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2011年3月 2日 (水)

さん喬・喬太郎 親子会/亀屋寄席

2月22日(火)は「猫の日」(222→「ニャン・ニャン・ニャン」)。高槻の割烹旅館・亀屋へ。

K2

柳家さん喬さんと、その一番弟子・柳家喬太郎さんの親子会が遂に関西で実現した!二人のお座敷での親子会は滅多にないことだそうである。

  • 喬太郎/たいこ腹
  • さん喬/棒鱈
  • 喬太郎/ほんとのこというと(喬太郎 作)
  • さん喬/井戸の茶碗

K1

喬太郎さんはマクラで、東京から北海道の倶知安(くっちゃん)町へ、学校寄席で日帰りをした話を。片道7時間、往復14時間。「1日は24時間しかないんです!」と。また、ホッケの刺身(!)を食べた感想も。

たいこ腹」に登場する猫の「たま」がとても可愛かった。このネタをされたのは「猫の日」と無関係ではあるまい。また若旦那が幇間に「人体実験」を試みる場面では、喬太郎さんの腹芸が最高に可笑しい。

棒鱈」は途中に挿入される「百舌の嘴」や「十二ヶ月」といった珍妙な歌が愉しかった。

さん喬さんは淡々とした語り口で、「はんなり」(京言葉。上品で、明るく華やかなさま)した芸。最初は聞えるか聞えないかという弱音(p)で話し始めるが(ここで聴衆が耳をそばだて、意識を集中する)、やがて音量がメゾ・ピアノ(mp)→メゾ・フォルテ(mf)と次第に大きくなり、豪放磊落な武士の登場でフォルティシモ(ff)に達する。その強弱の変化が耳に心地よく、音楽的なのだ。

僕は故・桂枝雀さんの落語にも音楽を感じるのだが、枝雀さんの特徴はそのリズム感にある。緩急の自在なコントロール、そして極端に少ないブレス(息継ぎ)。

それとは全く別の意味で「さん喬落語」は音楽であると言えるだろう。現役の噺家で、こんな人は他にいない。

ここで仲入り。

喬太郎さんはバレンタイン・デーをめぐる「阿鼻叫喚」や、節分に食べる恵方巻(えほうまき)という風習が、大阪から今や全国に広がってしまったことを嘆き、「もうやめましょうよ。太巻きは切って食った方がいい」

喬太郎さんは”おばちゃん顔”なので、新作「ほんとのこというと」に登場する母親がミョ~にはまっていて可笑しい。まくし立てるように喋る父親もヘンでいい。この噺はタイトルが曲者。男が家族に引き合わせるために連れてきた婚約者がどこまで「ほんとのこと」を言っているのかがミステリー仕立てになっている。いろいろな解釈が可能だが、サゲの一言だけが真実というのが僕の意見。皆さんはどうお感じになるだろうか?喬太郎が仕組んだ罠、恐るべし!

井戸の茶碗」は以前、喬太郎バージョンも聴いた。ここで二人の違いを比較してみよう。噺のクライマックスで千代田卜斎が細川家臣・高木から、屑屋を介し百五十両を渡される。彼は「自分の娘を嫁にめとって下さるのであれば、支度金として受け取る」と言う。

この場面で喬太郎さんはすかさず屑屋に「するってぇと、百五十両でお嬢さんを売り飛ばしちまうんですかい!?」と言わせるのである。内容が現代にそぐわなくなり、下手すると人身売買の様相を呈してきたストーリーの穴をギャグに転化することで、見事にそれをクリアするのである。天才・喬太郎だからこそ出来る鮮やかな技である。

一方、さん喬さんの描く屑屋は「(往来の真ん中を歩けないような、身分の卑しい)私みたいな者に、仲人の役を仰せ付けて下さるのですか!?」と感激するのである。この情景が落語「はてなの茶碗」で茶金に売りつけた茶碗が、めぐりめぐってお天子さまの手元にまで渡ったことを油屋が目を輝かせて聴く場面にピッタリと重なった。つまり、普通なら言葉を交わすことすら叶わない身分の高い方と、(一時とはいえ)繋がりを持つことがが出来た歓びに昇華されているのである。”人情噺の達人”ならではの卓越したアプローチ。恐れ入りました!

さん喬・喬太郎の師弟関係は米朝・枝雀のそれを彷彿とさせる。全く芸風が違う。弟子は師匠が歩む真っ直ぐ揺るぎのない道を離れ、軽やかに飛翔する。喬太郎さんも枝雀さんも、師匠の完成された落語を一旦壊し、自分なりに再構築しているように見受けられる。そこには「『芸を受け継ぐ』ことを言い訳にして、(劣化)コピー、クローン人間になるようなことは決してしない」という矜持がある。しかし師匠の落語を否定しているのではない。心から敬愛しているからこそ、全く違うことをする。その距離感こそが「リスペクトの証」なのだと僕は想う。

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