映画「ツリー・オブ・ライフ」
評価:B+
カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)受賞。映画公式サイトはこちら。
上映が終わり、館内が明るくなった時に観客が口々に喋った感想が興味深かった。
「難しい映画だった」「高尚過ぎてついていけない」「宗教的だから、信仰心がないと理解出来ないね」「あー、よく寝た!」
僕はこれらの困惑した会話を聞きながら、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」が公開された1968年当時の映画館の雰囲気も、似たような感じだったのではないかなと想った。
本作の内容を全て理解するのは困難である。これはむしろ映像で描かれた「詩」と考えるべきではないだろうか?映画「燃えよドラゴン」におけるブルース・リーの台詞を引用するならば、"Don't think. Feel !"(考えるな。感じろ!)ということだ。
映画のプロットは中年期を迎えた主人公(ショーン・ペン)が、幼少期の厳格だった父(ブラッド・ピット)や優しかった母、そして弟たちとの想い出を振り返るというのが基軸になるが、回想なので脈絡がない。僕が真っ先に連想したのはソ連の映画監督アンドレイ・タルコフスキーの「鏡」(1975)である。母親の空中浮遊シーンがあるという点でも両者は共通している。それに加え、本作では生命の連鎖・地球史が挿入されるのでややこしい。
テレンス・マリック監督は「天国の日々」(1978年、カンヌ国際映画祭監督賞)の頃から感じていたのだが、映像は美しいのだがシナリオが弱い。それは「シン・レッド・ライン」(1998年、ベルリン国際映画祭金熊賞)や「ニュー・ワールド」(2005年)でも同様である。そして「ツリー・オブ・ライフ」もしかり。
しかし、アルフォンソ・キュアロン監督と長年組んできたメキシコの名撮影監督エマニュエル・ルベツキによる映像は極めつけの魔法に満ちている!息を呑む美しさとはまさにこのこと。特にショーン・ペンの登場する場面では、常に海の底にいるような錯覚に襲われる。それを味わうだけでも一見の価値がある作品と言えるだろう。是非ルベツキにはアカデミー撮影賞を!
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コメント
ブルース・リーのセリフ“Don't Think. Feel!”があるのは『死亡遊戯』ではなく『燃えよドラゴン』のオープニングだと思います。
Wikipedia(下記 URL)の「1.3 武道家からアクションスターへ」をご参照ください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC
投稿: わさび | 2011年8月17日 (水) 01時27分
ご指摘の件、修正致しました。勘違いしていました。ありがとうございました。
投稿: 雅哉 | 2011年8月17日 (水) 07時38分