宮川彬良/大阪市音楽団 定期~”リロイ・アンダソン勉強会”ほか
11月4日(金)、ザ・シンフォニーホールへ。

宮川彬良/大阪市音楽団による定期演奏会(以下、親しみを込めて「アキラ」と呼ばせていただく)。
以前このコンビを聴いた感想は下記。
- 宮川彬良/大阪市音楽Dahhhhn! 定期演奏会(2009年)
今回は、
- チャイコフスキー/白鳥の湖(淀 彰 編)
- ~宮川彬良の音楽塾~ ”リロイ・アンダソン勉強会”
- トランペット吹きの休日(エドワーズ 編)
- タイプライター(ウェアール 編)
- トランペット吹きの子守唄(ラング 編)
- シンコペーテッド・クロック(アンダソン 編)
- ホーム・ストレッチ(アンダソン 編)
- 宮川 泰/組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川彬良 編)
I. 序曲 II. 宇宙戦艦ヤマト III. 出撃 IV. 大いなる愛 - 宮川彬良/バレエ音楽「欲望という名の電車」から
吹奏楽版世界初演 - コープランド/バレエ組曲「ロデオ」から
ホー・ダウン(ロジャース 編)
これは吹奏楽コンクールの記事で何度も書いていることだが、基本的にチャイコフスキーの音楽は吹奏楽に向いていないと想う。弦(げん)がないとその魅力が半減(はんげん)するんだよね(←韻を踏んでいます)。だから「白鳥の湖」は違和感ありまくり。ムリ!
プログラムを検討中に、ふとアンダソンが話題となり、アキラの「アンダソンをナメちゃいけないよ!!」との一言から決まったという、すこぶる愉快な勉強会。
驚いたのは「トランペット吹きの休日」や「子守唄」は管弦楽譜と同年に吹奏楽譜が出版されているという事実。アンダソン自身による編曲もあるし、さすがアメリカは吹奏楽のメッカなんだなと感心した。
「トランペット吹きの休日」の原題はBugler's Holiday。Buglerとは軍隊のラッパ手のことで、アキラの解説によるとこの楽器にはピストンがないそう。タイトルは、「普段の演奏は休符が多く楽な仕事だが、むしろ休日の方が忙しいという意味ではないか、というのが私の解釈です」「ネーミングは重要です」と。軽やかで、そのテンポは今まで体験したことがないくらいの快速球。爽やかな風が吹き抜けるような演奏。
「タイプライター」は途中、間を空けたりして黙読しながら打っているリアリズムがあるとアキラ談。演奏では実際にアキラがタイプライターを担当し、後でどんな内容を打ったか伴奏付きで読み上げるオマケ付き。
「トランペットの子守歌」は田舎に帰りくつろいでいるイメージで、中間部は都会の喧騒を想い出している情景ではないかと。
「シンコペーテッド・クロック」はアンダソンの作品のなかで一番売れたものだそう(CBSテレビ深夜番組のテーマ音楽として長い間使われた)。時計・時間のファンタジー。アキラは間奏の華やかな「タンタター」という箇所でいつも涙が出そうになると。演奏はリズムに生き生きとしており、都会的で洗練されていた。粋だね!
「ホーム・ストレッチ」とは競馬場におけるゴール直前の直線部分のこと。馬の鋭い嘶きが途中聴こえたりして「切れ」があった。
アキラの親父が作曲した「宇宙戦艦ヤマト」の序奏はアルト・サックスのソロが美しい。そして有名なテーマはただひたすらに格好よく、金管の響きが輝かしい。出撃はド迫力!
「欲望という名の電車」はアキラの天才性、ひらめきに眩暈を感じた。すごい!エレキギターやドラムセットも登場。
- 鏡~回想はピアノ単音の連打で開始される。サックスが加わりJazzyな夜の音楽に。
- 街は都会の喧騒。車のクラクションや市電の警笛が鳴る。変拍子からワルツへ。
- 孤独はアルト・サックスのソロ。そしてピアノとの対話。甘美で、そして哀しい歌。
- 博奕はボンゴが登場し、むしむしした熱帯夜を表現。ハード・ジャズ。
- 少年はイノセントで清浄な響き。「牧神の午後への前奏曲」や「ダフニスとクロエ」を連想させる。
- 愛欲は荒々しいリズムで原始的。
- 迷宮はバリトン・サックスが最初のテーマを奏で、ピアノ・ソロが哀感を漂わせる。寂しい女、ブランチの肖像。そしてアキラがアコーディオンを持ち替え、ヒロインの狂気を描く。
- 幻は優しい、許しの音楽。ブランチの魂は浄化され、天に召される。
カウボーイが登場するコープランドの「ロデオ」は賑やか。暴れ馬をアキラは見事な手綱さばきでコントロールする。心が躍る。なお、解説によるとこのバレエの初演を振り付けしたのはアグネス・デ・ミルだそう。この人はミュージカル「オクラホマ!」「回転木馬」「ブリガドーン」の振り付けでも有名。
アンコールはいずれも宮川彬良 編曲で、
- R.ロジャース/ミュージカル「王様と私」より
シャル・ウィ・ダンス? - The Five Saxes Concerto(見上げてごらん夜の星を)
洗練されたアレンジ。シャル・ウィ・ダンス?はサンバあり、スウィング・ジャズあり、そして行進曲あり。めちゃくちゃ愉しい!
「見上げてごらん夜の星を」ではソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの5本のサキソフォンが使用された。
エンターティナー・アキラの魅力を余す所なく堪能した夜だった。いずれこのライヴCDが発売される予定なので、ゆめゆめお聴き逃しなく!
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コメント
本当に素敵な演奏会でしたね!
欲望という名の電車に目眩を覚えたと書かれていますが、本当に同感です。僕は込み上げてくる気持ちで動悸が止まりませんでした笑 あんなにも感情と景色、そして音楽の面白さや怖さを表現している曲はなかなかありませんよね。宮川さんを侮っていました、、。
それにしても、チャイコの弦無しはほんとにいただけません。編成がちょっと似てるからってなんでもかんでもやるもんじゃないですね。
投稿: 関西人35号 | 2011年11月11日 (金) 15時06分
コメントありがとうございます。「欲望という名の電車」は吹奏楽の歴史に名を残す傑作でした。
全日本吹奏楽コンクールの自由曲でチャイコフスキーを取り上げた団体はことごとく失敗しています。あの屋比久/福工大付城東や、石津谷/習志野でさえもチャイコフスキーでは銀賞でした。響きに違和感があるので、いくら上手でも審査員にアピール出来ないのでしょう。
投稿: 雅哉 | 2011年11月11日 (金) 23時24分