市村正親、大竹しのぶ主演/ブロードウェイ・ミュージカル「スウィーニー・トッド」
僕は日本人の中では比較的スティーヴン・ソンドハイムのミュージカルを観ている方に属するのではないかと思っている。
彼が作詞のみ担当した「ウエストサイド物語」「ジプシー」は勿論だが、作詞・作曲を担当したもので生の舞台を観たのは「カンパニー」「リトル・ナイト・ミュージック」「スウィーニー・トッド」「イントゥ・ザ・ウッズ」「太平洋序曲」の5作品。さらにBSやDVDで鑑賞済みなのが"Putting It Together"「ジョージの恋人(日曜日に公園でジョージと)」「パッション」の3作品である。中でも「スウィーニー・トッド」はソンドハイム最高傑作ではなかろうか?
アメリカ初演が1979年で日本における初演は81年、帝国劇場。市川染五郎(現・松本幸四郎)と鳳蘭が主演だった。
26年ぶりの上演となる宮本亜門 演出版が幕を上げたのが2007年。
今回の再演でアンソニー役が城田優から田代万里生に代わった以外、キャストに大きな変更はない。
シアターBRAVA!へ。
2007年の公演で菊田一夫演劇賞を受賞した大竹しのぶの歌唱力は些か難があるが、演技力はさすがだし、人肉パイを思い付くブラックな場面でも会場から結構笑いが起こっていた。ラヴェット夫人役は今まで、ブロードウェイのオリジナル・キャスト、アンジェラ・ランズベリーやパティ・ルポン、また映画版のヘレナ・ボナム=カーターらを観てきたが、決してそれらに遜色ない出来である(いずれも甲乙つけ難い)。
市村さんは前回と比較しても凄みが増していた。今やこの役は市村さん以外に考えられない。パーフェクト。
またジョアンナを演じたソニンは病的なヴィブラートがいい!水夫(アンソニー)以外、登場人物全員が狂っているというのがこのミュージカルの凄いところ。
田代万里生は美声だし、キムラ緑子、武田真治ら他のキャストも好演。
亜門の演出は目まぐるしくセットを動かしながらのスピーディーな場面転換が鮮やか。素晴らしいプロダクションだ。必見。
それにしてもはやり冒頭「スウィーニー・トッドのバラード」は迫力がある名曲だ。これが映画版で(撮影されながらも)カットされたのは余りにも惜しい。
そして、これから残酷に人を殺そうとする場面で歌われる「プリティ・ウーマン」のなんという美しさ!そのギャップこそがソンドハイムの天才性を示している。
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