プロコフィエフの映画音楽「アレクサンドル・ネフスキー」!~リープライヒ/大フィル 定期
5月19日ザ・シンフォニーホールへ。
アレクサンダー・リープライヒ/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。リープライヒは1968年レーゲンスブルク(ドイツ)生まれ。2008年の大フィル定期に登場した時の感想は下記。
今回のプログラムは、
- プロコフィエフ/古典交響曲
- モーツァルト/ピアノ協奏曲 第20番
- プロコフィエフ/カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」
(アルト:小山由美)
ピアノ独奏はピョートル・アンデルシェフスキ。1969年ワルシャワ生まれでポーランド人とハンガリー人の両親を持つ。
オケは(古典的)対向配置ではなく通常の配置(第一ヴァイオリンとヴィオラが指揮台を挟み向かい合う)。
プログラム・ノートには、20世紀に作曲された古典交響曲が18世紀の衣装で踊る仮面舞踏会であると書かれており、成る程と首肯した。たしかにプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせるようなバレエ音楽の趣がある(「ロミジュリ」にも仮面舞踏会のシーンが登場)。
リープライヒの指揮はテンポが速く軽妙で、音尻は短くスッと減衰する。水捌けがよい。アクセントを強調し、第1楽章 第2主題はノン・ヴィブラートでピリオド奏法を意識したものとなっている。第2楽章は歯切れよく、第3楽章はスマート。そして第4楽章は機知に富む。爽快!
続くモーツァルト、アンデルシェフスキのピアノは繊細でありながら、同時に力強さも兼ね備える。第2楽章は跳ねるような弾き方が印象的。オーケストラは細かいニュアンスを大切にし、小気味いい。
ソリストのアンコールは、
- J.S.バッハ/フランス組曲 第5番より「サラバンド」
虚心坦懐、純粋無垢なバッハ。その透明感が素敵だった。
プログラム後半はエイゼンシュテイン監督の映画「アレクサンドル・ネフスキー」(1938)の為に書かれた作品。ここで大阪フィルハーモニー合唱団とザ・カレッジ・オペラハウス合唱団が加わった。
ド迫力!これぞ音で描く大伽藍。しかしリープライヒの紡ぐ音楽はあくまでも明晰。ロシアへ侵略するドイツ騎士団を描く第3曲は阿鼻叫喚の地獄絵図。第5曲「氷上の激戦」前半は氷の摩擦がヒリヒリと伝わり、後半はパンチがあって、疾走感に溢れる。第6曲「死せる野」は凍てつく寒さが身に滲みる。小山さんのアルトは深い感情がこもった見事な歌唱だった。そして祝祭感に満ちた終曲。極めて充実した内容だった。
ただ、「アレクサンドル・ネフスキー」で”大フィルのアキレス腱”=トランペット・セクションがミスを連発したのはいただけない。お粗末。頼むからこれ以上、優秀な弦の足を引っ張らないで欲しい。
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