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2011年11月 4日 (金)

大植英次/大フィルのチャイコフスキー・セレクション 大団円!

ザ・シンフォニーホールへ。

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、オール・チャイコフスキー・プログラム。

  • 交響曲 第7番「人生」(未完)第1楽章 ミステリーピース
  • ロココの主題による変奏曲
  • 交響曲 第6番 「悲愴」

曲当てクイズ形式のミステリーピースには、おったまげた!チャイコフスキーの自筆楽譜が残っていることすら知らなかった。これは後にピアノ協奏曲 第3番として転用されたのだとか。小気味よく可愛らしい曲。なかなかいい。コンサート終演後答え合わせがあり、正解者はたった1名。大植さんからロシア産高級キャビアのプレゼント。

いつもの通り第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが指揮台を挟んで向かい合う対向配置。大植さんは全プログラム暗譜。

ロココの独奏は2007年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝したセルゲイ・アントノフ。チェロはのびやかに歌い、よく鳴る。明るく澄んだ音色。特に高音のハーモニクス(倍音)が美しい。ただ、全体的にあっけらかんとしており、もう少し陰影、色の変化が欲しいと想った。

悲愴」は最近の大植さんの特徴をよく現した解釈。第1楽章 第1主題と第2主題の間、展開部と再現部の間、ゲネラル・パウゼ(総休止)をたっぷり長くとる。そしてテンポを積極的(極端なまで)に動かし、デフォルメされたチャイコフスキー。面白いけれど、今回はやり過ぎ(too much)かな?と想った。流れが悪く歪になり、奏者が指揮についていけずアンサンブルに乱れが生じる場面も幾つか見受けられた。

一転して第2楽章は表情豊かで流麗。華やかな音楽が一斉に花開く。逆に中間部は暗く沈み、その対比が鮮明。ティンパニが運命の足音のように陰鬱に響き、打ちひしがれる。この楽章は作曲家の躁鬱の振幅の大きさ(ゆれ)を示しているとも解釈できるだろう。

このシンフォニーの標題について、チャイコフスキーの弟が手紙に書いた内容によると、第3楽章は「遊戯に始まり、真剣となり、名誉ある勝利に終わる作者の音楽的発展史」だそうだが、子供みたいにすばしっこくて軽快な音楽が展開された。スキップするチャイコフスキー。そこに僕はそりすべりなどをして遊ぶ作曲家の幼少時の姿が幻視された。そして初めて気が付いた。「嗚呼、この楽章をオーソン・ウエルズ監督の映画『市民ケーン』に喩えるなら、Rose bud(薔薇のつぼみ)なんだ!」と。

第4楽章は慣例としてアダージョで演奏されてきたが、近年チャイコフスキーの自筆総譜が公開され、テンポ指定が本当はアンダンテであり、作者の死後この曲を指揮したナプラヴニークがアダージョに書き替えたことが判明した。そして今回は作曲家の意図を尊重しアンダンテで演奏するとのふれこみだったのだが、実際は遅めで、僕は従来通りのアダージョに聴こえた。終盤、銅鑼が重く響き渡ると曲は一気に虚無の世界へ。コントラバスが刻むリズムは臨終の時を迎えた病人の心音。次第に、次第に心拍数は落ちていき、やがて心電図モニターはフラットに。それでもポツリ、ポツリと期外収縮が散発するが、最終的にプツンと真っ白になって終わる(ホワイトアウト)。

ファイナルアンサー。「悲愴」の多面性を表現した見事な表現だったが(特に中間の第2・3楽章は秀逸)、僕は大阪クラシックのパフォーマンスの方が今回を凌ぐ名演だったと想う。あの頃の大植さんは今みたいにストコフスキー張りにテンポを恣意的に動かしたりせず、流れがもっと自然だった。

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コメント

雅哉さん、こんばんは。拙ブログにコメントありがとうございました。

京都の方にも行かれていたのですね。おなじシーズン内の「悲愴」の演奏、どうでしょうか。京都の方が良かったですか?

でも、在任中に4回も振った曲は、悲愴と巨人のみ。大植さんにとっては、やはりレパートリー中のレパートリーなんでしょうね。

私としては、次、を期待したいです(笑)。

投稿: ぐすたふ | 2011年11月 5日 (土) 00時34分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

京都コンサートホールは、あまりに音響がひどいので閉口しました。「あの」兵庫芸文のほうがマシな位だと僕は想います。京都の人はよくあんなホールで我慢できますね。忍耐強いのかな?だから、日本で1,2を競う素晴らしい音響のザ・シンフォニーホールに於ける演奏と単純に比較は難しいです。

僕は大植さんの「悲愴」はもういいです。むしろチャイコフスキーの交響曲なら第1-3番やマンフレッドの方が聴きたいですね。あと幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミ」や「ハムレット」とか。

投稿: 雅哉 | 2011年11月 5日 (土) 08時58分

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