映画「八日目の蝉」
評価:A+
角田光代が書き直木賞を受賞した「対岸の彼女」が僕はとても好きで、彼女の小説「八日目の蝉」も最後は涙を流しながら読んだ。壇れい&北乃きい主演で放送されたNHKドラマ版も観た。だからこの物語はよく咀嚼しているつもりだが、それでも映画の感動が損なわれることは全くなかった。
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魂が震えるような体験だった。永作博美が一世一代の名演技。彼女はこの役を演じるために生まれてきたと断じても過言ではない。
冒頭は裁判シーンで、生後6ヶ月の赤ん坊を誘拐された母親の証言から始まる。これには意表を突かれた。そして犯人の永作博美が正面を向いて語りかけてくる。実に映画的な導入部。
誘拐する場面は激しく雨が降り、また少女が無事帰宅してからも雪が降ったりと天候がすぐれない。しかし主人公が瀬戸内海を渡り、小豆島にたどり着くと、やがて空が晴れてくる。見事な演出設計だ。
ラストシーンも原作とは異なる。でも映画はこれで良かったと想った。現像された写真から次第に浮かび上がってくる、かりそめの「母」と「娘」。切実な哀しみ。映像の力をまざまざと見せつけ、強烈な説得力があった。
井上真央が好演。背中を丸めておどおどした演技を披露した小池栄子も中々いい。
2011年日本映画を代表する、まごうことなき傑作。これを観ずに死ねるか!
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