ノルウェイのピアニスト・アンスネス来日と村上春樹
兵庫県立芸術文化センターへ。
ノルウェイのピアニスト、レイフ・オヴェ・アンスネスを聴く。実は彼のことを初めて知ったのは村上春樹さん
のエッセイにおいてだった。「意味がなければスイングはない」(文春文庫)で村上さんはシューベルト/ピアノソナタ第17番を取り上げ、所有する15種類の演奏(LP,CD)を
比較し、アンスネスを第一に推した。
考えてみたら「ノルウェイの森」の作者が、ノルウェイのピアニストを推すというのも面白い。このエッセイを読んでアンスネスが弾くシューベルトのCDを購入したが、静謐な叙情をたたえた目の醒めるような演奏だった。テクニックも的確。
今回のプログラムは、
- ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」
- ブラームス/4つのバラード
- ショパン/バラード 第3番
- ショパン/ワルツ 第13番、第7番、第11番、第5番
- ショパン/夜想曲 第17番
- ショパン/バラード 第1番
正確無比。そのタッチは瑞々しく、水面を跳ねる飛魚を連想させる。活きがいい。曖昧さは皆無で、透明感が感じられた。ショパンは華麗というより精緻。また最弱音(pp)の美しさが際立つ。逆に、「ワルトシュタイン」の第3楽章には男性的でパワフルだった。
シューマンがライン川に投身自殺を図った年に書かれたブラームスの「バラード」第1曲はまるで弔いの鐘のような響きがする。第2曲には憧憬、思慕の念が感じられる。それはクララ・シューマンへの想いだろうか?第3曲「間奏曲」は激情が走り、苦悩に満ちている。一転して中間部では天国的な美しさ!第4曲はシューマンを連想させる浪漫的曲想に始まり、中間部ではブラームスらしい内省的音楽に。中々渋い、いい曲だった。
アンコールは、
- ショパン/前奏曲 op. 28-17
聴いた瞬間、「これでは絶対に終わらない!」と確信した。だってアンスネスはノルウェイのピアニストだから。
そして案の定、続けて2曲を演奏してくれた。
- グリーグ/ノルウェイの農民行進曲(「抒情小曲集」より)
- グリーグ/春に寄す(「抒情小曲集」より)
農民行進曲は左手の担当するリズムが堅固で力強い。そして待ちわびた春への憧れに満ちた美しい楽曲へ。陶酔した。ピバ!北欧。
41歳の若き巨匠アンスネス、また聴きたいピアニストである。次回は是非、グリーグ中心で。
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