ウルバンスキ/大フィルのポーランドとロシアの調べ
6月17日(金)、ザ・シンフォニーホールへ。
ポーランド生まれの28歳、クシシュトフ・ウルバンスキと大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会。
ウルバンスキは今年秋よりインディアナポリス交響楽団音楽監督に就任が決まっており、アメリカのメジャー・オーケストラでは最年少となる。彼が2009年に大フィル定期に登場したときの感想は下記(この時は英語読みで”アーバンスキ”と表記されていた)。
- ルトスワフスキ/小組曲
- シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲 第2番
- バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番よりラルゴ(アンコール)
- ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)
ヴァイオリン独奏は1990年にチャイコフスキー国際コンクールに優勝した諏訪内晶子さん。
プログラムの構成は最初の二曲がポーランドの作曲家で、後半がロシア。
ルトスワフスキの曲はポーランド南部山岳地帯の民謡を採集したもの。
また、ショパンやパデレフスキが主にポーラなどポーランド北部低地地方の民謡に取材したのに対し、シマノフスキが影響を受けたのはポーランド南部山岳部タトラ地方の民謡、特にGórale(グラル人)と呼ばれる、牧畜を主体とする農民に伝わるものだったそうだ。
さらにルトスワフスキはストラヴィンスキーから多大な影響を受けており、「小組曲」第1曲「横笛」にも「春の祭典」を彷彿とさせるような弦の刻むリズムが登場する。このように考え抜かれたプログラム構成であった。
「小組曲」は切れがありスマートな演奏。第2曲「ポルカ」は踊りの曲だけにエキサイティング!
シマノフスキのコンチェルトは諏訪内さんの奏でる凛とした美しい音に陶酔した。のびやかで、しなやか。そしてソロの箇所では毅然とした佇まい。パーフェクト。アンコールのバッハは澄み切った音で清浄な演奏だった。
「火の鳥」は速めのテンポで明晰・知的な解釈。繊細な弱音から迫力ある最強音までグラデーションが鮮やか。多彩な音色のパレットが魅力的であった。またいろいろな箇所に今までこの曲から聴いたことのない表現が飛び出し、特に終曲における全奏のスタッカートには驚いた。
そこで調べてみると、終曲の主題を繰り返す箇所で全曲版・1919年版では4分音符の動きで朗々と旋律を奏でるところが、1945年版では「8分音符(または16分音符2つ)+8分休符」という、途切れ途切れの乾いた響きで奏でられるように変えられているそうだ。指揮者によっては1945年版を用いながらも、終曲のみ1919年版に差し替えて演奏する人もいるらしい。
実に新鮮な体験だった。
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コメント
雅哉さんこんばんは。いい演奏会でしたね。
後半も良かったですけれど、前半2曲が絶品だったと思います。
ウルバンスキ君、また来てくれないでしょうかね。
投稿: ぐすたふ | 2011年6月18日 (土) 21時59分
随分前に前N響アワーで放送された、ストラヴィンスキー自身が振ったN響の火の鳥では(まだ映像が白黒で、子守歌から後が放送されました。ファゴットの霧生先生がまだ入団したての若者だった・・・)、8分音符での短いヴァージョンで演奏されていました。
子守歌のファゴットソロも、ヴァージョンによって半音違う音が指定されていたりします。いったい、どれがストラヴィンスキーのイメージする音だったのか、どうして初演ではそのように書いたのか、など興味深いテーマかもしれません。
投稿: ふーじー | 2011年6月18日 (土) 23時10分
ぐすたふさん、コメントありがとうございます。
ウルバンスキは本当に才能ある指揮者なので、また聴きたいですね!しかし東京交響楽団定期でも好評で、あちらも狙っているようですから、大フィルもうかうかしていられません。
投稿: 雅哉 | 2011年6月19日 (日) 00時22分
ふーじーさん、専門家からのコメントありがとうございます。
理屈から言えば最終版が作曲家のファイナル・アンサーなのですから、1945年版が決定版なのではないでしょうか?本人の指揮もこれを選んでいる訳ですし。
ただし、ブルックナーにも原典版、ハース版、ノヴァーク版があったりしてどれがベストか評価も別れており、ややこしいですね。
まぁどれがひとつに決めず、As You Like It(お気に召すまま)で良いのでは?
投稿: 雅哉 | 2011年6月19日 (日) 00時30分