フレンチ・ミュージカル「ロミオ & ジュリエット」ダブルキャスト/ダブル観劇
梅田芸術劇場へ。
フランンス産ミュージカル「ロミオ & ジュリエット」を昼・夜連続で観劇。主役二人はダブル・キャスト。ジュリエット役はどちらも新人である。
以前、宝塚歌劇バージョンを観た僕の感想は下記。
演出は宝塚バージョン同様、小池修一郎さん。日本のミュージカル界を牽引するエースである。
宝塚版は「愛」と「死」のダンサーが登場し、最後に2者が融合するという印象的な演出があった。今回は「死」のみ。些か物足りない気もしたが、ロミオとジュリエットが初夜を迎えた翌朝の場面で、「死」が天上から(ワイヤーに吊り下げられ)降りてきてロミオの首を絞めようとしたり、ラストで昇天しながら磔にされたイエス・キリストのポーズを取ったりするのはさすがだなと想った。ここで背景に十字架も登場するのだが、それがボロボロというのもニクイね。
今回は設定を現代に持ってきて、ロミオがiPhoneホワイトを持っていたり、ベンヴオーリオから「恋人が欲しいんだったら、フェイスブックに登録したら?」と言われたりして新鮮だった(現代への読み替えというのは、ヨーロッパで上演されているオペラ演出で流行っている手法である)。またバルコニー・シーンで、
ロミオ「携帯の番号、教えてくれる?」
ジュリエット「持ってないの」
ロミオ「エエッ!!」
ジュリエット「父が18歳になるまで駄目だって」
という会話には爆笑。
舞台セットは古代ローマ遺跡を背景にしているので、キャピュレット家とモンタギュー家の亡霊が現代に蘇り、いまだに抗争を繰り返しているという解釈も可能だろう。奥が深い。
「ロミオとジュリエット」の物語はギリシャ神話「ピュラモスとティスベ(桑の木)」に基づいている。それを16世紀にイギリスの劇作家シェイクスピアがイタリアを舞台に戯曲にし、21世紀になってフランスでミュージカル化。そして日本の演出家とキャストによって上演されている。真の芸術作品は国境も時代も軽々と超越してしまうという、普遍性を示すよき例だろう。
宝塚版の衣装はキャピュレットが太陽の赤、モンタギューが月の青を基調にしていたが、今回はキャピュレットの紋章(エンブレム)が獅子で服が赤と豹柄、モンタギューの紋章がドラリオン(ドラゴン)で服が黒と爬虫類柄となっている。
またジュリエットがキャピュレット卿の実の娘ではないという設定には「宝塚版には、そんなのなかったのに!」と仰天した。考えてみればキャピュレット夫人は結婚後、不義密通していたわけで、それは「清く、正しく、美しく」というすみれコードに抵触する。だからミュージカル「エリザベート」でヒロインが夫のフランツ・ヨーゼフから梅毒をうつされるというエピソードが宝塚版でカットされたように、本作でも同様の処置が施されたということなのだろう。
その他のキャストはベンヴォーリオ:浦井健治、キャピュレット夫人:涼風真世、キャピュレット卿:石川禅、ロレンス神父:安崎求ら。
山崎育三郎&昆夏美のコンビは、とにかく歌が素晴らしい!どこまでも伸びる高音。その美しさに陶酔した。日本ミュージカル界の実力も、遂にここまで来たかと感慨深い。
キャピュレット夫人は勿論のこと、劇的なキャピュレット卿、表現力豊かなベンヴォーリオ、低音が響き渡るロレンス神父もすごく良かった。
20年前に初めてミュージカル「オペラ座の怪人」を観劇した時、そして1998年に初めて訪れた宝塚大劇場で宙組「エリザベート」を観た時に匹敵するくらいの深い感銘を受けた。この3作品が現時点での僕にとってのベスト・ミュージカルだ。
そして2回目の観劇。
城田優は母親がスペイン人で、スペイン国籍を取得している。身長188cmのイケメン。フランク莉奈もハーフで、モデル出身の高校生18歳。身長171cm。フランス人形みたいな可憐さ!長くて細い手と脚が魅力的。この2人はビジュアル系といえるだろう。歌の上手さは山崎&夏美コンビに軍配があるが、城田&利奈も音程が外れているわけではないし、あくまで両者を比較しての話。
一幕フィナーレ「エメ(Aimer)」の立ち姿の美しさ、そして二幕最後、ジュリエットの霊廟に並んで横たわる二人とそれを取り囲む両家の人々の姿は、まるでラファエロの宗教画を観てているような錯覚に捕われる神々しさだった。ウットリ。
またこの幕切れ、モンタギュー家とキャピュレット家の各々が、ロミオとジュリエットの遺体を引き離そうと担ぐのだが、二人の両手が繋がれていて空中で静止する。この演出も美しかった!
ティボルト役に関してイケメン度は 平方元基>上原理生 で、歌唱力は 平方<上原 といった感じかな。
爆発する若いパワーと疾走感に溢れた、傑出した舞台である。必見。
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