バッハ・オルガン連続演奏会「究極のバッハ」@いずみホール
いずみホールへ。シリーズ第9回。
今回はスウェーデンからハンス=オラ・エリクソンが来日した。確かなテクニックを持つ名手であった。
- 「音楽の捧げもの」より《6声のリチェルカーレ》
- パルティータ「喜び迎えん、慈しみ深きイエスよ」 BWV768
- 「フーガの技法」より《未完の四重フーガ》
- コラール「汝の御座の前にわれはいま進み出で」 BWV668
(休憩) - 幻想曲 ト短調 BWV572
- コラール「天にましますわれらの父よ」 BWV682
- コラール「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」 BWV622
- パッサカリア ハ短調 BWV582
- オルガン小曲集より「イエス、わが喜び」 BWV610(アンコール)
プログラム前半はJ.S.バッハ後期の作品が並び、2曲目だけ若い頃の作品。最晩年に書かれた未完のフーガに絶筆のコラールが続く。後半は主にバッハ20代の初期作品の中、2曲目だけ後期のもの。対称的な配置。
従来チェンバロで弾かれる「音楽の捧げもの」をオルガンで聴くと、とても荘厳に響き新鮮だった。
「喜び迎えん、慈しみ深きイエスよ」は素朴で若々しい情熱が感じられる。
一転、「フーガの技法」は幾何学的、数学的で純化された世界。続く遺言「汝の御座の前にわれはいま進み出で」 は寂しく、諦念に至る。そこには死の受容があった。
休憩後、幻想曲は軽やかで、喜びと開放感に満ちている。中間の《グラヴマン》(荘重に)と指示された箇所では天上から光が差し込むかのよう。
そして複雑で、深みのある後期作品へ。「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」 は心穏やかな音楽。
プログラム最後のパッサカリアは冒頭、ペダルで提示される堂々たる低音主題が腹に響く。多彩な音色、壮大なシンフォニー。僕はただただ圧倒され、「オルガンの中に宇宙がある」と感じ入った。
神を讃えるためにパイプオルガンというスケールの大きな創造物を生み出した西洋人の発想は途轍もないし、その楽器を駆使して誰も到達し得なかった高みまで登りつめたバッハの音楽にはひれ伏すしかない。そんなことどもを考えながら帰途に就いた。
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