河村尚子 ピアノ・リサイタル~フランツ・リスト生誕200年に寄せて
4月14日(木)ザ・フェニックスホールへ。
神戸市出身のピアニスト・河村尚子を聴く。昨年聴いた彼女のシューマンには、本当に素晴らしかった。
今回のプログラムは、
- シューマン=リスト/献呈
- ワーグナー=リスト/イゾルデの愛の死
- シューベルト=リスト/糸を紡ぐグレートヒェン
- シューベルト=リスト/「美しい水車小屋の娘」から”水車屋と小川”
- リスト/愛の夢 第3番
- リスト/「巡礼の年 第2年 イタリア」から”ダンテを読んで”
- ショパン/3つのマズルカ(第36-38番) 作品59
- ショパン/ソナタ 第3番 作品58
彼女らしく、全身黒のシンプルなドレスで登場。
生誕200年を迎えたリストからまず歌曲のトランスクリプション(異なる楽器での演奏用に編曲すること)。初めて知ったのだが「愛の夢」も元々は歌曲だったとか!
シューマンは決してロマンティックな方向に走らず、きちっと楷書的な演奏(原曲は作曲家30歳の年、クララとの結婚式前日に捧げられたもの)。
「糸を紡ぐグレートヒェン」は強靭なタッチ。
「愛の夢」も奏者の感情ではなく、ピアノ自体に語らせる。一音一音クリアな響きで、そして正確に。
「巡礼の年 イタリア」は切れがあってパワフル。あたかも鬼神の如し。
休憩を挟み後半のショパンは一切の感傷、不要なテンポ・ルバートを排した解釈。だからマズルカはこの作曲家特有の「甘さ」よりも、ポーランド民族舞曲としての特徴が浮き彫りにされた。
そして強烈なソナタ。第3楽章ラルゴは傷ついた人の心を慰め、癒す音楽の力を感じさせ、続く第4楽章では狂おしい左手、疾走する右手にただただ圧倒され、唖然とした。
河村尚子は間違いなく現代の日本を代表するピアニストであり、今を時めく彼女を聴き逃すのは余りにも勿体ない、とここに断言しておく。
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