大空祐飛 主演/宝塚宙組「ヴァレンチノ」
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティへ。
「ヴァレンチノ」は1920年代にハリウッドで活躍した不世出の映画スター、ルドルフ・ヴァレンチノの半生を描いたミュージカル。作・演出を担当した小池修一郎のデビュー作。1986年に杜けあきを中心とした雪組により宝塚バウホールで初演、1992年に再演されている。
小池さんはパンフレットに次のように語っている。
「純粋な魂が栄光を掴むが挫折。再生を目指すが志半ばで肉体は滅ぶ」のは、私の永遠のテーマである
そして1920-30年代=ジャズ・エイジのアメリカを好んで取り上げるのも彼の特徴である。スコット・フィッツジェラルドの小説をミュージカル化した「グレート・ギャツビー」や、「失われた楽園 -ハリウッド・バビロン-」(フィッツジェラルドの遺作「ザ・ラスト・タイクーン」へのオマージュ)はその典型であろう。さらにヴァレンチノが主演したサイレント映画「黙示録の四騎士」と同じ原作に基づく「タンゴ・アルゼンチーノ」もある。そういう意味においてもまさしく「ヴァレンチノ」は小池ワールドの原点と言えるだろう。場面転換の手際よさ、スピード感に演出家のセンスが光る。
タイトルロールは大空祐飛。シナリオライターのジューン・マチスに野々すみ花が配役された。またデザイナーのナターシャを演じた男役・七海ひろきが好演。彼女の歌は……だが、その妖艶な美貌が圧倒的存在感を示した。
邸宅の庭にアランチャ(オレンジ)が豊かに実る美術装置が素晴らしく、音楽もいい。
劇中とアンコールで門奈紀生率いるタンゴ・バンド「アストロリコ」が演奏する、スタイリッシュなタンゴが特に印象的。また初演・再演で使用された宮本亜門氏の振り付けは今回、桜木涼介、AYAKO(宝樹彩)に変わり、これも洗練され、卓越した出来栄え。
最後に大空祐飛からの挨拶があった。
「本日は皆様、不安を抱えた中お越し頂きありがとうございました。私たちは皆様が元気で笑顔になって頂きたいと、日々舞台を一生懸命務めております。もし笑顔になれたなら、帰って他の方にも分けてあげて下さい」と。
心に残るスピーチであった。なお、東日本大震災の影響で「ヴァレンチノ」東京公演は中止となった。
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