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2011年9月 7日 (水)

音楽の神様は舞い降りた! 「大阪クラシック2011」3日目〜大植英次/大フィルの尾高尚忠とショスタコーヴィチ

9月5日(火)ザ・シンフォニーホールへ。

Osaka

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • 尾高尚忠/フルート協奏曲
  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番

フルート独奏は大フィル首席奏者の野津臣貴博(みきひろ)さん。

尾高尚忠(おたかひさただ)は39歳の若さで亡くなった。ベルリン・フィルの指揮台に立ったこともあるそうで、名指揮者・尾高忠明はその次男。

フルート協奏曲(小編成版)は1948年9月3日に初演された。そしてなんと、会場に来られていた平松・大阪市長の誕生年でもあるそうだ。今回演奏されたのは作曲家の死後、弟子の林光が改訂した大編成版。金管はトランペットやホルンはあるが、トロンボーンなし。「日本のやさしさ、自然の厳しさがこの曲にはあります」と大植さん。

大植さんが1972年に桐朋学園に入学した当時、指揮者でフルート奏者としても活躍、そしてこの曲の依頼者でもある森正が教鞭を執っており、最初にレッスンを受けたそう。大植さんはなんと暗譜で指揮された。

僕は今回初めて聴いたのだが、第1楽章からメロディアスで叙情的。涙が出そうなくらい美しい!第2楽章はピアノが登場。チェロが弓で弦を叩く奏法もあったりしてエキゾチック。そして無窮動、変拍子の第3楽章で華やかに終わる。

「市長!いい曲だったでしょう」という大植さんの呼びかけに対し、客席からステージに駆け上がった市長は大阪の水道水をペットボトル(500ml)に詰めた商品「ほんまや」(モンドセレクション金賞)を差し出して答える。「大阪市民は市長を愛しています!」と大植さんは言い、尾高尚忠を振った指揮棒をプレゼントした。

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番は1937年に初演された。大植さんによると、その年に御堂筋が完成したそうである。さらに同年、大阪市立電気科学館(現:大阪市立科学館)に日本で初めてのプラネタリウムが設置されたという。

曲の内容についてのレクチャーもあって、すごくエキサイティングだったのだが「インターネットには書かないで」とのことなので詳細をお伝え出来ないのが残念。さわりだけ述べると、ドミトリー・ショスタコーヴィチ(Dmitri Schostakowitsch)が(バッハB-A-C-Hのひそみに倣い)ドイツ語における自分のイニシャル(D-S-C-H)を交響曲第10番の中に密かに刻印(署名)したことは有名だが、実は第5番でも……という内容だった(こうした手法をモノグラムという)。

この曲に篭められた真意を理解するには作曲家とソヴィエト共産党、特に独裁者スターリンとの確執を知っておく必要があるだろう。第1楽章は威圧的で強烈なユニゾンが印象的。おどけたマリオネットを連想させる第2楽章はアクセントを強調し、弾力がある。途中、極端にテンポを落としたり、突如暴力的になったりもする。悲痛な第3楽章は暗い深淵を覗き込むよう。寂寞としたフルート・ソロは虚無を感じさせる。そして重々しいティンパニが炸裂する第4楽章は作曲家が自分の運命に抗うかのよう。この音楽は当時の政治当局をきっぱりと否定し、最後は俺(ショスタコ)が勝つのだと高らかに宣言している、ということを今回の演奏を通じて理解することが出来た。2007年4月同曲を大フル定期で聴いた時より20%増し、今年一番、桁外れの名演!僕は今宵、音楽の神様がザ・シンフォニーホールに間違いなく舞い降りたのだと確信した。

アンコールはユーマンス(ショスタコーヴィチ 編)/タヒチ=トロット(二人でお茶を) 作品16。これは作曲家が指揮者ニコライ・マルコの自宅で「二人でお茶を」のレコードを1回だけ聴かされ、「1時間以内に編曲出来るか100ルーブル賭けよう」と提案され、45分でオーケストレーションを仕上げて勝ったという逸話が残っている。自作ではないにもかかわらず、作品番号付きで発表し、後にバレエ音楽「黄金時代」の間奏曲としても使用した。大植さんによると今でも楽譜は手書きのままなのだそう。ウィットに富んだ洒落た曲だった。

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