阪神・淡路大震災の被災地から音楽のメッセージ〜岩村 力/兵庫芸術文化センター管弦楽団 定期
3月20日(日)、兵庫県立芸術文化センター(西宮)へ。
岩村 力/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)の定期演奏会。太鼓:林 英哲さんと和洋の饗宴。
3月11日に発生した東日本大震災について、フランスにいる佐渡 裕 芸術監督からのメッセージも届けられた。
今回のプログラムは、
- 伊福部 昭/SF交響ファンタジー 第1番
- 山下洋輔(挟間美帆 編)/プレイゾーン組曲(管弦楽版、世界初演)
- 武満 徹/鳥は星形の庭に降りる
- 松下 功/和太鼓協奏曲「飛天遊」
まず指揮者の岩村さんからお話があった。地震発生時には仙台フィルと青森で公演中だったこと、大変な思いをして関西にたどり着いたこと。そして水爆実験から生まれた怪獣「ゴジラ」のテーマが入った「SF交響ファンタジー」をこの時期に演奏していいのか、PACのメンバーからも疑問の声が上がり、どうするか真剣に悩み議論を重ねた上で、演奏する決意をした経緯を語られた。
その「SF交響ファンタジー」は威圧的なゴジラの動機から始まる。大地が揺らぎ、大津波が襲ってくる情景が目に浮かぶよう。後半になると地球防衛軍が活躍する格好いいマーチが登場。その音楽が、自衛隊・警察・東京消防庁ハイパーレスキュー隊らが福島第1原発に放水する雄姿に重なった。リアルに心に響く音楽体験であった。伊福部昭の偉大さを再認識した。
「プレイゾーン組曲」は元々、和太鼓と室内アンサンブルのために書かれたもの。この度、和太鼓+オーケストラ用にアレンジされた。無調で混沌とした「ビギニング」から始まり、締太鼓とサヌカト(讃岐岩から作られた打楽器)による「イントゥ・ザ・ゾーン」、さらに「ダイアログ」「ダンス」「チェイス(フーガ)」と続き、激しい和太鼓のパフォーマンス「ゾーン・プロミネンス」で締めくくられる。山下洋輔さんの作曲だけにJAZZのイディオムがふんだんに取り入れられ、後半はキャッチーでエキサイティング。熱狂のリズムに和の鼓動、日本人の生命力を感じさせた。これは是非、近い将来東北地方でも演奏してもらいたい曲である。きっと多くの人々が勇気づけられるだろう。
僕は昔から武満徹の音楽が大好きなのだが、残念なことに関西で聴ける機会は滅多にない。「鳥は星形の庭に降りる」は武満らしく幻夢的でミステリアス。カラフルな音色でとても良かった!
そして1994年に初演され、世界各地で繰り返し演奏されてきた「飛天遊」。またまた和太鼓が大活躍で、林さんの熱いパフォーマンスで興奮は頂点へ。
アンコールは「太鼓打つ子ら」。
八丈島に太鼓の囃子歌というのがあり、それに林さんが歌詞を付けたもの。元々恵まれない子ども達に太鼓を教える時に演奏してきたそうだが、「今度の震災でも親を亡くした子供が沢山いるでしょう……」と林さんは声を詰まらせた。
この関西からの想いが、今も震災の地で辛い避難生活を送られる皆さんに、いつか伝わりますようにと願いながら、帰途に就いた。
| 固定リンク | 0
「クラシックの悦楽」カテゴリの記事
- 武満徹「系図(ファミリー・トゥリー)-若い人たちのための音楽詩-」を初めて生で聴く。(佐渡裕/PACオケ)(2022.01.26)
- エマニュエル・パユ(フルート) & バンジャマン・アラール(チェンバロ) デュオ・リサイタル(2021.12.11)
- ミシェル・ブヴァール プロデュース「フランス・オルガン音楽の魅惑」Vol. 1(2021.12.10)
- 厳選 序曲・間奏曲・舞曲〜オペラから派生した管弦楽の名曲ベスト30はこれだ!(2021.09.17)
コメント
本当に心が熱くなったりいっぱいになったり安らいだりと耳でより心で聴けたコンサートでした
私も岩村力さんと林英哲さんのコンビで東北の皆様にいつか演奏をして欲しいと思いました。
投稿: 柚子Soda | 2011年3月22日 (火) 22時19分
柚子Sodaさん、コメントありがとうございます。
原発事故が終息したら、PACのメンバーによる東北ツアーもやって欲しいですね!阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして生まれたオケですから、それこそが彼らに与えられた「役割」なのではないでしょうか?
投稿: 雅哉 | 2011年3月26日 (土) 22時14分