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ミッキーのショスタコーヴィチ!~PAC定期

兵庫県立芸術文化センターへ。

Mickey

兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)定期演奏会を聴く。

かつて「日本ショスタコーヴィチ協会」会長を務めたこともある”ミッキー”によるオール・タコ・プログラム。エッ?井上道義なら愛称は”ミッチー”じゃないかって?ご本人の弁を聞いてみて→こちら

  • ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第1番
  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第10番 第2楽章 アンコール

ヴァイオリン独奏はボリス・ベルキン。作曲家が存命中にソヴィエトで音楽を学び、1974年に亡命。7歳の時にキリル・コンドラシンの指揮のもとデビューした。「初めて会ったときは狼みたいな奴だった」とはミッキー談。

「ジダーノフ批判」で攻撃され、脱稿されてから7年間封印されていたヴァイオリン協奏曲 第1番。楽譜の初出時は99という作品番号が付けられたが、現在は作曲時に戻した77に変更されている。ミッキーによると第3楽章「パッサカリア」は”ソヴィエト連邦の葬式”という意図で書かれており、「もしそれがバレていたら、(ショスタコは)処刑されてたでしょう」と。

第1楽章「夜想曲」から苦渋に満ちている。近年、ビリオド(ノン・ヴィブラート)奏法はドヴォルザークやマーラーの交響曲まで浸透しつつあるが、僕はショスタコーヴィチに関する限りヴィブラートはかけるべきだと想う。なぜなら「音の揺らぎ」がある方が不安感が増し、曲想に相応しいからだ。第2楽章「スケルツォ」は狂騒的。妄執・強迫観念がそこにはある。第3楽章「パッサカリア」はロシアの哀歌。悲痛な叫びが音楽の底から湧き上がってくる。僕はイコンを連想した。東方教会(正教会)における聖像のことである(英語ではアイコン)。

Icon

第4楽章はフェデリコ・フェリーニ監督の映画(「甘い生活」「8 1/2」)を彷彿とさせるサーカス的、アクロバティックな音楽。そこに滲み出す道化師の哀しみ。ミッキーがドライブするオーケストラが攻撃的に煽ると、対するヴァイオリンがその挑発に乗り、両者のせめぎあいがスリリングだった。

プログラム後半の交響曲 第1番は18歳の時に書かれた作品。第1楽章の軽み、そして勢いある第2楽章の滑稽なおどけ。一転して第3楽章で聴衆は「暗い森」を彷徨うことになるが、そこに後年の特徴となる「苦悩」「鬱屈」「アイロニー」はない。希望に溢れる青年作曲家が佇んでいるだけだ。第4楽章でミッキーは戦闘態勢に入り、ティンパニ・ソロで譜面台を拳骨で叩くパフォーマンスを披露。そして最後は永遠のミステリー・ピースを想わせる雰囲気で締め括られた。

盛大な拍手の中、ミッキーはショスタコ19歳の写真を示し、また「昨日佐渡くんがベルリン・フィル・デビューを飾りました。彼もショスタコーヴィチの交響曲 第5番を演りました」と。そしてアンコールとしてソヴィエト共産党にようやく認められ、ヴァイオリン協奏曲を世に送り出す契機となった交響曲 第10番をアンコールで演奏すると宣言。「痺れまっせ!」

ここで指揮台のミッキーはまるで獲物を狙うライオンのように睨みを利かせ、連続パンチを繰り広げるボクサーの姿勢に。雄叫びを上げる激烈なショスタコーヴィチ!圧巻だった。

ミッキーが東京でやったみたいなショスタコ交響曲全曲演奏プロジェクトを是非、関西でもやって欲しいな。

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コメント

雅哉さんも聴かれたのですね。僕も、なかなかの演奏会だったんじゃないかと思います。関西では、なかなか聴けない曲を並べたという意味でも(笑)。

来季、14番をやってくれるあたり、流石ミッキー。期待したいです。

投稿: ぐすたふ | 2011年5月23日 (月) 22時51分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

「快刀乱麻のショスタコーヴィチ」でした。来シーズンの第14番も必ず足を運びます!

投稿: 雅哉 | 2011年5月24日 (火) 08時58分

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