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2011年11月

延原武春/大フィルの「時計」&ベートーヴェン交響曲第7番

11月24日(木)いずみホール特別演奏会「ウィーン古典派シリーズVI」へ。

延原武春/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • ハイドン/交響曲 第101番「時計」
  • モーツァルト/ファゴット協奏曲
  • ベートーヴェン/交響曲 第7番

弦は対向配置、ノン・ヴィブラート奏法によるピリオド・アプローチ。

ハイドンは溌剌として躍動感があり、クラシカル(バロック)・ティンパニが強烈。瑞々しいサウンド。延原さんは「僕は第2楽章の音型は『時計』ではないと思う。むしろ、人間の鼓動のように感じています」と語っている。生き生きした表現。第3楽章メヌエットは舞曲らしい優雅さがあり、第4楽章は軽快。途中、弦の各パート一人ずつで演奏する場面があり、新鮮で面白かった。このシンフォニーから僕は「風」を感じた。

モーツァルトのソロは大フィル首席の宇賀神広宣さん。華麗なテクニック、豊かな音色。雄弁な演奏だった。

さて、スコアに書かれたメトロノーム記号(速度指示)に則したベートーヴェンの7番。省略されることが多い第1、3、4楽章の繰り返しは敢行された。第1楽章は力強く動的。序奏から生命力に溢れ、主部はパンチが効いて弾むよう。第2楽章「不滅のアレグレット」でも確固としたリズムが感じられた。押しては引く波のイメージ。弦が小気味いい。第3楽章は溌剌・颯爽としている。そして熱狂の第4楽章!強弱の変化、アクセントが独特で疾走感に溢れる。緊張の糸は最後まで切れることなく駆け抜けた。

延原さんによるの解釈によると「フランス組曲」である交響曲第8番に対してこの7番は「イギリス組曲」だそう。第1楽章 ジーグ、第2楽章 マーチ、第3楽章 スケルツォ、そして第4楽章はコントラダンスに相当するとのこと。

このシリーズのアンコールは毎回、バッハ/管弦楽組曲 第3番からアリアである。しかし最初はゆったりしたテンポでヴィブラートをたっぷりかけた表現だったが、回を追うごとに次第に古楽的語法に変わってきている。現在のテンポは速くヴィブラートは少なめ。歯切れいい演奏だった。

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第三回 柳家喬太郎独演会@トリイホール

11月23日(祝)大阪・千日前にあるトリイホールへ。

Kyo

東京で実力・人気ともにNo.1 柳家喬太郎さんの独演会。

プログラム・ノートに喬太郎さんが好きな落語のフレーズ(語句)が掲載されていた。

  • 今日はいい休みだったなあ
    (「猫の災難」五代目柳家小さん)
  • みんなこうやって偉くなっていくんだねえ
    (「按摩の炬燵」柳家さん喬)
  • ウンコがお前に何をしてくれたというんだい
    (「肥辰一代記」三遊亭円丈)

喬太郎さんらしい(とぼけた)選択。

さて、今回の演目は、

  • 桂 佐ん吉/商売根問
  • 柳家喬太郎/まんじゅうこわい
  • 桃月庵白酒/松曳き
  • 柳家喬太郎/文七元結

佐ん吉さんは2001年に入門。同期で東京の噺家・春風亭一之輔さんが2012年春に真打に昇進する話題を振り、即ち寄席でトリを勤めることが出来ると。一方、自分は未だに繁昌亭で前座扱いで「あちら真打、こちら頭打ち」

喬太郎さんは大阪に来るようになった当初は上方由来ではなく、江戸固有の噺を高座にかけるよう心がけてきたが、「もうネタがないんです」と。そして大好物のコロッケそばのカップ麺(→こちら)が出たと聞き、コンビニを行脚して捜し求めたエピソードや、東京駅の東海道新幹線18番・19番線ホームの立ち食いそば「グル麺 東京」カツ煮そばの話題を。どんなものか写真はこちら。「不味いけれど癖になる」その状態はさしずめ「前向きのサディズム」と。ネタ「まんじゅうこわい」は上方版との違いが興味深かった。

初めて聴いた白酒さんはテンポよく、飄々としてコミカルな高座。粗忽な登場人物たちが、そこはかとなく可笑しい。

仲入りを挟み、再び喬太郎さん。あるテレビ番組で秋葉原に観光に来た外国人に日本の文化の特徴を尋ねると、「わび(侘)、さび(寂)、もえ(萌)」と答えたという話に場内爆笑。「文七元結」は力を抜き、淡々とした口調。そこには怖いくらいの凄みがあった。喬太郎さんはこの噺で「江戸っ子」であるということにに力点を置く。それは「粋だね!」「気風がいいね!」と同義。面白いアプローチだなと、感心することしきりであった。

なお、この昼の部公演中に立川談志さんの訃報が報じられたが、我々には知る由もなかった。夜の部では勿論、喬太郎さんがその事に触れられたそうである。

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最後の利久寄席/桂雀々、東京へ!

11月19日(土)大阪府堺市の商店街にある、うどんちり 利久へ。

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利久寄席は平成元年7月に始まり、23年間続いた。第179回、最終回である。お店自体をこの11月末でたたむそうだ。名残惜しい。

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この寄席の最初の世話人が桂 喜丸さん(1956-2004)。その死後、同期のむ雀さんが引き継ぐが2005年に脳出血で倒れた(現在はリハビリに励みながら、鳴り物の太鼓を叩いている)。そして米平さんにバトンタッチされ今日に至る(松竹新喜劇に出演中のため最終回には参加出来ず)。

木戸銭は牡蠣蕎麦付きで二千円ポッキリ。お値打ちである。

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  • 桂優々/牛ほめ
  • 桂紅雀/向う付け
  • 桂雀々/八五郎坊主

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当初の予定では雀々一門会になる筈だったが、二番弟子・鈴々さんが辞めたので紅雀さんが代演。

一番弟子の優々さんはスピーディな高座。

紅雀さんは「落語は1,500人も入るような大ホールには合いません。《ちょっとした親戚の法事》みたいなこんな場所が相応しいんです」と開口一番。場内爆笑。続いて喜丸さんの想い出を語った。マクラで何言っているか分からなかったこと、枝雀寄席の鳴り物担当の時に、拍子木の代わりに間違えて丸めたバスタオルを持ってきたこと(←意味不明!)など。また、最近仕事で行った熊本の市場を覗くと、マンゴーが1個8千円で売っていたそう。そしてデコポンが1,800円。しかし3人の演者がいた落語会は入場料がたった1,500円だったと!「向う付け」は爆発的な男が登場するハイテンションな一席。

雀々さんは昭和34年6月1日に16歳で桂枝雀に入門し、今年で34年。この11月末に米朝事務所を辞め、自宅を売却し、心機一転東京に引っ越されるそう。マクラで利久寄席の第100回目には米朝師匠が来られたこと、179回で千秋楽というのは何という切の悪さ、中途半端かと言い、客の笑いを誘った。でもそんなことろがこの会らしいと店主を労(ねぎら)った。また師匠との稽古の想い出で、一対一で向き合い枝雀さんが自分のためだけに「ボウフラが水害に遭ぉたよぉな恰好」や「伊勢海老が税金を納めに行く恰好」「鋳掛屋(いかけや)が軍艦の注文を受けた時の表情」などを演ってくれたとき、どれくらい笑い転げたかということを愉しそうに語られた。

いろいろな意味で寂しい気持ちになる落語会だったが、雀々さん、東京での益々のご活躍を期待しています!多分、来年に自伝「必死のパッチ」が映画化されるんですよね?

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第24回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)2011 後編

この記事は第24回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)2011 前編と併せてお読み下さい。

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まずこのコンテストの審査に関する問題提起を行っておこう。それは審査員全員が楽器のプロ、音楽家であるという点だ。つまりマーチングのプロがいない。だからあくまで「音」重視であり、行進のフォーメーションのなどは余り考慮されてない印象を受ける。

東京農業大学第二高等学校吹奏楽部(西関東代表)のパフォーマンスはカラーガード隊が16人もいて、まるで蝶の舞いのように美しかった!しかしそれは全く審査に反映されないので、銀賞という 残念な結果に終わった。ちなみにここが演奏したのはマーチング・ブラームスという曲で、なんと交響曲第1番の第1,2,4楽章が使用されていた。この発想が新しく、面白かった。

さて、関西以外の金賞団体の感想を書いていこう。

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東関東代表

船橋市立船橋高等学校 曲はローマの祭~教会のステンドグラス~シバの女王ベルキス~鳥~リュートのための古風な舞曲とアリア(以上レスピーギ)。アリアでは歌あり。きびきびとして動きが速く、全体のフォーメーションが整っていた。

柏市立柏高等学校 サーカス・ビー~セント・アンソニー・ヴァリエーション(ヒル)。ピカピカに磨き上げられたシンバルが強い印象を与え、それが万華鏡のような模様を描く。ドラムメジャー(鼓手長)のメジャーバトンはどこよりも高く、高く上がっていく。演奏は繊細緻密で、pp(最弱音)からff(最強音)までのダイナミックスの幅が広い。ものすごい音圧!!

東海代表

愛知工業大学名電高等学校 天と大地からの恵み(八木澤教司)~星の王子様(樽屋雅徳)~アメリカングラフティXX(M . ジャクソン)~今夜はビートイット(M . ジャクソン/久石 譲)。久石さんの吹奏楽アレンジには驚いた!考えてみれば”久石 譲”というペンネームの由来はクインシー・ジョーンズ(「今夜はビートイット」プロデューサー)のもじりだから、縁があるわけだ。パープルのユニホームが映える。アンサンブルは整い、ビートが効く。隊列も綺麗。「スリラー」のステップが面白い。

安城学園高等学校 セレモニアル・マーチ(坂井貴祐)~アメリカの騎士「選ばれし者」(メリロ)。軟らかいサウンド。アルト・サックスのソロが見事!隊列の変化がユニークで、動きが滑らか。整然としている。

北陸代表

富山県立高岡商業高等学校 バレエ組曲「ガイーヌ」より(ハチャトゥリアン/林 紀人)。よく鳴るが荒いと想った。それから後打ちのリズム(ホルンなど)が揃っていないのが気になった。

九州代表

精華女子高等学校 曲は希望の帆をあげて(福島弘和)。まず人文字で"SEA"を描き、それが錨の模様に変化し回転。ハート型があつて最後は"SEIKA"で〆。腹にズシンと来るサウンド。輝く金管。特に11人のホルン軍団がパワフル。また例年、ここと大阪桐蔭のドラムメジャーは圧巻のパフォーマンスを展開する。目にも止まらぬ速いバトンさばき、華麗な演技。僕の近くに座っていた男性が「感動して、涙が出てくるわ」と喋っていたが、正に同感だった。

玉名女子高等学校 セントルイス・ブルース・マーチ~バンドワゴン(P.スパーク)~ムーンライト・セレナーデ~スウィング・スウィング・スウィングという構成(昨年と同じ)。ここはガンガン鳴らし、気持ちがいい。スピードとスウィング感も抜群。

あと、銀賞でどうしても触れておきたい団体をいくつか。

東関東代表

習志野市立習志野高等学校 プロポーズ大作戦〜ガッチャマンの歌〜宇宙戦艦ヤマト〜あしたのジョー〜タイガーマスク。とにかく人数が多い!ドラムメジャーは最初、ピエロの格好で登場。一糸乱れぬアンサンブル、勢いのよさ。人文字で”ヤマト”を描く場面あり。「立て!立つんだ、ジョー!」の台詞が飛び出し、リングでの格闘も展開された。エンターテイメントとして秀逸で、見ていてすごく愉しかった!ここは金賞こそ相応しかったんじゃないかな?またクラリネットの生徒が車椅子で(もうひとりに押されて)行進していたのが印象に残った。

中国代表

岡山県立岡山東商業高等学校 20世紀フォックス・ファンファーレ(A.ニューマン)〜喜歌劇「小鳥売り」セレクション(ツェラー/鈴木英史)。男子生徒が少なく1割未満?動きが速く、アンサンブルも整っていた。爽やかなパフォーマンスだった。

表彰式の前に箕面自由学園高等学校チアリーダー部"GOLDEN BEARS"のエキシビションプレーもあった。ここはJAPAN CUP 2011 日本チアリーディング選手権大会において優勝。日本一のチームである。9月に被災地である岩手県立大船渡高校にバスで14時間かけて行き、演技を行ったそう。Cheer up,Japan ! 彼女たちから元気と明るさをもらった。

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全体を通して今年最も優れた演技・演奏を披露してくれたのは柏市立柏高等学校(市柏)と精華女子高等学校であった。

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寺神戸亮&大内山薫/バロック・ヴァイオリン・デュオ

11月18日(金)、大阪府豊中市にあるノワ・アコルデ音楽アートサロンへ。

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寺神戸亮(てらかどりょう)さんは言わずと知れたバロック・ヴァイオリンの世界的名手。以前聴いた感想は下記。

大内山薫(おおうちかおる)さんはオランダのデン・ハーグ王立音楽院に2年間留学し、そこで寺神戸さんに師事した。

その師弟によるデュオ・リサイタルである。

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  • ヴィヴァルディ/二つのヴァイオリンのためのソナタ RV48
  • ラモー(ラベ・ル・フィス編)/オペラの抜粋による組曲
  • ルクレール/二つのヴァイオリンのための通奏低音を伴わないソナタ 第5番
  • モーツァルト/二つのヴァイオリンのための組曲
    オペラ「魔笛」より
    (1792年の編曲版に基づく)

ガット弦を張ったバロック・ヴァイオリンは滑らかな音色のモダン楽器(スチール弦)と異なり、雑味があり倍音が豊か。朴訥で木目の肌触り。

村上春樹の小説「ノルウェイの森」で”直子”はビートルズの音楽について次のように語る。

この曲を聴くと深い森の中で迷っているような気分になるの。どうしてだかわからないけど。

寺神戸さんの演奏を聴いていると、これと同じような感覚になる。

ヴィヴァルディはまさに、二つの楽器の対話であった。

ラベ・ル・フィスは1759年にヴァイオリンの教則本を書き、そこに収録されているのがラモーのオペラ「ピグマリオン」「プラテー(カエルの女王)」「イポリートとアリシー」「優雅なインドの国々」からの抜粋。ヴァイオリンは野太い音で雄弁。

ルクレールの音楽は劇的で美しい。深い感銘を受けた。

ここでバロック弓から、より現代に近い弓へ持ち替えられた。

モーツァルトの「魔笛」は作曲家の死後、家庭で愉しむ目的で他者によって編曲され、出版されたもの。しかし、序曲・導入部・パ、パ、パ(二重唱)の楽譜は存在しなかったので、寺神戸さんが凝った編曲をされた。ふたりの演奏は丁々発止のやり取りで、息が合ったところを聴かせてくれた。

アンコールはJ.S.バッハ/2声のインベンション、3声のシンフォニアより第8番だった。

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大阪国独立の夢

僕が岡山から大阪に引越しして6年目になる。ここに棲むようになって強く感じるのは関西人の誇り高さだ。

明石家さんま、笑福亭鶴瓶、ダウンタウンら東京に進出した関西の芸能人は決してテレビで標準語を喋らず、関西弁にこだわる。そこには「関西弁は最高!これこそスタンダード」という強い想いがあるのではないだろうか。一方、例えば福岡県出身のタモリがTVで博多弁を喋りますか?

江戸(東京)落語に対してこちらは上方落語という。関西落語でもなければ大阪落語でもない。大阪が上(かみ)、東京は下という思想・主張がそこにはある。

テレビが普及する以前は東京で上方落語を好んで聴く人は少なかったという。関西弁が理解出来なかったからだ。しかし現在では様相が一転した。関西出身の芸人たちの不断の努力で関西弁が全国的に市民権を得て、誰もが上方落語を楽しめる時代が到来した。作戦勝ちである。

上方落語協会会長・桂三枝さん(大阪府堺市出身)の創作落語に「大阪レジスタンス」がある。大阪国が日本から独立するという噺だ。

そしてそのアイディアを踏襲したのが映画化もされた万城目学(大阪府出身)の小説「プリンセス・トヨトミ」(直木賞候補)である。

三枝さんはこの作品についてブログで言及している→席亭 桂三枝の「大阪レジスタンス」

「大阪レジスタンス」や「プリンセス・トヨトミ」に通底するのは大坂夏の陣(←大坂は大阪の古称)で豊臣家を滅ぼされ、都(首都)を江戸(東京)に奪われた大阪人の積年の恨み、忸怩たる想いである。「何とか東京から主権を奪い返したい!」"Osaka as Number One"という気持ちが大阪人にはずっとあったのだろう。

その「大阪国独立」という甘美な夢に寄り添うのが大阪維新の会が掲げる大阪都構想なのかも知れない。大阪が都になり、東京と互角に張り合う。

だからこそ世論調査で大阪人の過半数が大阪都構想を支持するのだろう。大阪がリーダーとなり、日本を変える日を待ち望みながら……。

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第24回全日本マーチングコンテスト(高校以上の部)2011 前編

大阪城ホールへ。

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第24回全日本マーチングコンテスト。高校以上の部となっているが、高校以外で全国大会に進出したのは出場25団体のうち東京都代表の創価シャイニングスピリッツ(銅賞)だけだった。なお創価学会は男子部と女子部でそれぞれ別々に活動しているようで、創価学会関西吹奏楽団(座奏)は男性のみ、創価シャイニングスピリッツ(マーチング)は女性のみで構成されている。

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今年金賞を受賞したのは以下の団体。

東関東代表 船橋市立船橋高等学校(千葉)、柏市立柏高等学校(千葉)

北陸代表 富山県立高岡商業高等学校

東海代表 愛知工業大学名電高等学校安城学園高等学校(愛知)

関西代表 大阪府立淀川工科高等学校箕面自由学園高等学校(大阪)

九州代表 精華女子高等学校(福岡)、玉名女子高等学校(熊本)

北海道代表(2)は、東北(2)はのみ、四国(2)ものみ。ここらあたりが弱いのは例年通り。関東では東京(1)がで西関東(2)はだから東関東強し。

まずは地元・関西代表校から感想を書いていこう。

淀川工科高等学校 演奏されたのは、リンカンシャーの花束(グレンジャー)~ハイデックスブルク万歳!(ヘルツァー)~カーペンターズ・フォーエバー(真島俊夫 編)~六甲おろし(古関裕而)。淀工は毎年曲目と演技内容が同じなので、特記すべきことはない。弱音の美しさ、そしてきびきびしたリズム感。今年は例年と比べ、トランペットが荒れていたのが気になった。

箕面自由学園高等学校 曲目は輝ける時(真島俊夫)~シン・レッド・ライン(アルフォード)~シャンソンメドレー「モンマルトルの小径」より(真島俊夫 編)。ごめんなさい。正直言ってどうしてここが金賞なのか僕には理解出来なかった。演奏から「歯切れ」とか「元気」が感じられず、シャンソンにもフランスらしい優雅さが欠けているように想った。「セ・シ・ボン」なんかはむしろサンバ風?

京都橘高等学校 その胸に抱け青春の志(内藤淳一)~ザ・バンドワゴン(スパーク)~シング・シング・シング(プリマ)~チュニジアの泉(ガレスピー)~スウィング・スウィング・スウィング(J.ウィリアムズ)。元気な掛け声と共に登場。オレンジ色のユニフォーム、ミニスカートが可愛い。カラーガードが7人。今年は入部人数が少なかったようだが、それを感じさせないダイナミックな演技。演奏はスピード感に溢れ、軽やかで弾けている。「シング・シング・シング」をクラリネットのクインテット(五重奏)で聴かせたのも良かった。惜しくも銀賞だったが、ここには是非金賞をあげたかった!観ていてすごく楽しかったし、感動をありがとう。

なお、昨年金賞を受賞した大阪桐蔭高等学校は今年、大会規定により3出休みだった。

関西以外の団体の感想は後編で語る予定。

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吉坊ノ会(11/17)

山本能楽堂へ。

Kichi

客の男女比は大体1対3くらい。通常、落語会はその過半数を男性客が占めるので、こういう現象は面白い。

  • 誰やねん?/色事根問
  • 桂佐ん吉/池田の猪買い
  • 桂 吉坊/まんじゅうこわい
  • 桂 雀松/星野屋
  • 桂 吉坊/浮かれの屑より

番組の予定では佐ん吉さんからになっていたが、見知らぬ若者が登場し「色事根問」を一席。気風と間がいい。しかし名乗らず退場。名ビラ(演者の名を記したもの)もないので狐につままれたような状態。

次に佐ん吉さん。「いや~前代未聞ですねぇ」「さぁ、《吉坊舞踊の会》開演です!」と。そのままネタに入ろうとするので、客席から「誰やねん!?」と突っ込みが。ここでようやく前座が笑福亭呂鶴さんの弟子、呂好さんだと明かされた。

吉坊さんは師匠・吉朝の七回忌でDVD-BOXが発売されたが、卸値を八掛けで購入した米朝事務所よりもAmazonの方が安かったと(僕も買いました)。そして法事のエピソードを披露。あさ吉兄さんがポトフの仕込みで朝の集合時刻に遅れてきたこと、結局そのポトフを師匠に供えるのを忘れて、弟子たちで食べ尽くしたこと。落語作家・小佐田定雄さんが赤い靴下を履いてきたことなど。「まんじゅうこわい」は数多い登場人物の演じ分けが巧み。また途中挿入される怪談噺「じたじた」の真に迫った描写に、客席は水を打ったように静まり返った。

雀松さんは吉坊さんについて「あの笑顔と風貌に騙される」「もしかしたら、したたかで、むちゃくちゃ悪いやつかも知れません」と評し、場内爆笑に。「星野屋」は軽やかに飄々と演じ、特に若い女性(手掛)が上手い。

浮かれの屑より」は踊りや歌舞伎(吉兆回し、義経千本桜~狐忠信、娘道成寺)など高度な芸が要求されるネタ。上方でやり手は少なく、師匠の吉朝も数回しか演じたことがないという。鳴り物を弟弟子の吉の丞さんに頼んだところ、噺の説明からしなければいけない羽目に。はめもの(お囃子)がふんだんに入り、賑やか。座布団を一周する場面も。吉坊さんは所作が美しく、これが初演ながら見事にこなされた。

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AKB48、あるいは「劇場型アイドル」

僕が初めてAKB48に興味を持ったのは中島哲也 監督の傑作「告白」(2010)である。

この中で、中学校の少年がAKBのファンで、自宅のテレビで"RIVER"を観ている場面があった。

そして中島監督は"Beginner"のMV(ミュージック・ビデオ)を撮り、その「残酷描写」が話題騒然となってTV放送中止(別のメイキング映像に切り替え)となる。このオリジナル・バージョンは後に「AKBがいっぱい ~ザ・ベスト・ミュージックビデオ~」(DVD & Blu-ray)に収録された。クールで研ぎ澄まされた恐るべき完成度。「書を捨てよ町へ出よう」と言ったのは寺山修司だが、"Beginner"では「(ゲームの)コントローラーを捨てよ町へ出よう」というメッセージが発せられる。「お前ら、ゲームの中で沢山のい血を見ているけれど、実際にい血を流したことはあるのか!?引きこもってバーチャルに生きるんじゃなく、現実を知れ!!」と挑発する中島監督の声が聴こえてくるようだ。

AKBのMVを観ると、錚々たる面々が演出をしていることに驚かされる。チームドラゴン名義の「心の羽根」を担当したのはマイケル・アリアス。ジェームズ・キャメロン監督「アビス」やポール・バーホーベンの「トータル・リコール」にカメラアシスタントとして参加し、アニメーション映画「鉄コン筋クリート」や実写映画「ヘブンズ・ドア」を監督した人。また「桜の栞」は岩井俊二(映画「Love Letter」「打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?」)、「桜の木になろう」が是枝裕和(映画「誰も知らない」「空気人形」)、「Everyday、カチューシャ」が本広克行(映画「踊る大走査線」「サマータイムマシン・ブルース」)、ワイヤーアクションに挑戦した「フライングゲット」が堤 幸彦(映画「トリック」「明日の記憶」「20世紀少年」)といった具合。

また写真家で映画「さくらん」の監督としても知られる蜷川実花が撮ったMV「ヘビーローテーション」は色彩豊かで可愛らしく、お洒落な仕上がりだった。

涙サブライズ!」と「RIVER」冒頭にはオフ・ブロードウェイでロングラン中のショー「STOMP」を彷彿とさせる場面がある(手拍子や身近なものを用いてリズムを奏でる)。さらに「涙サプライズ!」(監督:高橋栄樹)には群舞を俯瞰ショットで撮る場面が登場。多数の女性ダンサーを幾何的に配置し、万華鏡のような映像を創る演出は映画「四十二番街」(アカデミー作品賞受賞)などで知られるバズビー・バークレーが得意とした手法(バークレー・ショット)。つまりAKBのMVは現代のミュージカル映画と言えるだろう。

あと驚嘆したのはアンダーガールズ名義の「抱きしめちゃいけない」(監督:中村太洸)。なんと全編6分に及びワンカットで撮っているのだ(つまりカット割り、編集がない)。アイドルのMVでこんな実験的手法が用いられているとは!出演しているメンバーはカメラからフレームアウトする(画面の外に出る)と衣装の早替わりをし、5着くらい着替える。世界的に早くからこの長回し(ワンシーン・ワンカット)に挑戦したのがアルフレッド・ヒッチコック監督である。「ロープ」(1948)では映画丸々一本をワンカットで撮るという離れ業に挑み、イングリッド・バーグマン主演「山羊座のもとに」(1949)でも5分に及ぶ長回しがある。オーソン・ウェルズ監督「黒い罠」(1958)冒頭の長いシーンも有名。その歴史の延長上に彼女たちは立っている。

彼女たちのことを知るにつけ、宝塚歌劇とそのシステムが似ていることが次第に分かってきた。宝塚には花・雪・月・星・宙の5つの組がある。一方、AKBはチームA・K・B・4と分かれている(いずれチーム8も出来るだろう)。ホームグラウンドはドンキホーテ秋葉原店8階にあるAKB48劇場。そこで毎日公演が行われている。つまり劇場型アイドルという新しい形なのである。その中で「センターに立つ」という意味は宝塚におけるトップ・スターと同義と言えるだろう。また病気やメディアの仕事で公演に欠員が出た場合はアンダー(understudy、代役)が立つというのも舞台ミュージカルに近い仕組みだ。研究生は宝塚音楽学校の生徒(予科・本科)みたいな立場である。実際、宝塚入学を断念してAKBに入ったメンバーや、将来の夢はブロードウェイの舞台に立つことだと宣言しているメンバーもいる。僕は人海戦術を駆使した宝塚歌劇の群舞が大好きだが、それに似た魅力をAKBにも感じる。ダンスの振付も相当ハードで高度な技量が要求され、20年前のアイドルのそれとは雲泥の差である。日々レッスンを積み重ね、彼女たちは確実に進化している。

今や国民的アイドルと言われ、人気絶頂のAKBだが、岩井俊二が製作総指揮を担当した「DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?」を観ると、メンバーは意外と客観的、クールに自分たちの置かれた状況を見つめていることが分る。握手会や劇場でのファンとの直接の交流、そして総選挙などを通じ彼女たちは自分のポジション(立ち位置)やファンが何を求めているのかをしっかり把握している。「人気はいつか必ず落ちる」だろう。しかし、そうなっても彼女たちには戻る場所=劇場がある。そこが原点、ホームなのだから。

最後に僕が好きなAKBのMVと楽曲を挙げておく(順不同)。

MVベスト5

  • Beginner (ORIGINAL VER.)
  • 抱きしめちゃいけない(アンダーガールズ)
  • ヘビーローテーション
  • 野菜シスターズ
  • フライングゲット

楽曲ベスト5

  • 夕陽を見ているか?
  • 初日(チーム B)
  • 言い訳Maybe
  • RIVER
  • 10年桜

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ハラがコレなんで

評価:C-

Hara

映画公式サイトはこちら

川の底からこんにちは」が大傑作だったので、その石井裕也 脚本・監督の新作には大いに期待していたのだが、なんだか裏切られた気持ち。

ヒロイン(仲里依紗)は「粋だね」が口癖。でも映画は粋じゃない。彼女はPositive thinkingの人で、「大丈夫。風向きが変わったら、その時、どーんと行けばいい」という大らかな哲学を持っているが、僕にはそれが「行き当たりばったり」で「脳天気」、実に危うく見える。

彼女が家族や親しい人たちをワゴン車に乗せて福島県に向かい、その大地でどーんと出産するという最後も、意図は分かるがあざといと感じられた。そんなことじゃ問題は何も解決しないよ。

東京の下町(長屋)が舞台で、僕が大嫌いな江戸の人情噺を彷彿とさせる。実際、落語家・瀧川鯉昇(たきがわ りしょう)さんも出演されているし。

それから中村蒼って大根だね。台詞を喋らない方がいいな。

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月亭遊方独演会 Vol. 6 ~3つの夜の物語~

11月9日(水)、繁昌亭へ。

Yu

月亭遊方さんが入門して25周年を記念する独演会で披露したのは古典落語。

遊方さんが大好きなジム・ジャームッシュ監督の映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」に倣いオムニバス形式での公演。ストーリーテラーは畑中フーさん。声がいい。渋い低音の魅力。構成は米井敬人さん。放送作家であり、笑福亭たまさんとのコラボ「たまよね」でも知られる。

「ナイト・オン・ザ・プラネット」は公開時に映画館で観たが、殆ど記憶に残っていない。かろうじてウィノナ・ライダーがタクシー運転手だった姿がぼんやり蘇るくらい。

1980年代、ジャームッシュの映画は一種のファッションだったように想う。ジャームッシュを語ることがお洒落みたいな。でも例えば今でも「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を傑作だと信じている人はどれくらいいるのだろう?閑話休題。

ホスト(案内役)がいることから「ナイト・オン・ザ・プラネット」というよりも、むしろ雰囲気的に「トワイライト・ゾーン」に近いと僕には感じられた。

Ufo

  • 看板のピン
  • 稲荷俥
  • 干物箱

賭博の噺「看板のピン」のマクラで、「出鱈目(でたらめ)」という言葉の由来はサイコロの目(出たらその目)であり、「思うつぼ」も熟練の壷振り師になれば思ったとおりの目が出せるようになることから来ていると。へー初めて知った!落語は勉強になるなぁ。日常生活の役には立たないけれど。

新作派の遊方さんだから、端々に独自の工夫があって親しみ易く愉しかった。まだ彼の「はてなの茶碗」は未体験なんだよね。機会があれば是非聴きたい。

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生は暗く、死もまた暗い。〜大植英次/大フィルの「大地の歌」

マーラーは交響曲「大地の歌」第1楽章の歌詞(原詩は李白の「悲歌行」)に次のような一行を書き加えた。

Dunkel ist das Leben, ist der Tod.
生は暗く、死もまた暗い。

第6楽章「告別」を聴いていると黒澤明の映画「乱」を想い出す。予告編でこの楽曲が使用され、本編の武満徹の音楽も監督の意向で「告別」そっくりに書かれている。「乱」をめぐる黒澤と武満の葛藤はこちらに詳しい。この二作品に通底するのは無常観である。

マーラーは「大地の歌」を作曲した時、ベートーヴェンと同じくこの交響曲が最後になるのではないかと恐れ、番号を付けなかった。「大地の歌」を支配するのは無常観と生への執着。しかし後に作曲された第9番に流れる感情は諦念と死の受容。そしてこの世への別れ。「大地の歌」は今にも雨が降り出しそうな黒雲に覆われているが、交響曲第9番で光が差し込み、空は次第に晴れ渡っていく。

11月10日(木)、ザ・シンフォニーホールへ。

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会。

当初、メゾ・ソプラノのナタリー・シュトゥッツマンが出演予定だったが、体調不良のため2週間ほど前にキャンセルが決まった。今年は福島原発事故のために沢山のオペラ歌手が来日を中止した。アンナ・ネトレプコ、ヨナス・カウフマン、ファン・ディエゴ・フローレス……。だからナタリーが来ない理由としてアナウンスされた内容を素直に受け取れないことは哀しいことだ。

代わりに決まったのは小川明子さん。テノールのジョン・ヴィラーズは予定通り来日した。

  • シューベルト/交響曲 第5番
  • マーラー/交響曲「大地の歌

大植さんが好きな対向配置ではなく、今回は通常のもの。

親しい友人たちと演奏するために作曲されたと考えられるシューベルトの5番はクラリネット、トランペット、ティンパニがない小編成。羽根のように軽やかで優しい演奏。可愛らしい曲だなと想った。大植さんの指揮は軟らかく、ニュアンスを大切にしたものだった。また第4楽章は緊張と緩和のコントラストが鮮明だった。

休憩後は「大地の歌」。第1楽章からヴィラーズの強く、伸びる声に魅了された。そして切々と訴えるような深い弦の音色。絶望と切実な魂の叫びが聴こえてきた。

第2楽章「秋に寂しき者」は霧が立ち込める幽玄の世界。小川さんの歌唱はディクション(発音)がはっきりしている。僕はこの楽章に「二十億光年の孤独」(by 谷川俊太郎)を感じた。

第3楽章「青春について」は子供の遊びのようなはしゃいだ雰囲気。

第4楽章「美について」は色彩豊かで生命力、躍動感に満ち溢れている。

第5楽章「春に酔える者」はでやけくそ、自暴自棄、厭世的。「酒呑んでなきゃ、やってられないぜ!」って感じ。しかし途中、鳥の声が聞こえると、音楽は自然の美しさで満たされる。

第6楽章「告別」。銅鑼が鳴り、コントラファゴットが蠢く。そしてオーボエのソロ。虚無感、諸行無常の響きあり。小川さんの声は深く、湖の底から聴こえてくるよう。一言一言が重い意味を持ち、噛み締めるように彼女の口から放たれていく。我々はこの楽章で自らの心の深淵を覗き込むことになる。風は一旦凪ぎ、そしてまた吹き始める。歌詞に「青春」という言葉が登場すると音楽は交響曲第5番 第4楽章 アダージェットを回顧し、友との別れの場面でマンドリンが鳴る時、この世は甘美なる夢のまた夢であることを否応なく悟る。「美しきかな!永遠の愛と生に酔う世界よ!」という歌われる箇所では陶酔の世界へ。そしてオーケストラの間奏に入ると一転、漆黒の闇に閉ざされる。空恐ろしい世界。やがて「大地も春きたりなば百花舞い緑萌えいづ」では強い想いが込められ、「永遠に… 永遠に…」という生への執着と共に幕を閉じた。

僕はただ呆然と、客席に座っていた。そして「永遠に…」この演奏が終わらないことを希った。以前からマーラーが得意なことは知っていたけれど、これぞ大植英次の真骨頂。いやはや稀代のマーラー指揮者である。そして小川さんは正にザ・シンフォニーホールに舞い降りたミューズであった。この奇跡の瞬間に立ち会えたことを僕は誇りに想う。満場の拍手の中、大植さんが感極まって小川さんに抱きついた気持ちがよく理解できた。僕は普段、大フィルの金管(特にトランペットとホルン)の悪口を書き連ねているが、今回はパーフェクト。恐れ入りました。プロフェッショナルたちによるパフォーマンスの底力、凄みを思い知らされた。

プロフィールを読むと小川さんはコルンゴルトなど現代歌曲を中心としたリサイタルを開催されているそう。是非彼女のコルンゴルトを聴きたい!ちなみにこの作曲家には浪漫的芳香漂う交響曲、ヴァイオリン協奏曲、オペラなどの傑作があるが、大フィルは未だ一度も取り上げたことがない

また、今回のプログラム・ノートに「大地の歌」に関する以下のような一文があった。

ウィーンのユダヤ人マーラーが作曲した中国の歌

グスタフ・マーラーはボヘミアのイーグラウ(現チェコのイフラヴァ)で生まれ、人間形成の上で最も重要で多感な幼年期をそこで過ごした。彼が音楽院入学のためウィーンに移住するのは15歳の時である。それを単純に「ウイーンのユダヤ人」で片付けてしまうのは如何なものだろう?例えばモーツァルトなら「ウィーンの作曲家」というよりも、ザルツブルクを連想する人の方が多いのではないだろうか?僕はマーラーの交響曲、とりわけ管楽器の節回しにボヘミア的なものを感じるのだが。

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宮川彬良/大阪市音楽団 定期~”リロイ・アンダソン勉強会”ほか

11月4日(金)、ザ・シンフォニーホールへ。

Akira

宮川彬良/大阪市音楽団による定期演奏会(以下、親しみを込めて「アキラ」と呼ばせていただく)。

以前このコンビを聴いた感想は下記。

今回は、

  • チャイコフスキー/白鳥の湖(淀 彰 編)
  • 宮川彬良の音楽塾~  ”リロイ・アンダソン勉強会
    • トランペット吹きの休日(エドワーズ 編)
    • タイプライター(ウェアール 編)
    • トランペット吹きの子守唄(ラング 編)
    • シンコペーテッド・クロック(アンダソン 編)
    • ホーム・ストレッチ(アンダソン 編)
  • 宮川 泰/組曲「宇宙戦艦ヤマト」(宮川彬良 編)
      I. 序曲 II. 宇宙戦艦ヤマト III. 出撃 IV. 大いなる愛
  • 宮川彬良/バレエ音楽「欲望という名の電車」から 
      吹奏楽版世界初演
  • コープランド/バレエ組曲「ロデオ」から 
      ホー・ダウン
    (ロジャース 編)

これは吹奏楽コンクールの記事で何度も書いていることだが、基本的にチャイコフスキーの音楽は吹奏楽に向いていないと想う。弦(げん)がないとその魅力が半減(はんげん)するんだよね(←韻を踏んでいます)。だから「白鳥の湖」は違和感ありまくり。ムリ!

プログラムを検討中に、ふとアンダソンが話題となり、アキラの「アンダソンをナメちゃいけないよ!!」との一言から決まったという、すこぶる愉快な勉強会

驚いたのは「トランペット吹きの休日」や「子守唄」は管弦楽譜と同年に吹奏楽譜が出版されているという事実。アンダソン自身による編曲もあるし、さすがアメリカは吹奏楽のメッカなんだなと感心した。

トランペット吹きの休日」の原題はBugler's Holiday。Buglerとは軍隊のラッパ手のことで、アキラの解説によるとこの楽器にはピストンがないそう。タイトルは、「普段の演奏は休符が多く楽な仕事だが、むしろ休日の方が忙しいという意味ではないか、というのが私の解釈です」「ネーミングは重要です」と。軽やかで、そのテンポは今まで体験したことがないくらいの快速球。爽やかな風が吹き抜けるような演奏。

タイプライター」は途中、間を空けたりして黙読しながら打っているリアリズムがあるとアキラ談。演奏では実際にアキラがタイプライターを担当し、後でどんな内容を打ったか伴奏付きで読み上げるオマケ付き。

トランペットの子守歌」は田舎に帰りくつろいでいるイメージで、中間部は都会の喧騒を想い出している情景ではないかと。

シンコペーテッド・クロック」はアンダソンの作品のなかで一番売れたものだそう(CBSテレビ深夜番組のテーマ音楽として長い間使われた)。時計・時間のファンタジー。アキラは間奏の華やかな「タンタター」という箇所でいつも涙が出そうになると。演奏はリズムに生き生きとしており、都会的で洗練されていた。粋だね!

ホーム・ストレッチ」とは競馬場におけるゴール直前の直線部分のこと。馬の鋭い嘶きが途中聴こえたりして「切れ」があった。

アキラの親父が作曲した「宇宙戦艦ヤマト」の序奏はアルト・サックスのソロが美しい。そして有名なテーマはただひたすらに格好よく、金管の響きが輝かしい。出撃はド迫力!

欲望という名の電車」はアキラの天才性、ひらめきに眩暈を感じた。すごい!エレキギターやドラムセットも登場。

  1. 鏡~回想はピアノ単音の連打で開始される。サックスが加わりJazzyな夜の音楽に。
  2. は都会の喧騒。車のクラクションや市電の警笛が鳴る。変拍子からワルツへ。
  3. 孤独はアルト・サックスのソロ。そしてピアノとの対話。甘美で、そして哀しい歌。
  4. 博奕はボンゴが登場し、むしむしした熱帯夜を表現。ハード・ジャズ。
  5. 少年はイノセントで清浄な響き。「牧神の午後への前奏曲」や「ダフニスとクロエ」を連想させる。
  6. 愛欲は荒々しいリズムで原始的。
  7. 迷宮はバリトン・サックスが最初のテーマを奏で、ピアノ・ソロが哀感を漂わせる。寂しい女、ブランチの肖像。そしてアキラがアコーディオンを持ち替え、ヒロインの狂気を描く。
  8. は優しい、許しの音楽。ブランチの魂は浄化され、天に召される。

カウボーイが登場するコープランドの「ロデオ」は賑やか。暴れ馬をアキラは見事な手綱さばきでコントロールする。心が躍る。なお、解説によるとこのバレエの初演を振り付けしたのはアグネス・デ・ミルだそう。この人はミュージカル「オクラホマ!」「回転木馬」「ブリガドーン」の振り付けでも有名。

アンコールはいずれも宮川彬良 編曲で、

  • R.ロジャース/ミュージカル「王様と私」より 
      シャル・ウィ・ダンス?
  • The Five Saxes Concerto(見上げてごらん夜の星を)

洗練されたアレンジ。シャル・ウィ・ダンス?はサンバあり、スウィング・ジャズあり、そして行進曲あり。めちゃくちゃ愉しい!

見上げてごらん夜の星を」ではソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの5本のサキソフォンが使用された。

エンターティナー・アキラの魅力を余す所なく堪能した夜だった。いずれこのライヴCDが発売される予定なので、ゆめゆめお聴き逃しなく!

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三谷幸喜 脚本・演出「ステキな隠し撮り ~完全無欠のコンシェルジュ~」

現在公開中の映画「ステキな金縛り」(通称”ステカナ”)の姉妹篇というべき作品がフジテレビでオンエアされた。

ステキな隠し撮り」、通称”ステカク”の公式サイトはこちら

評価:B+

ステカナとステカクは全く別の物語である。しかし出演者は同じ。つまりステカナの役者たちを一つの劇団に見立て、座付き作家としての三谷さんが新作を書き下ろしたという形。かつて主宰していた劇団「東京サンシャインボーイズ」同様のスタイルというわけ。「ステキな金縛り」の音楽がそのまま流用され、その主題歌"ONCE IN A BLUE MOON"も流れる。また市村正親、生瀬勝久は映画と同じメイクで登場。

深津絵里演じる新米コンシェルジュを狂言回しに「グランド・ホテル」形式で様々な人間模様が描かれる。そういう意味において映画「THE 有頂天ホテル」を彷彿とさせる。人間という存在の滑稽さ、そして愛おしさ。

三谷さんが自信を持てない神経質な映画監督役を自ら熱演。ヒロインに新作のDVDを渡し、その感想を求めるが、内容を聞いていると明らかにふたりは「ステキな金縛り」の話をしているから可笑しい。この映画監督のモデルはきっとウディ・アレンだね!また、「一番気になるのはネットの評判」という台詞には爆笑した。

作者がヒロインを始めとする登場人物たちを見つめる眼差しが優しい。昔の三谷さんはこうじゃなかった。やはり、仲間の死(「東京サンシャインボーイズ」の伊藤俊人、享年40歳)や小林聡美との離婚など、人生経験を重ね、人間として一回り大きくなったんだなぁという気がした。

深津絵里はステカナ同様、ステカクでもコメディエンヌとしての魅力を発散。三谷さんの術中にはまり、僕もフカッチャーになりそうで怖い(フカッチャーとは?→こちら!)。

また、映画「ステキな金縛り」のレビューに次のようなことを書いた。

深津、西田が歌う主題歌"ONCE IN A BLUE MOON"は本当にチャーミングな曲だ。これを聴きながら、「オケピ!」以来ご無沙汰している三谷さんのミュージカルを久しぶりに観たいと想った。是非、次作はミュージカル映画を!

そんな僕の夢をちょっとだけ叶えてくれるステキな場面がステカクには用意されていて、それもすごく嬉しかった。

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I LOVE YOU, YOU'RE PERFECT, NOW CHANGE(アフタートークショー付き)

11月3日、兵庫県立芸術文化センターへ。

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"I LOVE YOU, YOU'RE PERFECT, NOW CHANGE"はオフ・ブロードウェイで1996年8月1日から2008年7月27日まで、計5003回公演を行い、史上2番目にロングランしたミュージカル(1位は「ファンタスティックス」)。

2003年に「I LOVE YOU 愛の果ては?」というタイトルで日本初演された(翌04年に再演)。この時の演出は山田和也。出演は川平慈英、絵麻緒ゆう、堀内敬子、戸井勝海。これを観た三谷幸喜さんが堀内さんのことを気に入り、その後、舞台「12人の優しい日本人」(05)や映画「THE 有頂天ホテル」(06)で彼女を起用する契機となった。僕もこの再演を観ている(9月23日岡山市立市民文化ホール)。

今回の出演は中川晃教、白羽ゆり、神田沙也加、米倉利紀。演出・振付はオリジナル版を担当したジョエル・ビショッフ。公式サイトはこちら

恋愛、結婚をテーマにさまざまな人間模様が小芝居(寸劇)の連続(集積)として描かれていく。一度観ているのだけれど、楽曲も内容も全く記憶に残っていなかった。まぁ、その程度の作品である。今回再見して分かったのは「嗚呼、これはソンドハイムのブロードウェイ・ミュージカル『カンパニー』の簡易版なんだな」ということ。「カンパニー」の人数を4人に減らし、演奏もヴァイオリンとピアノ2人だけに。結局、台本や音楽の完成度は「カンパニー」の方が遥かに優れている。

しかしながら歌が上手く、芸達者な4人が揃っているので十分パフォーマンスを楽しめた。僕は中川晃教の舞台デビューとなったミュージカル「モーツァルト!」初演を2002年に観ている。他に「キャンディード」と「Tommy」。白羽ゆりは「エリザベート」など宝塚時代からお馴染み。退団後は「シェルブールの雨傘」が記憶に新しい。神田沙也加(松田聖子の娘)も彼女の舞台デビュー作、宮本亜門演出 スティーヴン・ソンドハイム作曲「INTO THE WOODS」を2004年に新国立劇場で観た。最近では「ピーターパン」と亜門版「ファンタスティックス」

そんなことどもを想い出しながら「みんな舞台でしっかりがんばってるなぁ!」とその活躍ぶりを頼もしく感じた。

アフタートークもあり、中川くんが宮城県仙台市で、白羽さんが福島県福島市出身。ふたりの故郷への想いが伝わってきて、胸が熱くなった。また神田さんは白羽さんのことをお姉さんのように慕っていると。米倉さんは初めて観たが、大阪の出身だそう。さすが会話が面白く、いつも女子楽屋に入り浸っているというエピソードには爆笑した。

Theatergoer(芝居好き)の醍醐味を満喫した休日であった。

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大植英次/大フィルのチャイコフスキー・セレクション 大団円!

ザ・シンフォニーホールへ。

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、オール・チャイコフスキー・プログラム。

  • 交響曲 第7番「人生」(未完)第1楽章 ミステリーピース
  • ロココの主題による変奏曲
  • 交響曲 第6番 「悲愴」

曲当てクイズ形式のミステリーピースには、おったまげた!チャイコフスキーの自筆楽譜が残っていることすら知らなかった。これは後にピアノ協奏曲 第3番として転用されたのだとか。小気味よく可愛らしい曲。なかなかいい。コンサート終演後答え合わせがあり、正解者はたった1名。大植さんからロシア産高級キャビアのプレゼント。

いつもの通り第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが指揮台を挟んで向かい合う対向配置。大植さんは全プログラム暗譜。

ロココの独奏は2007年にチャイコフスキー国際コンクールで優勝したセルゲイ・アントノフ。チェロはのびやかに歌い、よく鳴る。明るく澄んだ音色。特に高音のハーモニクス(倍音)が美しい。ただ、全体的にあっけらかんとしており、もう少し陰影、色の変化が欲しいと想った。

悲愴」は最近の大植さんの特徴をよく現した解釈。第1楽章 第1主題と第2主題の間、展開部と再現部の間、ゲネラル・パウゼ(総休止)をたっぷり長くとる。そしてテンポを積極的(極端なまで)に動かし、デフォルメされたチャイコフスキー。面白いけれど、今回はやり過ぎ(too much)かな?と想った。流れが悪く歪になり、奏者が指揮についていけずアンサンブルに乱れが生じる場面も幾つか見受けられた。

一転して第2楽章は表情豊かで流麗。華やかな音楽が一斉に花開く。逆に中間部は暗く沈み、その対比が鮮明。ティンパニが運命の足音のように陰鬱に響き、打ちひしがれる。この楽章は作曲家の躁鬱の振幅の大きさ(ゆれ)を示しているとも解釈できるだろう。

このシンフォニーの標題について、チャイコフスキーの弟が手紙に書いた内容によると、第3楽章は「遊戯に始まり、真剣となり、名誉ある勝利に終わる作者の音楽的発展史」だそうだが、子供みたいにすばしっこくて軽快な音楽が展開された。スキップするチャイコフスキー。そこに僕はそりすべりなどをして遊ぶ作曲家の幼少時の姿が幻視された。そして初めて気が付いた。「嗚呼、この楽章をオーソン・ウエルズ監督の映画『市民ケーン』に喩えるなら、Rose bud(薔薇のつぼみ)なんだ!」と。

第4楽章は慣例としてアダージョで演奏されてきたが、近年チャイコフスキーの自筆総譜が公開され、テンポ指定が本当はアンダンテであり、作者の死後この曲を指揮したナプラヴニークがアダージョに書き替えたことが判明した。そして今回は作曲家の意図を尊重しアンダンテで演奏するとのふれこみだったのだが、実際は遅めで、僕は従来通りのアダージョに聴こえた。終盤、銅鑼が重く響き渡ると曲は一気に虚無の世界へ。コントラバスが刻むリズムは臨終の時を迎えた病人の心音。次第に、次第に心拍数は落ちていき、やがて心電図モニターはフラットに。それでもポツリ、ポツリと期外収縮が散発するが、最終的にプツンと真っ白になって終わる(ホワイトアウト)。

ファイナルアンサー。「悲愴」の多面性を表現した見事な表現だったが(特に中間の第2・3楽章は秀逸)、僕は大阪クラシックのパフォーマンスの方が今回を凌ぐ名演だったと想う。あの頃の大植さんは今みたいにストコフスキー張りにテンポを恣意的に動かしたりせず、流れがもっと自然だった。

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笑福亭たま/ナイトヘッド(10/29)

繁昌亭レイトショーへ(開演 21時40分)。

Night1

笑福亭たまさんのディープな実験的落語会。

Night2

  • 月亭太遊/寿限無
  • 笑福亭たま/火焔太鼓
  • 月亭遊方/隣人(ネイバーズ)(遊方 作)
  • 笑福亭たま/ショート落語+マリー・アントワネット物語(たま 作)
  • 福亭たま/仮題・三者面談(授業参観)(たま 作)

遊方さんの一番弟子・太遊くんはこれが繁昌亭デビュー。言葉がポンポン出てきてリズム感がいい。ただ漫才口調が少々気になった(彼の前身は「はだか電球」という漫才コンビ)。後半テープの早回しも飛び出して、工夫があって笑えた。「マニアックなこの会の前座としてはよく受けていた」とたまさん。

たまさんによると、自作「憧れの人間国宝」がフジテレビのポッドキャストで無料配信され、なんと60万アクセスに達したとか!落語ファンがそんなにいる筈もなく、人気の理由はもっと別の所にあるだろうと(聴けば分かる)。「火焔太鼓」はエキセントリックで賑やか。

遊方さんの新作はどんどん広がってゆく妄想が愉しい。何度も聴いたネタだが、フェイスブックやツイッターなどが登場するという新基軸も。

この会で発表される(試される)たまさんの新作ショート落語は不発のことも多いが(それは聴く側も織り込み済み)、今回は豊作。いゃ~面白かった。

マリー・アントワネット物語」は落語「紀州」など会話が少なく、いわゆる「地の文」で展開される地噺(じばなし)を狙ったもの……今後の発展に期待する。いや、若いんだから色々なことに挑戦すればいいし、その為のナイトヘッドだ。落語でマリー・アントワネットとは意表を突いているし、いい線狙っていると想うな。

たまさんの才能を信じて、また通いたいと想った午前零時前だった。

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