菊池洋子/エラール・ピアノで弾くシューマンとリスト
いずみホールへ。
モーツァルト国際コンクールで日本人として初めて優勝した菊池洋子さんのピアノを聴く。
今回使用された楽器は1852年製 エラール・ピアノ(ヤマモト・コレクション)。これは1851年にロンドンの大英博覧会で金メダルを獲得したのと同じモデルで、本体外装にはブラジルの貴重なローズウッド材が使用されているとのこと。
ショパンは次のような言葉を残している。
「プレイエルはそっと繊細に弾いたときだけ美しい響きが出る。エラールは何もかもがいつも美しく響く。だから美しい音を出そうと細心の注意を払う必要がない」
「僕は気分のすぐれないときはエラールのピアノを弾く。このピアノは既成の音を出すから。しかし身体の調子の良いときはプレイエルを弾く。何故ならこの楽器からは自分の音を作り出す事が出来るから」
以前、プレイエルを聴いた時にエラールについても記述し、ヤマモト・コレクションへのリンクも張っているので、そちらをご覧下さい。
今回のプログラムは、
- シューマン/アラベスク
- シューマン/交響的練習曲(1837年版/遺作つき)
- リスト/ウィーンの夜会~シューベルトのワルツ・カプリス 第6番
- リスト/パガニーニ大練習曲 第3番 「ラ・カンパネラ」
- リスト/エステ荘の噴水~巡礼の年 第3年 より
- リスト/愛の夢 第3番
- リスト/ドン・ジョヴァンニの回想
エラールはプレイエルより大きい音がして、メカニカルでモダン・ピアノにより近い印象。プレイエルを暖色系とするとエラールは寒色系。
低音部に関しては、現代のグランド・ピアノの方が豊かな倍音が鳴ると想う。しかしエラールの魅力は高音部。透明な響きで、正にクリスタルの質感!その威力が最大限に発揮されたのが「ラ・カンパネラ」と「エステ荘の噴水」だった。まるで鈴がコロコロ鳴っているような清新さ。リストの頭の中で響いていた音のイメージが初めて明らかになったように僕には感じられた。
菊池さんのタッチは軽やかでサラッとしている。濃厚なロマンティシズムとは対極にある。つまり、やっぱりモーツァルト的なんだね。指がよく動き、歯切れがいい。
ただ最近聴いた男性ピアニスト、例えばアンスネスやベレゾフスキーと比べると打鍵が力強くなく、やはり女性だなと感じる。モーツァルトを得意としているという点でもクララ・ハスキルやイングリット・ヘブラーに近い資質なんじゃないだろうか?河村尚子さんなんかはもっと逞しい印象。
それにしても難曲という意味で「ドン・ジョバンニの回想」は正気の沙汰じゃないなと唖然とした。リストの物凄さを思い知らされた。
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