波多野睦美(歌)つのだたかし(リュート/ギター) 「美しい島」
ザ・フェニックスホールへ。
本来はロベルタ・マメリ(イタリアのソプラノ)来日公演「ラクリメ・アモローゼ」に行く予定だったのが、福島原発事故のせいで中止となり、その振り替え公演として開催されたもの。入場料4,500円の収益は被災地支援の義援金となった。
波多野睦美さんはロンドンのトリニティ音楽大学声楽科卒業。古楽の領域で活躍するメゾソプラノ。つのだたかしさんはドイツの国立ケルン音楽大学リュート科卒業。古楽バンド《タブラトゥーラ》主宰。
- 《ジョン・ダウランドのリュートソング》
甘い愛が呼んでいる/彼の金髪を/彼女は言いわけできようか - 《イギリスのフォークソング》
スカボローフェア/サリーガーデン/恋人の黒髪 - 《リュート・ソロ》
私の窓からお帰り、恋人よ - 《イタリア・バロックのマドリガル》
この胸の苦しみが(モンテヴェルディ)/恋するヘラクレイトス(ストロッツィ) - 《ヘンリー・パーセルの歌曲》
美しい島/僕よりも幸せなものは/孤独
ー休憩ー - 《ギター・ソロ》
鳥の歌 - 《フランツ・シューベルトの歌曲》
野ばら/夜の歌 - 《フェルナンド・ソルのセギディーリャ》
娘と羞恥心/女とギターの弦は - 《20世紀の愛の歌》
愛の小経(プーランク)/アルフォンシーナと海(ラミレス)/オブリヴィオン(ピアソラ)
アンコールは、
- 江間章子(詞)團伊玖磨(曲)/花の街
- アイルランド民謡/庭の千草(夏の名残のバラ)
プログラム前半のリュートはシェイクスピアの時代、16世紀の楽器で19弦ある。また後半で使用されたギターはヨハン・ゲオルク・シュタウファー(1778-1853)製作のオリジナル楽器で、これはシューベルトの遺品にもあったものだそう。
波多野さんの歌声はヴィブラートを抑えたもので、心地よく耳にすっと馴染む。
シェイクスピアの時代の作曲家ダウランドの歌はとっても素敵だし、イギリスのフォークソングも胸に滲みる。ストロッツィは女性作曲家だそうで、激しい感情の吐露がまるでイタリア・オペラみたい。波多野さんがパーセルの歌の中で一番好きと言う「孤独」も気に入った。
カタロニア民謡「鳥の歌」はカザルスのチェロでお馴染みだが、ギターで聴くのは初めて。
プーランクの「愛の小経」は僕が大好きなシャンソン。「アルフォンシーナと海」(1969年、アルゼンチン)は寂しくて印象的な曲だった。ピアソラのCDは我が家に50枚くらいあって、本人のバンドネオンで「オブリヴィオン(忘却)」は何種類も聴いたが、オリジナルが歌だったというのは知らなかった。やはり歌詞付きの方がはるかに素晴らしかった!驚いた。こんな名曲だったとは……。
アンコールを含め、心に残る演奏会だった。予定変更となっても、キャンセルしなくて本当に良かった。
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コメント
はじめまして。昨夜わたしも聴いていました。
素晴らしい公演でしたね。波多野さんの「うた」からは、いつも、詩の情感が伝わってくるように思います。スペイン語なんて存じないのですが。
しかし曲間ごとに間髪を入れずのBRAVAコールにはちょっとゲンナリしてしまいました。
関西でのこのデュオの公演にはここ10年ばかりほぼ通っているのですがあんな事態は初めてで驚きました。
投稿: カモ | 2011年5月21日 (土) 17時44分
カモさん、コメントありがとうございます。
まさに音楽の花束。その芳香に陶酔しました。近いうちにまたこの二人のコンサートに足を運びたいです。
投稿: 雅哉 | 2011年5月21日 (土) 21時17分