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AKB48、あるいは「劇場型アイドル」

僕が初めてAKB48に興味を持ったのは中島哲也 監督の傑作「告白」(2010)である。

この中で、中学校の少年がAKBのファンで、自宅のテレビで"RIVER"を観ている場面があった。

そして中島監督は"Beginner"のMV(ミュージック・ビデオ)を撮り、その「残酷描写」が話題騒然となってTV放送中止(別のメイキング映像に切り替え)となる。このオリジナル・バージョンは後に「AKBがいっぱい ~ザ・ベスト・ミュージックビデオ~」(DVD & Blu-ray)に収録された。クールで研ぎ澄まされた恐るべき完成度。「書を捨てよ町へ出よう」と言ったのは寺山修司だが、"Beginner"では「(ゲームの)コントローラーを捨てよ町へ出よう」というメッセージが発せられる。「お前ら、ゲームの中で沢山のい血を見ているけれど、実際にい血を流したことはあるのか!?引きこもってバーチャルに生きるんじゃなく、現実を知れ!!」と挑発する中島監督の声が聴こえてくるようだ。

AKBのMVを観ると、錚々たる面々が演出をしていることに驚かされる。チームドラゴン名義の「心の羽根」を担当したのはマイケル・アリアス。ジェームズ・キャメロン監督「アビス」やポール・バーホーベンの「トータル・リコール」にカメラアシスタントとして参加し、アニメーション映画「鉄コン筋クリート」や実写映画「ヘブンズ・ドア」を監督した人。また「桜の栞」は岩井俊二(映画「Love Letter」「打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?」)、「桜の木になろう」が是枝裕和(映画「誰も知らない」「空気人形」)、「Everyday、カチューシャ」が本広克行(映画「踊る大走査線」「サマータイムマシン・ブルース」)、ワイヤーアクションに挑戦した「フライングゲット」が堤 幸彦(映画「トリック」「明日の記憶」「20世紀少年」)といった具合。

また写真家で映画「さくらん」の監督としても知られる蜷川実花が撮ったMV「ヘビーローテーション」は色彩豊かで可愛らしく、お洒落な仕上がりだった。

涙サブライズ!」と「RIVER」冒頭にはオフ・ブロードウェイでロングラン中のショー「STOMP」を彷彿とさせる場面がある(手拍子や身近なものを用いてリズムを奏でる)。さらに「涙サプライズ!」(監督:高橋栄樹)には群舞を俯瞰ショットで撮る場面が登場。多数の女性ダンサーを幾何的に配置し、万華鏡のような映像を創る演出は映画「四十二番街」(アカデミー作品賞受賞)などで知られるバズビー・バークレーが得意とした手法(バークレー・ショット)。つまりAKBのMVは現代のミュージカル映画と言えるだろう。

あと驚嘆したのはアンダーガールズ名義の「抱きしめちゃいけない」(監督:中村太洸)。なんと全編6分に及びワンカットで撮っているのだ(つまりカット割り、編集がない)。アイドルのMVでこんな実験的手法が用いられているとは!出演しているメンバーはカメラからフレームアウトする(画面の外に出る)と衣装の早替わりをし、5着くらい着替える。世界的に早くからこの長回し(ワンシーン・ワンカット)に挑戦したのがアルフレッド・ヒッチコック監督である。「ロープ」(1948)では映画丸々一本をワンカットで撮るという離れ業に挑み、イングリッド・バーグマン主演「山羊座のもとに」(1949)でも5分に及ぶ長回しがある。オーソン・ウェルズ監督「黒い罠」(1958)冒頭の長いシーンも有名。その歴史の延長上に彼女たちは立っている。

彼女たちのことを知るにつけ、宝塚歌劇とそのシステムが似ていることが次第に分かってきた。宝塚には花・雪・月・星・宙の5つの組がある。一方、AKBはチームA・K・B・4と分かれている(いずれチーム8も出来るだろう)。ホームグラウンドはドンキホーテ秋葉原店8階にあるAKB48劇場。そこで毎日公演が行われている。つまり劇場型アイドルという新しい形なのである。その中で「センターに立つ」という意味は宝塚におけるトップ・スターと同義と言えるだろう。また病気やメディアの仕事で公演に欠員が出た場合はアンダー(understudy、代役)が立つというのも舞台ミュージカルに近い仕組みだ。研究生は宝塚音楽学校の生徒(予科・本科)みたいな立場である。実際、宝塚入学を断念してAKBに入ったメンバーや、将来の夢はブロードウェイの舞台に立つことだと宣言しているメンバーもいる。僕は人海戦術を駆使した宝塚歌劇の群舞が大好きだが、それに似た魅力をAKBにも感じる。ダンスの振付も相当ハードで高度な技量が要求され、20年前のアイドルのそれとは雲泥の差である。日々レッスンを積み重ね、彼女たちは確実に進化している。

今や国民的アイドルと言われ、人気絶頂のAKBだが、岩井俊二が製作総指揮を担当した「DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?」を観ると、メンバーは意外と客観的、クールに自分たちの置かれた状況を見つめていることが分る。握手会や劇場でのファンとの直接の交流、そして総選挙などを通じ彼女たちは自分のポジション(立ち位置)やファンが何を求めているのかをしっかり把握している。「人気はいつか必ず落ちる」だろう。しかし、そうなっても彼女たちには戻る場所=劇場がある。そこが原点、ホームなのだから。

最後に僕が好きなAKBのMVと楽曲を挙げておく(順不同)。

MVベスト5

  • Beginner (ORIGINAL VER.)
  • 抱きしめちゃいけない(アンダーガールズ)
  • ヘビーローテーション
  • 野菜シスターズ
  • フライングゲット

楽曲ベスト5

  • 夕陽を見ているか?
  • 初日(チーム B)
  • 言い訳Maybe
  • RIVER
  • 10年桜

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