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2011年8月 7日 (日)

コクリコ坂から

評価:B

Ko1

傑作じゃないけれど佳作。監督は宮崎吾朗。企画・脚本が親父(宮崎駿)で、キャラクターデザインが近藤勝也。はっきり言って誰が監督しようが、ある一定のクオリティは保障されている「耳をすませば」方式だもんね(「耳をすませば」の監督は47歳で亡くなった近藤喜文だが、キャラクターデザイン・脚本・絵コンテは宮崎駿さんが担当し、実質的な宮崎アニメである。宮さんは後に、すべてを近藤さんに任せなかったことを後悔している)。

「コクリコ坂から」は”心情左翼”宮崎駿の側面が炸裂!1963年の日本を舞台に、安保闘争やら学生運動へのノスタルジーを高らかに歌う。ヒロインの父親が船乗りで、朝鮮戦争時に米軍の後方支援=LSTに従事し、撃沈されたという設定にはびっくりした(つまり、日米安保の犠牲者というわけ)。

ポスターなどタイトルにが使われているのがミソ。コクリコとはフランス語で「ひなげし(虞美人草)」の意味で、フランス国旗(トリコロール)にはひなげしの赤が使われているそう。ヒロインはその三色旗を掲揚するが、日の丸は揚げない。ゆえに、この映画は「の豚」に繋がっている(「紅の豚」の挿入歌はパリ・コミューン時代に流行ったシャンソン「さくらんぼの実る頃」)。

ヒロインは皆から「メル」という渾名で呼ばれている。「何で?」と疑問に想いながら観ていて、途中でハッと気が付いた!彼女の名前「海」はフランス語で"La mer"(ドビュッシーの曲名)。だからカルチェ・ラタンも登場するんだね。

ヒロインが憧れの先輩と自転車の二人乗りをする場面は「耳をすませば」を彷彿とさせ、胸がキュンとなった。そして伏魔殿のように起立するカルチェ・ラタンは「千と千尋の神隠し」の湯屋みたいだし、途中それが「カリオストロの城」の時計塔に変身する。

時代考証をしっかりして、細部まで丁寧に描かれているのはさすがスタジオ・ジブリ。クオリティは高い。

しかし、演出に欠けているもの。つまり父にあって息子にないもの。それは映像の「スピード感」と「躍動感」。これは生まれもったセンス、天賦の才能だからどうしようもないよね。

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コメント

はじめまして。ブログ発足当時からたまに拝見させてもらっている者です。いつも勉強させてもらっています。
私もコクリコを観ました。吾朗さんといえば、前回のゲド戦記があまりにも……でしたので、今回は映画館では観ないつもりでしたが、気まぐれで観てしまいました。
今回のコクリコがそこそこの出来だったのは、駿さんら先輩スタッフの介入があったからなのでしょうか。
駿さんは、ナウシカ、トトロ、千と千尋でもそうでしたが、少女(たち)にお掃除をさせるのが好きなんですね。どういった心理なのか、わかりませんが……。
先日のNHKの番組では、前回のゲド戦記がはっきり言ってアレだったことについて、駿さんはもちろん、鈴木プロデューサーまでも認めていた感じだったので、ジブリとして失敗作として認めたんだなと感じました。

投稿: kuitaro | 2011年8月16日 (火) 16時46分

コメントありがとうございます。仰る通りですね。お掃除シーンは僕も想いました。「天空の城ラピュタ」でも、タイガーモス号をシータが掃除する場面がありますよね。

投稿: 雅哉 | 2011年8月17日 (水) 07時43分

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