ドイツからヴォルフガング・ツェラー来日~バッハ/オルガンが拓く大宇宙
3月21日(月・祝)、東日本大震災および福島原発事故の影響で、予定されていたヒラリー・ハーンのヴァイオリン・リサイタルが全公演中止となり、代わりにいずみホールのバッハ・オルガン作品連続演奏会へ。
シリーズ8回目の今回は「オルガンの拓く大宇宙」と副題が付けられている。ブルージュ国際オルガン・コンクールで優勝し、現在はハンブルク音楽演劇大学でオルガン主任教授を務める名手ヴォルフガング・ツェラーが来日した。
当初日本で予定されていたツェラー氏の3公演のうち、茨城公演はオルガンが地震で壊れて中止となり(詳細はこちら)、交通網の乱れ、計画節電の影響で東京公演も中止となった。つまり大阪のためだけに来日されたそうである。友人たちからは「この時期に日本に行くべきでない」と言われたが、「今だからこそ人々を慰める必要がある。そういう力、精神性の高さがバッハの音楽にはある」と考えて、敢えて渡航されたという。
最初に国立音楽大学教授・いずみホール音楽ディレクターの磯山 雅さんからの呼びかけで、震災で犠牲になった方々の冥福を祈り、観客全員が起立し黙祷した。
今回のプログラムは、
- J.S.バッハ/クラヴィーア練習曲集 第3部(全曲)
これはドレスデン聖母教会における大バッハ自身の演奏会プログラムを下敷きに、内容を充実させ出版されたもの。冒頭に壮大なプレリュードがあり、これに対応するフーガが最後に置かれている。それぞれ《父・子・聖霊》の三位一体を表す3つの主題からなる。そして、プレリュードとフーガに挟まれて21のコラールが響き、4つの技巧的なデュエット(2声のインベンション)がクリスタルの輝きを放つ。コラールは大コラールと、ペダルを用いない軽やかな小コラールがそれぞれ配されている。これらが渾然一体となって、オルガンの音色の豊かさと、表現の多様性がめくるめく歓びとして僕たちの目の前に広がっていった。それはまさに悠久の時を感じさせる「宇宙」であった。
会場はほぼ満席。シリーズ次回(8月6日、土)の先行販売には長蛇の列が出来ていた。
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