世界にいる師匠に見てもらおうとしたのだろう。「七段目」は指先まで神経が行き渡り、歌舞伎の型がピタッと決まった至芸。芝居で客(大向こう)が役者に声を掛ける時、屋号は「三木のり平さんなら”桃屋!”」というギャグには爆笑。

「よね吉師匠がこんなに早く終わるとは!」と登場した吉弥さん。彼のファッション・センスには以前から疑問を感じているのだが、今回も白い着物に桜色の羽織はいかがなものかと思った。立川談志師匠の死去について新聞が《談志が死んだ(だんしがしんだ)》と回文の見出しを付けたことに驚いたと言い、「芸人ですから何を言われるか分かったもんじゃありません。僕が死んだら《吉弥の棺おけきちきちや》と書かれるかも」と笑わせ、ネタへ。「不動坊」は前半部を大胆にカットし、銭湯のエピソードの後から。つまり講釈師の未亡人を嫁に迎えることになった”利吉”は噺の最後の最後にならないと登場しない。コミカルで愉しい一席。酒を飲む場面で口笛をヒューと吹くのも良かった。

吉朝の一番弟子・あさ吉さんは「(今日の会は)お腹が痛いいぅて欠席しようかなと思ってました」と言って「鹿政談」へ。

仲入りをはさみトリは映像で吉朝の「質屋蔵」。きちっとした芸でありながら、自在。そして端々に弟子たちが受け継いでいるものも垣間見られた。師匠から学んだ大きなことは「芸に対する真摯な態度」という彼らの言葉が印象深かった。

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2011年12月 5日 (月)

旭堂南湖/「祝島 原発反対三十年」→笑福亭たま/ナイトヘッド

11月26日(土)動楽亭へ。

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講談師・旭堂南湖さんのひとり会。客の入りは9人。

Nanko2

  • 柳田格之進
  • 祝島 原発反対三十年(南湖 作)

南湖さんは上方講談協会の席で「将来は定席の講釈場を作りたい」という夢を語ると、兄弟子たちから「ムリ!」と一言で片付けられたと。

柳田格之進」については下記をご参照あれ。

Nanko1

上のポスターはファンの人が描いて、当日持って来てくれたものだそう。

日本では「反核」とか「脱原発」など言葉が別れているが、英語では"No Nukes"で一つだというマクラから二席目のネタへ。

山口県上関町にある「祝島」は瀬戸内海に浮かぶ小さな島。名前の由来は古代以来の神職の名称の一つ、”祝部(ほうりべ)”(=航海の無事をひたすら祈った)から来ている。 近海を小型のイルカ”スナメリ(砂滑)”が泳ぎ、海の恵みで漁業を営んできた(発掘された出土品から、弥生時代から漁業を営んでいた形跡があるという)。この地のことは万葉集にも歌われている。

戦後の最盛期には5000人いたとされるが過疎化が進み、現在は500人。65歳以上が69%以上を占める。

そんな島に中国電力が原発を建設しようと計画した経緯、賛成派と反対派に島が二分されて対立してきた30年間の歴史などを、わかり易く語られた。知らないことばかりで、大変興味深く傾聴。

なおこのネタは、来年3月16日にワッハ上方でも演じられる模様。詳しくは→南湖さんのHPへ。

続いて繁昌亭レイトショーへ。

  • 笑福亭生寿/平林
  • 笑福亭たま/子は鎹
  • 笑福亭由瓶/お楽しみ券(由瓶 作)
  • 福亭たま/新作ショート落語→薄命(たま 作)

たまさん曰く「この会は好事家が集う実験場」。毎回新作が披露されるが、「これは!と言える出来の作品は1年に1作くらい」。それはこちらも承知の上で、毎回愉しませて貰っている。

子は鎹」は湿っぽさがない、カラッとした一席。生意気小僧がいい。

人から「ケチ」とか「田舎もの」と言われるのが大嫌いという先輩・由瓶さんについてたまさんは、「パワフル」「思い込みが激しい」「何となく(由瓶さんのことを)嫌だった時期があって、しばらく連絡をしていなかったんです。そうしたら携帯のメモリを消されていました」これには場内爆笑。

逆に由瓶さんは才能豊かなたまさんのことをずっと「片思い」していたそうで、「彼には一匹狼でいてほしい。僕以外の他人と口を聴かないで欲しい。新作ネタおろしの会『できちゃったらくご!』なんかやめて欲しい」と。「おたしみ券」は一本調子で、設定が不自然。特に「文七元結」を引用した、橋から飛び降りようとする男を引き止めるくだりは、夜だからこそ説得力があるのであって、昼に変えちゃぁ駄目でしょう。

たまさんの新作ショート落語は「冬のファッション」「ナベツネ」シリーズなどがあり、なかなか秀逸だった。

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2011年12月 3日 (土)

披瀝「グラズノフとプフィッツナー」 I ~児玉宏/大阪交響楽団 定期

12月1日(木)ザ・シンフォニーホールへ。

Kodama

児玉宏/大阪交響楽団で、

  • プフィッツナー/スケルツォ
  • プフィッツナー/オーケストラ伴奏つき歌曲集より
  • グラズノフ/交響曲 第4番

歌曲の独唱は本場ドイツの歌劇場で長く活躍し、日本人として初めて「宮廷歌手」の称号を授かった小森輝彦さん。歌われたのは「春の空はそれゆえこんなに青い」「怒り」「月に寄す」「ラッパ吹き」「嘆き」「夜に」。張りのある澄んだ歌声だった。

言うまでもないことだが、プフィッツナーの音楽を生演奏で聴くのはこれが初めて。グラズノフは以前、やはり児玉さんの指揮で交響曲 第5番を聴いた。

モスクワに生まれたドイツ人、プフィッツナー(1869-1949)のスケルツォは19歳の若書き。古典的で端正な響き。弦楽器と管楽器があたかも対話するように交互に演奏するシンプルな音楽。

これが歌曲になると一転、幻夢的で濃密なロマンチシズムを湛える。「怒り」では重い黒雲が立ちこめ、人間の宿命を感じさせる。「月に寄す」は半音を含まない全音音階で表現され、妖しい月夜の情景を巧みに描く。「ラッパ吹き」が氷が砕けたエルベ川に飲み込まれる場面は不協和音が強烈な印象を残す。

オペラや管弦楽伴奏付き合唱曲、歌曲などプフィッツナーの創作活動の中心はリートであった。だから同時代に生きたドイツの作曲家R.シュトラウスと対の関係にある(ナチスへの協力も含めて)。そのことが今回よく分かった。

グラズノフ(1865-1936)の第1楽章冒頭、イングリッシュ・ホルンによる哀切極まりないロシア的旋律に魅了された。のびやかで開放的な楽曲。その中にチャイコフスキーからの伝統が息づいている。また一瞬、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」ライトモティーフを彷彿とさせるフレーズも登場する(グラズノフはバイロイト音楽祭で「パルジファル」を鑑賞している)。第2楽章は軽快な農民たちの踊り。そして第3楽章は祝祭的。生の輝き、歓びに溢れ、確かな手ごたえを感じさせる演奏だった。

児玉音楽監督のプログラミングは知的冒険・発見の旅である。そこには常に驚きがある。貴方もご一緒に参加されませんか?

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