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2011年6月 4日 (土)

映画「ブラック・スワン」を読み解く!

評価:A

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アカデミー賞では作品賞・監督賞・主演女優賞・撮影賞・編集賞の5部門にノミネートされ、ナタリー・ポートマンが米・英のダブル受賞を果たした。監督は「レスラー」のダーレン・アロノフスキー。映画公式サイトはこちら

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すこぶる刺激的な映画だ。

これは白鳥(イノセント)としての自己と、黒鳥(邪悪)の自己との葛藤の物語である(以下ネタバレあり)。

ニューヨークのバレエ団に所属するニナはチャイコフスキーの「白鳥の湖」でプリンシパル(主役)に抜擢されることを希う。しかし黒鳥を上手く踊ることが出来ず、振付家から罵られる。「もっと官能的に!誘惑しろ!」

悩んだニナは(今は落ちぶれた)嘗ての花形バレリーナで、振付家と性的関係を持つベス(ウィノナ・ライダー)の個室に忍び込み、口紅や化粧道具を盗む。その口紅をつけ、振付家を誘惑するニナ。つまり彼女は汚れたベスと同化しようと試みる。

どうにかオデット役を勝ち取るが、サンフランシスコからやってきた自由奔放な新人・リリーが彼女の代役(alternate,プリンシパルが怪我をした時の交代要員)に決まり、脅威となる。

リリーにドラッグを飲まされたニナはレズビアン的交わりもする。自分の”臆病な性”を開放しようとする訳だ。

そして黒鳥の役を奪われそうになり、彼女はリリーを割れた鏡の破片で刺し殺す。こうして邪悪な黒鳥に変態(メタモルフォーゼ)するのである。

クライマックスのステージ(初日)で白鳥と黒鳥は渾然一体となる。熱狂する観客。彼女は喝采に包まれる。

しかし最後に、リリーを殺害したのはニナの幻覚であり、実際は鏡に映った自分を刺したことが判明する。結局彼女は振付家とセックスをしなかったし、リリーと交わったのも妄想だった。ベスには口紅を返した……こうして彼女は純潔なままの白鳥の姿で「私は完璧だわ」とつぶやき、死んでいくのである。だからこれは意思の勝利であり、ハッピー・エンドと言えるだろう。

故に本作は、例えばビリー・ワイルダー脚本・監督の名作「サンセット大通り」みたいな、”次第に狂気に追い込まれていく女性の悲劇”では決してないのである。

おどおどしてニューロティック(神経症的)なヒロインを演じたナタリー・ポートマンは見事であった。ヒッチコックの「レベッカ」や「断崖」(アカデミー主演女優賞受賞)におけるジョーン・フォンテインの演技を彷彿とさせた。参考にしたのかな?

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