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安蘭けい(主演)ミュージカル「MITSUKO 〜愛は国境を超えて〜」プレビュー公演

オーストリアと日本の文化交流の歴史について紐解いてみよう。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が初めての来日公演を行ったのが1956年。そしてこれまでに28回の日本への演奏旅行で257回のコンサートを行ってきた。共に来日した大指揮者カール・ベームは日本の聴衆の礼儀正しさと熱心さを、他のどの国よりも愛した。現コンサートマスターのライナー・キュッヒルをはじめ、日本人と結婚した楽員も数多い。小澤征爾が東洋人として初めてウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートの指揮台に立ったのが2002年。その年から2010年まで、彼はウィーン国立歌劇場の音楽監督も務めた。

一方、アン・デア・ウィーン劇場でミュージカル「エリザベート」が初演されたのが1992年。小池修一郎の演出で宝塚歌劇団(雪組)がこのミュージカルを上演したのが1996年。それ以降、組を替えながら、また東宝でも別バージョン(やはり演出は小池)が繰り返し再演されている。ウィーン版「エリザベート」の引越し公演も実現した。またクンツ(詞)リーヴァイ(曲)のコンビによる他のウィーン産ミュージカル「モーツァルト!」や「レベッカ」等も次々と日本で上演され、ヒットした。このコンビが手がけた東宝製作のミュージカル「マリー・アントワネット」(2006年初演)は逆輸入され、ドイツ・ブレーメンで上演された(栗山民也 演出)。

次に日本のエース小池修一郎とブロードウェイの作曲家フランク・ワイルドホーンの友情の物語を見ていこう。小池の作・演出でワイルドホーンが音楽を手がけた「NEVER SAY GOODBYE」が宝塚宙組で上演されたのが2006年。ワイルドホーンのブロードウェイ・ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」も小池演出で2008年に宝塚星組が上演し、第16回読売演劇大賞優秀作品賞および、第34回菊田一夫演劇大賞を受賞した。この時主演したのが安蘭けいであり、新曲「ひとかけらの勇気」も書き下ろされた。

その安蘭けい小池修一郎、およびブランク・ワイルドホーンが再びタッグを組むのが世界初演となるミュージカル「MITSUKO 〜愛は国境を超えて〜」である。梅田芸術劇場で、そのプレビュー公演を鑑賞した。

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1893年、オーストリア=ハンガリー帝国の駐日大使として東京に駐在していたハインリッヒ・クーデンホーフ=カレルギーと日本初の国際結婚をした光子(旧名:青山みつ)と、その次男で「EUの父」と呼ばれ、汎ヨーロッパ主義を唱えたリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーの人生に焦点を当てる。この作品が生まれるまでの経緯は過去の記事に書いた。

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とにかく話が面白い。実話でありながら光子の人生は劇的だし、スカーレット・オハラみたいな強い意志を持つ魅力的ヒロインである。そして彼女が今日の日本-オーストリアの交流を切り開いたと言っても過言ではないだろう。息子のリヒャルトが提唱したパン・ヨーロッパ構想も欧州連合(EU)の精神、ユーロ通貨を含め、今日まで脈々と受け継がれている。つまりこのミュージカルで語られる物語は決して過去のものではない。テーマが素晴らしいし、これは映画化も出来る題材なのではなかろうか?

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ハインリッヒを演じるマテ・カマラスはウィーン版「エリザベート」でトート(死神)を演じていた役者。日本への来日も多く、今回は日本語で歌い切った。

青年リヒャルト役の辛源(シン ゲン)は些か音程が危なっかしかったが、何とか最後までこなした。

リヒャルトと恋に落ちる女優イダを演じたAKANE LIV(岡本 茜)は元・宝塚男役。ポーランド系スウェーデン人の父と韓国系日本人の母の間に生まれた。凄い美人で、歌もとても上手い。

タイトルロールの安蘭けいは宝塚時代から歌唱力と演技力に定評があり、彼女が悪かろう筈がない。

演出は六面体のスクリーンも駆使してこなれたもの。小池修一郎 作・演出のミュージカルは初期の「ヴァレンチノ」「蒼いくちずけ」から「グレート・ギャツビー」を経て近作「アデュー・マルセイユ」「カサブランカ」まで10作品以上僕は観ているが、今回の台本はその中でもずば抜けた傑作と断言しよう。これは小池作品の集大成である。ロンドン・ミュージカル「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」、パリの「ロミオとジュリエット」そしてウィーンの「エリザベート」と比較しても遜色はない。日本のミュージカルも遂にこの高みにまで到達したかと感慨深い。

光子は7人の子供を生んだ。劇中、水兵服を着た子供たちが歌う場面がある。また舞台はオーストリア。そしてナチス・ドイツのオーストリア併合で、リヒャルトはイダとアメリカに亡命する・・・これらの設定に僕は既視感(デジャ・ビュ)を覚えた。そう、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」にそっくりなのである!また劇中、「神様はドアを閉められたとき、窓を開けておいて下さる」という台詞が繰り返し登場するが、これは映画「サウンド・オブ・ミュージック」で修道院長が言う"When the Lord closes a door, somewhere he opens a window. "そのままである。

小池さんは映画「サウンド・オブ・ミュージック」を観てミュージカル演出家を志されたという。そしてジュリー・アンドリュース・ファンクラブの会長を務め、彼女が来日した時インタビューもされている。筋金入りである。僕は中学生の時「サウンド・オブ・ミュージック」を観てミュージカルの魅力に目覚めた。そして大学の卒業旅行で映画のロケ地ザルツブルクを訪ねた。つまり小池さんと僕は同士であり、彼が「MITSUKO」に賭けた想いが直截にビビっと伝わって来たのである。

そして何と言っても「MITSUKO」を成功に導いた真の立役者はやはり、フランク・ワイルドホーンの音楽だろう。彼のブロードウェイ作品「スカーレット・ピンパーネル」に匹敵するくらい出来がいい。プレビューなのでフランクも来日しており、梅芸の1階席中央で聴いていた。幕が降り、彼が立ち上がると観客が一斉に惜しみない拍手で彼を見送った。ありがとうフランク、最高の仕事だったよ!

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会場にはプロ野球解説者で世界の盗塁王・福本豊さんから胡蝶蘭が届いていた。福本さんが以前語ったことによると、監督やコーチとして球界へ復帰するという意思はまったくないという。曰く「しんどい。それに宝塚を観られなくなるから」と。福本さんは宝塚大劇場はもちろん、宝塚バウホール、東京公演、名古屋・中日劇場、福岡・ 博多座などの地方公演、ディナーショーにも行くそう。「どの組もまんべんなく、1公演を6回から8回は観てます」

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また、現・星組トップの柚希礼音からも花が届いていた。中には蛙の意匠も。

ミュージカル「MITSUKO 〜愛は国境を超えて〜」は日本とオーストリアの交流の歴史を伝えるヴィヴィッドな作品であり、いま絶対観ておくべき逸品である。

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